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2073. 匿名 2024/04/15(月) 16:30:41
>>2072
歌お題
②
1DAY
「ぎーゆう」
ピンクのワンピースにフードの付いたパーカー、足元は茶色いブーツを履いた女の子が声をかけてきたのは、そんな鬱屈した放課後、公園のベンチだった
・・・親し気に話しかけられたが、生憎と覚えがない
「・・・・どこかでお会いしましたっけ?」
「義勇が覚えてないだけで、何度も会ってるよ」
「・・・・そうか」
「私は、がる実」
家に帰ると、せっかく結婚が決まって幸せそうな姉が笑顔を少し崩して接してくるのが申し訳なく、真っすぐ帰りたくなかったが、かといって行き場も無く、足を運んだ場所だった
母と年の離れた姉の言う事には、もっと近いところに大きくて遊具の充実した公園があったにも関わらず、子どもの頃の俺はここの公園が大のお気に入りで雨の日にも行きたがって大変だったという
「この狭さが落ち着いたのかしらねえ」
そう言って笑ったのが母だったのか、姉だったのか、記憶は既に曖昧だ
・・・・この公園で遊んでいた子の一人だろうか
毎日のようにこの公園に来ていたらしいから、同年代の子たちとも遊んでいた記憶はある
その中の一人が高校生になった今も腐れ縁の幼馴染だが
「ガル子さんとも、何度も会ってる」
「・・・・!」
「仲良かったよね。義勇はどちらかというと一人で黙々と遊ぶタイプだったのに、ガル子さんに誘われると断らなかったし嬉しそうだった」
「・・・・そう、だったか?」
「義勇のことなら何でも分かるよ」
否定しても良かったのに、にこりと笑う、覚えのない少女に、何故か俺は逆らえなかった
肩まで伸びた茶色の髪の毛が夕陽に透けていた
「何でも分かるよ」なんて言ったけど、義勇の辛さなんて私は理解できてなかった
ただもう一度、あの頃の笑顔を見たかった
続+24
-14
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2074. 匿名 2024/04/15(月) 16:33:44
>>2073
歌お題🌊
③
2DAY
「家に帰りたくなかったらまたここに来てよ。一週間くらいはいられると思う。五時過ぎたら誰も来ないから、話しよう」
別に行かなくても良かった
でもがる実の取り留めのない話を聞くのはどこか心地よかった
子どもの頃親が車で流していた懐かしい歌を聴いているような感覚だ
がる実の話は荒唐無稽で、自分の年齢は分からないけど100歳は超えているとか、ずっと一緒にいた恋人は10年以上前に病で離れた、とか
がる実の外見は俺より2~3歳上というところだと思うのだが、それで10年前というとせいぜい8歳だ
・・・・一体何歳の時の恋人なんだ
「義勇に似てたよ。長くて黒い髪で、青い瞳をしてたの」
そんなに特徴があるなら、会っていたら覚えていると思うのだが、
「義勇は彼とも会ってるよ。私と恋人は、いつも一緒だったから」
などと言われて微笑まれた
──そう、いつだって一緒だった
彼は私より年上で、その分物知りだったから、私に色んなことを教えてくれた
彼と一緒に過ごせた日々は幸せだったから、義勇にも分かって欲しかった
好きな人といられるのは、言葉を交わせるのは、奇跡なんだって
続+20
-15
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