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1877. 匿名 2024/04/15(月) 05:15:36
>>1833
目が覚めたので続きを書きます
展開が突然ですが…🦪少し有ります
「無惨様と一番近い女」 21話
月彦様の顔がふっと緩んだ
「…思い出したのだな」
私は…私は…
そう…平安の時代にこの人と出逢っていた──
一気に様々な記憶が…場面が…蘇り
私の頭は混乱しその場に倒れ込んでしまった
鼻先をくすぐる白檀の懐かしい香りと
がっしりと支えられた腕の安らぎの中で私は目覚めた──
そこは月彦様の部屋で私は月彦様の腕の中にいた
いつの…間に…?
「──ガル姫…!」
不意に懐かしいその名を呼ばれ、きつくその胸に抱き締められた
ああ…私はこの感覚を知っている
遠い昔の前世の記憶
私達は平安時代に出逢い恋に落ちた
だが…結ばれることはなかった
私が流行り病で命を落としたがために──
「また逢える日が来るとは…夢にも思わなかった…」
「…私とて同じだ…平安の衣装を身にまとい、そなたの姿を見るまでは…」
「えっ、そうだったのですか?
突然結婚などと言われたのは…?」
「そ、それは…」
月彦様は狼狽えて身を離した
私に背を向けるとボソッと言った
「急がねばそなたを他の男に取られると…」
「え?」
聞けば先日の料亭での取引先の社長がいたく私を気に入って
自分の息子の嫁にしたいと言ってきたのだという
「もちろん即座に断った!
だが…この先もこんなことがあるやも知れぬと思うと…
形だけでも一刻も早く私のものにしてしまいたいと…」
背を向けた耳が赤くなっている
そんな子供のような…と呆れつつも私は胸が熱くなり
思わずその背中にそっと頬を寄せ手を添えた
そんな私の手を月彦様はぐっと握ると
熱い眼差しで私を見た
「姫…」
その指を私の指に絡め愛おしそうに
そう優しく呟くと唇を重ねた+29
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1878. 匿名 2024/04/15(月) 05:25:22
>>1877
切れましたが💦
時間的にも🦪表現を含むので
続きはまた夜に──+28
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2248. 匿名 2024/04/15(月) 20:41:42
>>1877
「無惨様と一番近い女」 22話
地下にあるこの部屋に陽は差さない
だが枕元の時計ではもう正午を過ぎていた
月彦様は今日の仕事は全て断り
二人は千年ぶりの再会に浸ったのだった
オレンジ色の淡いランプの光の中で
薬指に光る石を空にかざしながら私は問うた
「あの頃とは姿も声も違うでしょうし
私だと気付かなかったのに
どうして結婚しようなどと思われたのですか?」
その問いに月彦様はしばし考え込んだ
「…わからぬ…わからぬが…
なぜかそなたが近くにいると
私はありのままの私でいられるような…
そんな気がした…」
ああ…そういえば…と私も思い返す
初めて月彦様のシャツの匂いを嗅いだ時のことを──
むせ返るような男の汗の匂いの奥に
どこか懐かしくて切ない
微かな白檀の香りがしたのだった…
こうして寄り添っているとその香りはさらにはっきりと感じられる──
遠い昔、平安の世では香を焚きしめ
衣にその匂いを染み込ませていた
その香も少しずつ調合を変えることで
想い人に個々の印象を残すという
余韻を楽しむ文化でもあった
私は──
何の香を焚きしめていたかしら?
何と言っても千年もの昔のことだ
すぐには思い出せなかった
懐かしくて心安らぐ白檀の香りと
確かな温もりを感じていると
いつしか思考は遠のき
私はとろとろと眠ってしまった
つづく
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