-
1861. 匿名 2024/04/15(月) 00:43:23
>>833【マニアックお題】
特に急ぎではなかったが午前中には終わらせておきたい仕事を思い出して少し早めに出社した。
エントランスでIDカードを翳し、エレベーターに乗り込み振り向くと密かに想いを寄せている同僚が乗り込んできた。
「おはよ、宇髄が早いの珍しいね」
「ちと色々あってな」
階数ボタンを押すと扉が閉まり、エレベーターが上昇する。
この男は身なりに気を使っていて、2日連続で同じコーデで出社してきた事はない。それが今日はスーツどころかネクタイもシャツも、昨日と同じ…
「色々、ね…モテる男は辛いってとこ?」
「まぁな、離して貰えなかったんだわ」
「ふーん…」
自分が降りる階で扉が開く
程々にね──そう伝えて降りようとしたのに、眼の前の扉が閉まった。閉ボタンを押して見下ろしてくる瞳と視線が絡み、逸らせない。エレベーターは上昇する。
「昨日は──」
宇髄がその後話したことは、後輩(男)から飲みに誘われ、その後輩が宇髄と張り合って飲んだ結果、案の定泥酔した後輩を送り届けたものの玄関先で盛大に──その片付けやら後輩の介抱で終電を逃したらしい。
彼の階に到着し、エレベーターの扉が開く
「まっ、そういう事でな…俺様の朝帰りの原因が男っつー噂が流れんのは地味過ぎだろ、誰にも言うなよ」
その釘を刺す為に私をエレベーターから降ろさなかったのか、人の気も知らず勝手な人ねと、ため息交じりに了承の返事をして自分のフロアの階のボタンを押す。この不毛な恋心にいつ決着がつけられるのだろうか、エレベーターの扉が閉まると同時に、私の恋心も扉が閉まればいいのに──
宇髄は締まりかけた扉に腕を差し込んで再びこじ開けると、扉が閉まらないように寄りかかって腕を組み、私と視線を合わせた
「まだ何かあるの?」
「誰かに事情聞かれたらお前と過ごしてた、って事にしとくわ」
「そんなの嘘じゃん!やめてよ!」
本当にこの男は人の気も知らず──慌ててつい語気を強くした私を宥めるように片手でどうどうと身振りする
「嘘じゃなかったらいいんだな?」
妖艶な笑みを浮かべて、射抜くような眼差しを向けられ、言葉を失いはくはくと口だけを動かす私はきっとここ最近で一番間抜けな顔をしているだろう。
「近い内に落としてやる。俺は狙った獲物は逃さねぇし、一度手に入れたら離さねえ、案外重い男だ。覚悟しとけよ」
一体何なのよ──
「とっくに落ちてるっての…」
扉が閉まり下降していくエレベーターの中に私の呟きが響いた。
重い男…上等だよ。こちとら数年片思いを拗らせている。
今日、惚れた男の沼に更に深く沈められた。
その日の昼前に彼を見かけた時には、ネクタイとシャツは別のものになっていた。後日知ったが、汚れたときの為にロッカーに替えを置いてあるとの事で…
おわり+31
-7
-
1867. 匿名 2024/04/15(月) 01:01:34
>>1861
落とされました…+14
-3
削除すべき不適切なコメントとして通報しますか?
いいえ
通報する