ガールズちゃんねる
  • 1880. 匿名 2024/04/15(月) 05:52:31 

    >>1762
    御伽草子『遠眼鏡』(8)
    ⚠️療養所として女子キャラ屋敷の名だけ出て来ます

    「次にここに来るのは来週の予定だ。寛三郎の予報では、明日からしばらく雨が続くようだから、見物したければ遠眼鏡ですると良い」

    ある日の夕方、義勇はガル子を部屋に送り届けるとこう伝えた。しかし彼女は首を振った

    「義勇さん……実は、あなたの鍛錬を見物するのは今日が最後だったの。父様がね、この家を売り払うことにしたんですって。明後日には私は迎えが来て、遠くに行くことになる。もう、あなたとは会えなくなってしまうの」

    「…!」

    「ごめんなさい、急なことで私も驚いてしまって…。今日はずっと、そのことを伝えなきゃと思ってたんだけど、言ってしまったら本当のお別れになってしまいそうで、言えなかった。でも、やっぱり挨拶だけはしておきたい。義勇さん、今までありがとう…。私、私本当に楽しかっ」

    「君はどこへ行くんだ?家に戻ることになるのか?それとも」
    義勇はガル子の言葉を遮って声を荒げた

    その様子にガル子は驚きつつも、首を振って答えた

    「家には戻れない。上手に歩けない娘がいることを、父は良く思っていないの。足が不自由では見合いもさせられないと言われたわ。私はどこか遠い療養所にやると言われてる」

    「療養所?そこに行けば治るのか?」

    「分からない。小さな頃はお医者様に診てもらっていたこともあるんだけど、母が亡くなってからは父は治療しても無駄だといって私をここに置いたの。私に治療を受けさせる気は父にないと思う。私は兄様や姉様のように、お仕事を手伝ったり良い家に嫁いだりして父様のお役に立てないもの。でも父には感謝もしているわ。ここに来たからこそあなたに会えた。義勇さんと巡り会うことが出来た」

    それを聞くと義勇は、決意したように後ろに控えていた寛三郎を見た

    「寛三郎、今からガル子を蝶屋敷に連れて行くぞ」

    「義勇?!」

    「ガル子、機能回復の訓練を受けられるところなら知っているところがある。俺と一緒にそこに行こう」

    「えっ?!でも……」

    「君の父親は君を手放すつもりなんだろう。いや、父親が返せと言っても俺は聞くつもりはない」

    「義勇さん」

    「それに」

    「王子は姫をさらうものと昔から決まっている」

    義勇はガル子を軽々と抱き上げ、窓をすり抜けた

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  • 1894. 匿名 2024/04/15(月) 07:58:16 

    >>1880
    かあっこいい…

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  • 2146. 匿名 2024/04/15(月) 18:40:08 

    >>1880

    ぎゃー♡♡義勇さんたら大胆😍
    続きお待ちしております

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  • 2351. 匿名 2024/04/15(月) 22:05:11 

    >>1880
    御伽草子『遠眼鏡』(9)
    ⚠️療養所として女子キャラ屋敷の名だけ出て来ます



    あれから季節は何回か変わった
    ガル子は蝶屋敷で治療や訓練を受け、順調に回復していた。他の隊士の目もあり、義勇がガル子の元に訪れることは少なかったが、二人は寛三郎や文を通して近況を報告し合った

    ガル子を連れ去った後、義勇はガル子のために、あの家からピエロの絵本と遠眼鏡を持ち出した
    娘や持ち物を盗まれて騒動になることを覚悟した義勇だったが、失踪したガル子を家族が探す様子はなかった
    ある日あの地へ行ってみると、あの家を買い取ったと思われる住民が住み始め、何事もなかったように日常が営まれていた

    義勇は彼女にそのことを伝えていない。彼女も家のことを尋ねたりはしなかった
    治療以外の時間はおとなしく絵本の頁をめくり、見えない義勇の姿を求めて、窓の外を遠眼鏡で覗いていた



    蝶屋敷から退院の目処がついたとの連絡を受け、義勇は屋敷を訪れた

    コンコンコンと扉を叩いてガル子の返事が聞こえると、義勇はガル子の部屋に入った

    「調子が良さそうだな」

    「義勇さん!来てくれたのね!そうなの、来週くらいには、退院出来そうだって」

    義勇は頷くと、手土産の菓子をテーブルに置いた

    「義勇さん、何から何まで本当にありがとう。私どんなにお礼しても足りないくらいだわ。私足が治ったら、一生懸命働いてあなたのご恩に報います」

    久しぶりに義勇に会えた嬉しさと、退院の喜びでガル子は目をキラキラとさせていた
    そんな様子のガル子を見て微笑むと、義勇はガル子に椅子に座るよう促した

    「これからのことは君が好きなように決めれば良い。もう遠眼鏡は必要ない。好きなところへは自分の足で行くことが出来る。だから…」

    義勇はそう言うと、抱えていた風呂敷包みから箱を出した

    「今日は、一つの提案を持って来た」

    「何かしら?」
    ガル子が覗き込もうとすると、義勇は彼女の前にスッと跪き、ガル子を見上げた

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