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2880. 匿名 2024/04/16(火) 23:52:01
>>2878 ⚠️己の趣味に全振り
⚠️🔥
「魔法の手」
3.
元の椅子に腰掛けると、くるりと回り鏡と向き合って白いケープに手を通すと、髪に巻かれていたタオルが取られる
「なにかイメージはあるか?」
「イメージ、ですか?」
「そうだ。大人っぽい、可愛い…君がこのようになりたいというイメージだ」
髪を梳かしながら聞かれて、しばらく考えた。私がなりたいイメージ……
「煉獄さんにお任せします」
「俺に?」
「はい」
煉獄さんは考えるような顔を見せた後、私の髪の一部分をクリップで留め始め、留めていない髪にハサミを入れるとケープに切られた髪が落ちる
「前髪の長さは眉下で構わないか?」
「はい」
前髪にハサミが入る前、目を閉じた。何度か顔をタオルのようなもので触れられたので、前髪を切り終わったと思って目を開けると白いシャツが目に入った
ドライヤーの風と手が髪に触れる。近くのワゴンからブラシを取ると、髪に巻きつけて伸ばされていった
整髪料をつけてもいいかと聞かれ頷くと、両手を擦り合わせるも髪をサッと梳かし、タオルで手を拭いた後、四角い鏡を持ち開いた
「10cmほど切ったが、ひとつで結べる長さだ。どうだろうか?」
「ありがとうございます!」
お会計をして上着を持とうとすると、上着を広げている。あっ、と思って後ろ向きになると袖を通って両肩に手が置かれた
「これから出掛けるのか?」
「どこに行くかは決めていませんが、綺麗にしていただいたので寄り道します」
「そうか、また明後日に」
「お待ちしています。ありがとうございました」
歩くたびに短くなった髪が揺れる。どこに行くかも決めていなかったけれど、通りにある店先のガラスに映る髪を見るたび心が弾んた
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2955. 匿名 2024/04/17(水) 08:19:21
>>2880
美容師の煉獄さん…想像するとドキドキ💓
続き楽しみにしています!+22
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3298. 匿名 2024/04/17(水) 21:39:05
>>2880 ⚠️己の趣味に全振り(コメントありがとうございます💇♀️)
⚠️🔥
「魔法の手」
4.
イケメン、イケメン、イケメン……合言葉のように書かれている口コミ欄
海鮮炒めを「うまい!」と食べる声を耳にしながら、在庫の確認をしていた。食べ終わる頃を見計らって、冷蔵庫から器を出した
「サービスです」
煉獄さんはフォークでそれを刺し、口に入れた
「うまい!!」
「お口に合ってよかったです」
時期はずれだったけれど、美味しそうなさつま芋があったので、さつま芋の飴炊きを作り煉獄さんに出そうと冷蔵庫で冷やしていた
店を始めた頃、さつま芋ご飯を出した時に5杯目のおかわりで釜が空っぽになって、頭を何度も下げたことは懐かしい
「ごちそうさま」
「ありがとうございました」
煉獄さんは席を立たない。いつもなら、お会計の後は店を出るはず
「朝とは違うのか?俺は今から仕事だ」
……あっ
「いってらっしゃい」
煉獄さんは席を立ち「行ってくる!」と言って店を出た
朝は「ありがとうございました」ではなくて「いってらっしゃい」と声をかけている。仕事や学校に行くと思ってのことだった
「いってらっしゃい」
何気ない言葉だったけれど、ひとつだけ口に放り込んだカリッとした飴とさつま芋の甘さが、味見をしたときよりも甘く感じた+27
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