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1903. 匿名 2024/04/15(月) 08:18:17
>>1378⚠️解釈違い🌊⚠️何でも許せる方
『寄り道、裏道、まわり道』
②
次に自習室で一緒になった日、冨岡くんは私の座っていた席の並びに、間を一つ開けて座った。
まだ席は他にたくさん空いていたのに、そこが指定席かのように当たり前に。
最終下校の時刻になる頃にはまた、私達2人しか残っていなかった。皆、鍵を返しに行く一手間が面倒なのだ。
だからこの前と同じように、一緒に職員室に鍵を返しに行く流れそのまま、並んで帰った。
そうして、約束をするわけでもなく、決まった曜日に同じ自習室を利用して、一緒に帰るのが[なんとなく]決まり事になっていった。
使っている参考書の話、目指す学問の話、好きな食べ物の話。
沈黙を作りたくなくて9割方喋るようになった私と、質問に答えつつ控えめに相槌を打つ冨岡くん。
そのお決まりの時間が、いつしか私にとって癒しの時間になっていた。
「…よく喋る」
「え」
「他の奴ともそんなに機関銃のように喋るのか?」
「きかっ…!ごめんうるさかったね!ちょっと静かにするね!」
「……(なんで?)」
見たこともない顔をして固まってる。
それが可笑しくて、結局笑いを堪えきれなくて、また別の不思議な顔を見ることになった。
この時の言葉が、
「俺以外の男ともこんな親しげに沢山会話するのか?それとも俺だけ特別だと思って差し支えないか?」
という意味だったことを知るのは、もう少し後の話。
つづく+37
-7
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1904. 匿名 2024/04/15(月) 08:21:08
>>1903
キュンキュンする…
この先の展開楽しみにしてます💙+22
-3
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1939. 匿名 2024/04/15(月) 11:09:44
>>1903
機関銃w+20
-0
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2787. 匿名 2024/04/16(火) 22:12:15
>>1903⚠️解釈違い🌊⚠️なんでも許せる方
『寄り道、裏道、まわり道』
③
その日は、一緒にならないはずの曜日だった。校門を出た少し先に、冨岡くんが立っていた。
「これ」
「!!これ、狭霧庵のいちご大福!えっ、並ばないと買えないやつだよ?どうしたの?」
「並んだ。好きだけどなかなか食べられないと言っていただろう」
今日は何でもない日なのに?暇だった?そんなはずないよね受験生だもん。
混乱したまま、帰路を少し遠回りした場所にある公園のベンチに並んで座って、柔らかい求肥に包まれたこし餡と大きなイチゴを、一度に口に含んだ。
「うまい」「おいしい」
言葉が重なったことに胸が跳ねて横を見ると、頬まで粉だらけの冨岡くんがいた。予想もしなかった姿に私はまたしても吹き出すことになり、隣の彼と同じように粉にまみれた。
粉だらけの冨岡くんが、珍獣でも見たかのような顔をして、粉だらけの私を見る。全部、君のせいなんだけど。
次の瞬間。
色白で骨ばった、体格の割に大きな手がスッと伸びてきた。そして親指でなぞるように、粉だらけの私の顔を拭った。
───胸が、ぎゅうっと押しつぶされそうになるのを感じた。
目の前にある、白色と小豆色に包まれた齧りかけの赤い果実が綺麗なハートの形をしていて、まるで私の気持ちを映し出しているようだった。
お願い。暴かないで。
今は、少し前までは恐れていたはずの沈黙がもたらす独特の安心感に、ただ甘えていたい。
何も言わない冨岡くんに、「どうして今日、並んでまでいちご大福を?」なんて聞く勇気はない。
だって今はそんなことで心を壊してる場合じゃない。今日は機関銃になれない。
私は、さっきまでいちご大福に掛かっていた包装紙を大切に折りたたんで、制服のポケットにしまった。自分の気持ちを、見えないように内側に隠して仕舞い込むように。
つづく
(コメント下さった方々ありがとうございます。嬉しいです!)+31
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