ガールズちゃんねる
  • 2632. 匿名 2024/04/16(火) 20:08:18 

    >>2624

    猫と鶴🍃6
    ⚠⚠⚠解釈違い大、🍃がチャラいです。何でも許せる方向け
    ⚠長文の苦手な方は、恐れ入りますがスクロールお願いします
    ⚠当時の医学について素人であることをお許し下さい。

    「こんな物置みたいなところで悪いけど」
    がる葉は詫びたが、勉強机の上に乗せたお茶とおはぎに舌鼓を打つ実弥の目には、書棚を埋め尽くす本やら机にうず高く積まれた医学書やら、壁の人体解剖図などは入らないらしい。がる葉が裏口からこっそり招き入れたのだ。
    「うめェなー、今まで食ったおはぎの中で一番うまい」
    「そんなに?じゃあわたしのも食べていいわよ」
    「じゃあお言葉に甘えて……それよりお前、医者なんだなァ」
    「まさか!わたしなんてまだまだひよっこですらないわよ、父に付いて見習いをしてるの」
    「いいのかァ、俺の相手なんかしてて」
    「今日は休診日なの、急患が来なければ勉強とか雑務をこなせるから……」
    「ふーん、じゃあ毎週この日ならお前はこの部屋にいるんだな?」
    「……何企んでるの?」
    「勉強の息抜きに付き合ってやるよ、次からは俺が茶菓子用意してやる」
    「こ、来なくていいわよ」
    「注射の練習していいぞ」
    「間に合ってます!」
    つい声が大きくなってしまったその時、ちょうど父の声が聞こえた。
    「がる葉〜」
    「ハッ!ほら、食べ終わったでしょ!早く帰って!」
    背中をぐいぐいと押すがる葉を振り返って、実弥はにやりと笑った。
    「お前、がる葉って名か」
    「もうっ、ならあなたの名前も教えて」
    「………サネミツ」
    「ふぅん」
    「………いや、内緒だ」
    「何それ?」
    「サネミだ、サネミ」
    「はぁ~?もうどっちでもいいわ、じゃあサネミさんて呼ぶわね、そっちの方が貴方に似合ってる気がするし」

    そりゃそうだ。俺の本名なんだから、と実弥は笑いを堪えた。結局実弥は本当の名前で呼ばれることになった。偽の名を名乗る男や、名前のない男でいることにも少々疲れていた。それに、がる葉の澄んだ大きな瞳に見つめられると、何故か本当のことを言わなくてはという気持ちになった。
    「お〜い、がる葉」
    「はーい!(コソコソ)早く行って!(汗)」
    「じゃあまたなァ、がる葉」
    「(コソコソ)もう、分かったってば」

    この日を境に、実弥はほぼ毎週、何かと理由をつけがる葉に会いに行くことになる。おはぎを始め、勉強の息抜きにぴったりの美味しいおやつを片手に。
    本当に彼女が好みで好意を持ったのか、からかうと楽しいからなのかは分からない。ただ、このお洒落でも広くもない、分厚い書物の詰まった小部屋の片隅で過ごす時間が、女性との情交より何よりずっと実弥の心を癒やしたのだ。

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  • 2646. 匿名 2024/04/16(火) 20:28:01 

    >>2632
    読んでます🍃

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  • 2647. 匿名 2024/04/16(火) 20:29:42 

    >>2632
    ずっと読んでるよ😍❤️

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  • 2722. 匿名 2024/04/16(火) 21:18:55 

    >>2632

    猫と鶴🍃7
    ⚠⚠⚠解釈違い大、🍃がチャラいです。何でも許せる方向け
    ⚠長文の苦手な方は、恐れ入りますがスクロールお願いします
    ⚠当時の医学について素人であることをお許し下さい🙇

    「あら、最近全然来てくれないじゃない」
    「よォ、ここんとこ忙しくてなァ」
    「次いつ来てくれるの」
    「まぁそのうちな」

    「ねぇ、久しぶりに寄って行かない?」
    「わりィ、行くところがあってな」
    「あら、好きな子でもできた?」
    「止せよォ、じゃあな」

    なんやかんやと理由をつけて女達の誘いを断ることが増え、がる山診療所にこっそり通うようになってしばらく経ったある日、がる葉が言った。

    「サネミさんって、猫みたいよね」
    「猫ォ?」
    「猫は猫でも、ほぼ野良猫」
    「どういう例えだよ、一応自分の家はあるって言っただろ」
    「色んな女の人のところに行ってるから」
    「ま、否定はしねェよ」
    「世渡り上手な猫はどの家に行けば可愛がってもらえるって知ってるし、人に飼われず生きていくには賢さと強さが必要でしょ」
    「ふーん、なんかそれを聞くと悪かねェかもな」

    がる葉が実弥を猫に例えたのには他にも理由があった。無造作な髪質や、彼の顔を始め体に走る傷跡が、まるで幾多の縄張り争いを勝ち抜いてきた、強い雄猫のように見えたからだ。しかもこの猫、夜な夜な異形の化け物を狩るのが生業ときた。人の手で飼われる猫達より、よほど過酷な世界に身を置いているではないか。
    ──あまり長生きは出来ないかもね、飼い猫よりずっと厳しい世界の中で生きる野良猫なら。がる葉はぼんやりとそんなことを思った。

    (コメント、プラスありがとうございます💚ぼちぼち折り返しです。続きは明日以降載せます)

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