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1868. 匿名 2024/04/15(月) 01:14:32
>>570 クローバー ⚠️死ネタ
「どうした?探し物か?」
シロツメクサの中に座り込む私に目線を合わせ、杏寿郎さんが屈んで尋ねた。
「ごめんなさい。鍛錬の最中に気を散らしてしまいましたね」
慌てて立ち上がり、血流が乱れて立ちくらみを起こした私を笑いながら杏寿郎さんが支えてくれた。
「大したことではないんです。四つ葉を探していただけで…」
四つ葉?と杏寿郎さんが首を傾げる。
「なんでも、それを見つけると幸運がもたらされるとか、そんな話を耳にしまして」
くだらないことで杏寿郎さんの邪魔をしてしまったと申し訳なくなり、私は頭を下げるように俯いた。
「むぅ…そのような青葉にすがるほど幸せを希求しているとは…。君に辛く、寂しい思いをさせていてすまない。夫として不甲斐ない。」
杏寿郎さんはそう言うと、私の肩を支える手にぎゅっと力が込められた。
「とんでもないことです!誤解です。私は、杏寿郎さんと一緒になれてとてもとても幸せです。なのですが…」
私は顔を上げて強く否定した。私が四つ葉を探すのは、貴方の無事を願いたくて、その小さな青葉を見つけられたら貴方の無事を約束できる気がして…。
でも、そんなこと言ったら貴方の器量を信用していないと今度は呆れられてしまうかしら。いえ、貴方はそんな器の小さな方ではないでしょうけど…などと思いを張り巡らせていると、肩に乗せられた大きな手がするりと背中を優しく押し、そしてそのまま手を繋がれた。
「この庭では見つからなかったのだろう?少し遠くまで一緒に探しに行こう」
手を引かれながら、二人して俯きながら歩く。任務や鍛錬に忙しいのに、こんな仕様もないことに付き合ってくれる杏寿郎さんは本当に優しい。
少し歩いたところにシロツメクサが群生していたので二人で探した。しばらく座り込んで探してみたが、“幸運”はそうも簡単には見つからなかった。
「今日はもうすぐ日が暮れる。幸運探しはまた今度にしよう」
杏寿郎さんは来たときと同じように私の手を引いて屋敷まで戻ると、直ぐに任務へと出立した。
それから何度も杏寿郎さんと一緒に四つ葉探しに出掛けたが、屋敷から離れて遠くの方まで足を伸ばしてもなかなかそれは見つからなかった。
四つ葉は見つからなかったが、杏寿郎さんと手を繋ぎ歩いて、遠くまで出掛けて、同じ時間を過ごすというだけでこれ以上なく幸せなのだと私は悟っていた。
ある日の明け方、ふと人の気配に目を開けると枕元に任務帰りの杏寿郎さんがいた。
「すまない。起こしてしまったな」
「私の方こそごめんなさい。お迎えもせずに」
四つ葉を探して毎日遠くまで出歩いて疲れが溜まっていた。それで杏寿郎さんのお迎えもできないなんて本末転倒も甚だしい。四つ葉探しもこれまでだ、と思いながら体を起こすと、杏寿郎さんが私の目の前にそっと手を差し出した。
大きな掌にちょこんと青い葉が乗っている。
部屋に差し込む陽光の元、その青葉をまじまじと見る。それは…間違いなく四つ葉だ!
「任務の終わりに、つい先程見つけた」
「わあ!ありがとうございます。…幸運の四つ葉、いただいてしまっても良いんですか?」
「もちろん。君が幸せなら俺も幸せだからな。」
杏寿郎さんが毎日無事にここへ帰ってきてくれますように──そう願いを込めながら四つ葉を受け取る。
四つ葉が朝日に照らされて一層青々として見えた。
それから程なくして、屋敷には私一人になった。
やはり、こんな道端や野山に生えている葉に幸運をもたらす力などないということだったのか……私はそうは思わない。
「貴方が見つけてくれた四つ葉だもの。私の幸せを願ってくれたのね」
杏寿郎さんから受け取った時よりだいぶ色褪せた四つ葉を、私は優しく、大事に掌に乗せた。
朝日の元でそれを見ると、私にはそれが青々とあの日と同じように瑞々しく見える。
「貴方と過ごした日々がこの上なく幸せだったの。だから、私は今も幸せです」
杏寿郎さんと一緒に四つ葉を探しに出掛けた日々を思い出す。決して色褪せることなく今でも鮮明に思い出せる。
幸運を探しに出掛けた、幸せな日々を。
終わり+37
-13
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1898. 匿名 2024/04/15(月) 08:06:36
>>1868
悲しい結末ですが、ふたりが過ごした日々は間違いなく幸せだったんだろうなと思いました。
ラストじーんときました。素敵なお話をありがとうございます。
+19
-0
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1921. 匿名 2024/04/15(月) 09:56:58
>>1868
涙でます…書いてくれてありがとう+16
-2
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1922. 匿名 2024/04/15(月) 10:05:25
>>1868
セリフの一つ一つが素敵で、悲しいけれど温かい読後感でした。゚(´つω•`。)゚。+19
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2135. 匿名 2024/04/15(月) 18:36:21
>>1868
切ないけれど、同じくらい幸せを感じられるお話でした!書いてくれてありがとう🍀+16
-2
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14254. 匿名 2024/05/08(水) 19:00:17
>>13462
まとめの場をありがとうございます。
いつもは割と🔥さん妄想が多いのですが、今回は🐍強火だったかもです…
【SS・長文】
>>1905 🔥 オジサン構文 >>4038 >>9765
>>2818 🐍 声の役割(全4話)
>>5150 🐍 おいしいコーヒーが飲みたくて🇦🇹(全10話)
>>10543 🐍 blumengarten(1話)
>>11472 🔥 供養🙏(全2話)雰囲気🐚
【お題 🔥さん】
>>1868 クローバー
>>3897 お花見(全3話)
>>7289 チッス
>>10118 眼鏡を忘れた推し
【お題 🐍さん】
>>8751 音楽と推し
>>8769 モブ「ガル山さんかわいくなったよな」
>>9121 怖い話・ババアなガル子・タイムリープ
>>9225 パジャマシティ→⚠️二次絵 >>13471
>>10271 訛ってしまった推し
>>11614 耳打ち
【一言・歌とか】
>>5378 個人的彼トピあるある
>>9459 🐍 推しと宇多田ヒカル
>>9475 🔥 推しと宇多田ヒカル
>>9723 最推し以外のキメダンの好きなところ
>>11079 推しとマシンガンズ(まさか彼トピでONIGUNSOW歌う日が来るなんて…しかも誤字った🫠)
以下、長くなってしまいました。。
オジサン構文は続ける予定はなかったのですが、たまたま2話を思いついたので続いてしまいました。以前、悪い?頓珍漢寿郎🥺🍎というのを書いたときに特定のガル子とのハッピーエンドまで辿り着けなかったので、今回はハッピーエンドまで持ち込みたいなと思い完結編まで書けて良かったです。
おいしいコーヒーが飲みたくて🇦🇹は伊黒さん×海外のお話を書いてみたいと以前から思っていて、遅延する列車で出会いたい、カフェシーンで終わりたい、伊黒さんとドイツ語圏の相性が割と良さそう(異論認めます🙇♀️)などの理由からオーストリアで妄想しました。SSのblumengartenは、このウィーンの二人の帰国後、というつもりで書きました。
同担さんと一緒に旅行できたのは良い思い出です☺️🇫🇷merci♡
ウィーンの長文はドイツ語でタイトルを付けたかったのですが良いのを思い付かず、ずっと『伊黒さんとウィーンで出会う話』という仮題で長文を考えていたので愛着が湧いてしまい⚠️の方でずっと残してました。続編でblumengarten(ドイツ語でフラワーガーデン)とタイトルを付けて無事に願望を昇華できました🌧️
そのblumengartenでは傘に隠れてチッスしたり、お花見お題ではテントの中でチッスしたりと、趣味が爆発したようなお話ばかりでしたが、プラスやコメントありがとうございました🙇♀️
なんか今回は言葉足らず、説明足らずのお話もあり後悔・反省…ですが、今Partはゆっくりとみなさんのお話読めたり、コメントできたりしてすごく楽しかったです🥳これからまとめにもゆっくりコメントしていきたい✊
また、今回はキス祭りイベントで中の人にも挑戦してみまして…力足らずかもですが、伝書鳩の役割を少しでも果たせていたら嬉しいな🕊️
長くなりましたが、読んでいただき、プラスやコメント本当にありがとうございました。
過去Partではリフレイン、銀河鉄道の夜のような夜など。Part15は↓+47
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