ガールズちゃんねる
  • 2351. 匿名 2024/04/15(月) 22:05:11 

    >>1880
    御伽草子『遠眼鏡』(9)
    ⚠️療養所として女子キャラ屋敷の名だけ出て来ます



    あれから季節は何回か変わった
    ガル子は蝶屋敷で治療や訓練を受け、順調に回復していた。他の隊士の目もあり、義勇がガル子の元に訪れることは少なかったが、二人は寛三郎や文を通して近況を報告し合った

    ガル子を連れ去った後、義勇はガル子のために、あの家からピエロの絵本と遠眼鏡を持ち出した
    娘や持ち物を盗まれて騒動になることを覚悟した義勇だったが、失踪したガル子を家族が探す様子はなかった
    ある日あの地へ行ってみると、あの家を買い取ったと思われる住民が住み始め、何事もなかったように日常が営まれていた

    義勇は彼女にそのことを伝えていない。彼女も家のことを尋ねたりはしなかった
    治療以外の時間はおとなしく絵本の頁をめくり、見えない義勇の姿を求めて、窓の外を遠眼鏡で覗いていた



    蝶屋敷から退院の目処がついたとの連絡を受け、義勇は屋敷を訪れた

    コンコンコンと扉を叩いてガル子の返事が聞こえると、義勇はガル子の部屋に入った

    「調子が良さそうだな」

    「義勇さん!来てくれたのね!そうなの、来週くらいには、退院出来そうだって」

    義勇は頷くと、手土産の菓子をテーブルに置いた

    「義勇さん、何から何まで本当にありがとう。私どんなにお礼しても足りないくらいだわ。私足が治ったら、一生懸命働いてあなたのご恩に報います」

    久しぶりに義勇に会えた嬉しさと、退院の喜びでガル子は目をキラキラとさせていた
    そんな様子のガル子を見て微笑むと、義勇はガル子に椅子に座るよう促した

    「これからのことは君が好きなように決めれば良い。もう遠眼鏡は必要ない。好きなところへは自分の足で行くことが出来る。だから…」

    義勇はそう言うと、抱えていた風呂敷包みから箱を出した

    「今日は、一つの提案を持って来た」

    「何かしら?」
    ガル子が覗き込もうとすると、義勇は彼女の前にスッと跪き、ガル子を見上げた

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  • 2364. 匿名 2024/04/15(月) 22:30:49 

    >>2351
    先ほど1話から一気に読ませてもらいました。
    素敵な世界観の物語に引き込まれています。
    義勇さん、優しくてかっこいい…♡
    ドキドキ…

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  • 2379. 匿名 2024/04/15(月) 23:01:09 

    >>2351
    御伽草子『遠眼鏡』(10)最終話


    息を一つ深く吸って義勇が言う

    「この靴がピッタリ入る姫を王子が探しています。履くか履かないかは、姫がお決めください」

    義勇が箱を開けると、白く輝く美しい靴が現れた
    一瞬言葉を失ったガル子だったが、意味を理解するとその頬を徐々に赤らめた

    「こんな…こんな素敵な靴…私が履いても良いの…?」

    「君のために選んだんだ」

    見上げる義勇に彼女は口を手で覆い、涙を浮かべた。義勇に促され、ガル子はその足を滑らせるように靴に入れた
    ガル子が立ち上がると、白いその靴は彼女の足をピッタリと包み込み、彼女を支えていた

    「義勇さん!私…義勇さんが大好き。本当に、本当にありがとう」
    飛び込むガル子を義勇は両腕で抱き止める

    「これを履いて城に帰ろう。俺の城に舞踏場は無いが、武道場ならある」

    二人は瞳を交わし合い、声を合わせて笑った──


    こうして王子の義勇と姫のガル子は、いつまでも仲睦まじく、幸せに暮らしましたとサ

    めでたし、めでたし…ト


    ヨシ!完成ジャ
    なかなかの大作であったゾ

    「寛三郎!何をしている?もう時間だぞ」
    義勇の呼ぶ声がする
    「ハイハイ、分かっておる。今行くゾ」
    儂は出来上がったばかりの草子をまとめると、鶴亀模様の風呂敷で丁寧に包んだ

    ギリギリじゃったが祝言の日に間に合って良かった。この物語を義勇とガル子への祝いの品といたそうゾ

    本好きのガル子ならきっと喜んでくれるじゃろウ。義勇はそんな事まで記録するなと照れるじゃろうカ?

    姫を娶る王子なら、それくらい覚悟せねばなるまいよ
    昔から、王子と姫の物語は草子となって後々まで読み継がれると、相場が決まっておるからノ


    ──御伽草子『遠眼鏡』 終

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