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2315. 匿名 2024/04/15(月) 21:36:01
>>519推しと桜 >>552花見
⚠️後半に🐚 ⚠️解釈違い🌫️
最初の夜、最後の恋を君と①
何となく嫌な予感はしていた。
いくら観桜会の時期とはいえ、着物を着るよう念を押された時点ですでに。
そしたら案の定、ただの会食と聞かされていた場が両家の顔合わせのようなものに早変わりしてしまっていた。
代々政治に携わってきた家ではあるけれど残念ながら私は一人娘で他に兄弟はいなかった。
女性の政界進出が目覚ましい世の中ではあるものの、私は政治に全く興味も無ければ元々の素質も無い。
だからなのか、父が自分の後継に一人娘を娶らせて自らの地盤を継がせたがっているということは周りから散々聞かされて育ってきた。
そんなの口で言ってるだけだと思っていたのに、まさか本気だったなんて。
そして今、目の前にいるお相手の男性というのは19歳の私の一回り上だという。
あの父が後継に推したがるくらいだ、なるほど若いがデキそうな風ではある。
経歴だけでなく外見にも難の無い相手を選ぶ辺りに父なりの愛情を感じないでもないが、無断でこんなセッティングをする行為の前ではそんなもの消し飛んでしまう。
一年の大半は家にいないくせに、たまに帰ってきたかと思えばこれだ。
一般的なお見合いではアタリの部類なんだろうけど……と失礼な感想を抱きながら、顔に愛想笑いを貼り付けて居心地の悪い空間に身を置いていた。
着物が苦しいから外の風に当たりたいとゴネて、なんとか中座することに成功した。
着慣れている着物が苦しいなんてもちろん方便だけど。
会食の場である料亭はお城のある公園の敷地内にあったので、私はそのままお濠沿いをとぼとぼと歩く。
約2週間続く観桜会が始まってから最初の週末ということもあり、桜の名所でもある公園内は観光客で大いに賑わっていた。
温暖化の影響なのか例年より早く開花した桜はすでに満開に近く、春特有の強風で早くも辺りに花びらを振りまいている。
花霞でぼんやりした空はまるで、明るい未来を描くことができないでいる今の私の心のよう。
朱塗りの橋の欄干に凭れ、お濠の水面を埋め尽くす花筏が揺蕩うのを眺めていた。
私もああやって流されるしかないのかと感傷に浸っていたその時──。
「綺麗だね」
不意に隣から若い男性の声がした。
声がした方に顔を向けると、長い黒髪が風に靡いているのが見えた。
声を聞かなければ女の子だと思ったかもしれない。
年の頃は私と変わらないくらいだろうか。
連れはいないみたいだからどうやら私に向けられたらしい言葉だと判断する。
「ほんと……今だけの絶景だよね」
そう返して私が再び水面に目を移すと、その人は「違う違う」とクスクス笑う。
「綺麗なのは、君。よく似合ってるねその着物。お姫様みたい」
「え……あ、ありがとう……」
同世代の男の子に面と向かって褒められたことなんて初めてなので、反応に困ってしまう。
しかもお姫様だなんて。
お礼で良かったのかそれとも謙遜して否定すべきだったのか、正解が分からない。
すると彼は言う。
「世が世なら、君はここのお城に住むお姫様だったのだから当然だけどね」
その言葉に、私は弾かれたように顔を上げた。
「──私のこと、知ってるの?」
(つづく)+35
-6
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2317. 匿名 2024/04/15(月) 21:38:46
>>2315
素敵なお話がはじまった!楽しみにしてますね♡
+20
-2
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2324. 匿名 2024/04/15(月) 21:42:59
>>2315 ⚠️🐚 ⚠️解釈違い🌫
最初の夜、最後の恋を君と②
そこでようやく私の目は彼の顔を捉えた。
綺麗なのはあなたの方じゃない──そんな言葉が喉まで出かかったくらいに整った顔立ちに目を奪われる。
そのスッとした鼻梁の下の薄い唇が言葉を紡ぐ。
「うん、知ってるよ。ずっと、ずっと前からね。……君は、僕のことを忘れてしまったのかな。──ねぇ、さくら姫?」
その言葉と共に、私の心は一面の花吹雪の中に連れて行かれた。
子供の頃の記憶が蘇る。
小学校に上がるか上がらないかの頃だろうか。
確かあの時もこうしてお濠の周りで遊んでいたっけ。
うちは旧藩主に連なる家系だった為、お城絡みのイベントには軒並み駆り出されていたように思う。
その時もちょうど観桜会の時期で、日本舞踊を披露することになっていた私は桜染めの着物を着せられていた。
「桜のお姫様みたい。さくら姫だね」
私にそう言ったのは誰だったか……。
朧気な記憶の端っこで、肩ぐらいまで伸びた髪が揺れるのが見えた。
──そうだ、あの子だ。
どこの子かは分からないけど、私の隣には歳の近い女の子がいて、観桜会の間はその子と行動を共にしていた。
大人に囲まれて退屈をしていた私はその子と遊ぶのが楽しくて仕方なかった。
色素の薄い大きい目が特徴的な可愛らしい子だった。
なぜか目の前の男の子とあの子の顔が重なる。
同じ目の色──?
「違う……だって、あの子は女の子で……」
私の口からこぼれた言葉に彼が柔らかく微笑む。
「ああ、子供の頃から髪が長かったからね。よく女の子と間違われていたんだ。だから多分、君の想像で違わないと思うよ? でも覚えていてくれたみたいで嬉しいな」
まさか……本当にあの子なの?
いまだ半信半疑の私に彼はこう告げた。
「君のこと、攫いに来たんだ」
春のほんの僅かな期間だけ遊んだ女の子。
あの後、誰にその話をしても「そんな女の子はいなかった」と言う。
夢か幻かはたまた桜の精か、私はそんな類のものでも見ていたのではないかと思っていた。
けれどこれで分かった。
あそこにいたのは「女の子」ではなく「男の子」だったのだから──。
あぁ、何から話そうか。
また会えて嬉しい。
男の子だったんだね。
今、どこに住んで何をしてるの?
──違う、訊きたいのはそんなことじゃない。
「……さらう? “攫う”って言ったの?」
「うん。でも実際口に出してみると物騒だったね。迎えに来た、と言った方が良かったかな」
その時、ザァッと強い風が吹いて桜の木々を揺すった。
花吹雪が世界と私達を遮断し、刹那、二人だけの空間に切り取られる。
もしかすると周りの時間は止まっていて、動いているのは彼と私だけなんじゃないかと思えた。
(つづく)+29
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4472. 匿名 2024/04/20(土) 05:24:56
(リンク間違えたので再投稿します💦)
>>529長文総本山に紐付けします
【タイトル】
最初の夜、最後の恋を君と(全12話)
【あらすじ、人物】
観桜会で出会った不思議な男の子🌫️。
お見合いから逃げてきた私に「君を攫いに来た」と告げる彼は一体何者──?
桜の名所を舞台にした恋物語。
【注意事項】
⚠️🐚
一話目>>2315
+28
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13551. 匿名 2024/05/07(火) 09:01:36
>>13462
🌫まとめの場をありがとうございます。
ここにあるのは全て、むいくん推しの私の解釈によるむいくんのお話です。
【長文・SS】
>>724 帰宅困難シンデレラ
>>1201ご奉仕させて!(全3話)⚠️🐚
>>2167推しの第二ボタンを奪え
>>2315最初の夜、最後の恋を君と
(全12話)⚠️🐚
>>3978キスまで何cm?
>>4302捕食(全3話)⚠️🐚
>>6102僕しか知らない君の香り⚠️🐚
>>7575後朝⚠️🐚
>>8175Complete(全2話)⚠️⚠️⚠️⚠️🐚
>>8236借り物競走
>>9061いちごショート🍓
>>10333祈り
【ガヤ、一言、お題回答等】※一部抜粋
>>690 便利屋🪓
>>1900ミャクミャク
>>1958推しの車
>>4018彼トピ写真館
>>4963彼トピあるある
>>7992歯科検診
>>8282北島三郎🎲
>>8293推しの部活
>>9281小室系🍉
>>12134 >>12177子供の日
>>13401Janne Da Arc
【bokete回答】
>>3289 >>3407 >>3468 >>12298
Part15のまとめは12727です。
前回の「次トピで書いてみたいお話」というお題に「推しにメイド服を着せる話を書いてみたい」という回答をしていたので、それは有言実行できて良かったです🤭
今回はまとめをしない前提で参加していたので、そんな己の性癖に全振りしたような暴走妄想をメインに投下していました。
しかし、ここに来る度にトピ画のむいくんが「せっかくトピ主になったのに君は何の爪痕も残さないの?」と訴えかけてくるので、思い直して記録というか記念としてまとめることにしたという経緯があります。お話で爪痕は残すのは難しいので、せめてまとめだけでも……ということで。
むいくん二度目なのにごめんよー🥺💦と思いながらも、トピに来れば推しが出迎えてくれて、それが自らの手によるものだということはとても幸せな体験でした。
時間を割いて読んでいただいた全ての方に感謝します。評価・コメントありがとうございました。\( *´ω`* )/ウレシカッタヨ♪
ではでは、フィナーレと柱稽古編に向けてまだまだ盛り上げて行きましょう♪🤗💕+71
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