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2787. 匿名 2024/04/16(火) 22:12:15
>>1903⚠️解釈違い🌊⚠️なんでも許せる方
『寄り道、裏道、まわり道』
③
その日は、一緒にならないはずの曜日だった。校門を出た少し先に、冨岡くんが立っていた。
「これ」
「!!これ、狭霧庵のいちご大福!えっ、並ばないと買えないやつだよ?どうしたの?」
「並んだ。好きだけどなかなか食べられないと言っていただろう」
今日は何でもない日なのに?暇だった?そんなはずないよね受験生だもん。
混乱したまま、帰路を少し遠回りした場所にある公園のベンチに並んで座って、柔らかい求肥に包まれたこし餡と大きなイチゴを、一度に口に含んだ。
「うまい」「おいしい」
言葉が重なったことに胸が跳ねて横を見ると、頬まで粉だらけの冨岡くんがいた。予想もしなかった姿に私はまたしても吹き出すことになり、隣の彼と同じように粉にまみれた。
粉だらけの冨岡くんが、珍獣でも見たかのような顔をして、粉だらけの私を見る。全部、君のせいなんだけど。
次の瞬間。
色白で骨ばった、体格の割に大きな手がスッと伸びてきた。そして親指でなぞるように、粉だらけの私の顔を拭った。
───胸が、ぎゅうっと押しつぶされそうになるのを感じた。
目の前にある、白色と小豆色に包まれた齧りかけの赤い果実が綺麗なハートの形をしていて、まるで私の気持ちを映し出しているようだった。
お願い。暴かないで。
今は、少し前までは恐れていたはずの沈黙がもたらす独特の安心感に、ただ甘えていたい。
何も言わない冨岡くんに、「どうして今日、並んでまでいちご大福を?」なんて聞く勇気はない。
だって今はそんなことで心を壊してる場合じゃない。今日は機関銃になれない。
私は、さっきまでいちご大福に掛かっていた包装紙を大切に折りたたんで、制服のポケットにしまった。自分の気持ちを、見えないように内側に隠して仕舞い込むように。
つづく
(コメント下さった方々ありがとうございます。嬉しいです!)+31
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2794. 匿名 2024/04/16(火) 22:19:20
>>2787
あー、もう、すごく好きなお話です🌊
粉まみれ可愛いなと思ったら、急にかっこいいし、好きになっちゃうの仕方ないな+23
-3
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2812. 匿名 2024/04/16(火) 22:39:19
>>2787
こっちまでドキドキしちゃった♡+21
-2
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3525. 匿名 2024/04/17(水) 23:11:48
>>2787⚠️解釈違い🌊⚠️なんでも許せる方
『寄り道、裏道、まわり道』
④
今日も、2つ隣の席に冨岡くんがいる。なんだかやるべきことが進まない。
──そうだ、私も折ってみよう。ターゲッ◯。足りない頭も少しはマシになるかも知れない。
そんなことを考えていて、いつのまにか背後に冨岡くんがいたことに気付かなかった。
「今日はやたらと紙が擦れる音がすると思った」
「やっぱり私も折ろうかなって。ターゲ◯ト」
「そうか」
「でもさー、ページ数多いから疲れてきた!ちょっと代わりに折っ…」
顔を斜めに上げたその時、背を屈めた冨岡くんの口唇が、私の口唇にそっと触れた。
驚いて目を見開いたままの私は、まつ毛が濃くて羨ましいなあ…なんて妙に冷静なことを考えていた。
「な、んで…」
「………」
その顔なんなのどういう気持ちなの。
「したい、と…思った」
「……そっ、か…」
「好きだ」
「──!!でも、、」
「でも?」
「今は、だって、好きとかそういうのに気を取られてる場合じゃ…」
「意味がないと思う」
「は?」
「結局気になるだろう。少なくとも俺はそうだ」
「そうなの、かな」
「……」
沈黙が胸の鼓動を増幅させる。
でも、恐くはない。それはむしろ安心を纏っているようで──
結局気になる。そうなのかも知れない。
「私も、好き」
もう一度、今度は私も目を閉じた。
つづく
(身に余るコメントを頂き嬉しいです。ありがとうございます。)+33
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