ガールズちゃんねる
  • 1828. 匿名 2024/04/14(日) 23:19:11 

    >>1825 続き
    ⚠️ガル子も🌫も24歳の設定

    🌫『10年のキセキ』⑨

    するとむいくんは視線を落とし、私の指輪を見つけると嬉しそうに言った。
    「でも……それってさ」
    「そうだよ、むいくんがくれたんだよ」
    「良かった!僕たちはようやく結ばれたんだね──。この時代では長く一緒にいることができなかったから、残してきた君のことがずっと気がかりだったんだ……」
    その言葉を聞いた私は、やっぱり彼は人生の早い段階で亡くなってしまったんだな…と悟った。とても悲しいけれど、もし一緒に過ごせた時間があるとするならば、それはかけがえのないものであったにちがいない──と強く思った。
    そして、どうして今世の私達が人生の早い段階で出会うことができたのかも、わかったような気がした。
    ──これはきっと前世で長く過ごせなかった分、神様がくれた“時間のプレゼント”だったんだろうな……。
    「……本当は、僕も君にずっと言いたかった。──君のことを一番大切にするって。でもできなかったんだ…」
    伏し目がちに彼が辛そうに呟いた。
    「きっと私もぜんぶわかってたと思う。ぜんぶわかってて、それでもあなたのことが大好きだったんだと思うよ」
    ──まるで自分の中の誰かが喋ってるみたいだった。言いながら、心が散り散りに千切れそうになった。
    「ガル子、ありがとう。──君をとても愛していたよ。これからも、いつまでも君の幸せを願ってる」
    彼がにっこり笑って、そう言った。──すべてを浄化するような、柔和な微笑みだった。いつまでも見ていたかった──。
    けれど、目の前の美しい映像は崩れ落ちるようにして消えてゆき、やがて真っ暗になり何も見えなくなってしまった──。

    🌸🌸🌸

    そこで、私はハッとして目を醒ましたのだった。目尻にうっすらと涙が残っていた。
    ──何か大事なことを思い出したような気がしていた。
    私は、前世のふたりの分まで幸せにならなくてはいけないと思った。壮絶な運命によって引き裂かれてしまったふたりの分まで。──そしてこれからもふたりの願いを叶え続けていく必要がある、とも。

    続く

    +29

    -5

  • 1829. 匿名 2024/04/14(日) 23:23:42 

    >>1828 続き
    ⚠️ガル子も🌫も24歳の設定

    🌫『10年のキセキ』⑩ 最終話

    これからも私は、あなたに感謝の想いを伝えていけるだろうか?
    伝えきれない言葉の数々が、まだ胸の内側にたくさん残っている。
    ふたりで過ごす時間を大切にして、寄り添って生きていたい。そして、今度こそ最後の瞬間まで見届けたい──。

    カーテンの隙間から窓の外を覗くと、まだ薄暗かった。私は、眠っている彼を起こさないようにして、そっとベランダへ出た。
    高台のアパートからは、私達が慣れ親しんだ街を見渡すことができる。変わらない場所もあるけど、新しい建物が建ったりお店ができたりと、街も少しずつ形を変化させているようだ。
    どこまでも澄みきった空に、透きとおるような風が吹いている。
    『春はあけぼの』だなんてよく言ったものだなぁ…と思う。
    遠くの景色を白く縁取る朝霞と紫がかった雲が、しっとりとした風情を感じさせる。
    しばらくのあいだベランダの柵越しに春暁を眺めていると、「あ、起きてたの。おはよう」とむいくんがやってきた。まだ眠いのか目をこすっている。
    「おはよう。夜明けの空って綺麗だよね」
    「うん」
    「ねぇむいくん」
    「なに?」
    「もし生まれ変わって次の世でも逢えたら、また私を選んでくれる?」
    少しドキドキしながら、聞いてみた。
    「これから結婚するっていうのに、もっと先のことを考えてるの?まったく君っていう人はさ──」
    むいくんは呆れたように笑ったが、続けてこう言ってくれた。
    「選ぶよ、何度でも。──いつの世でもどんな時でも、君とずっと一緒にいたいから」
    「…良かった」
    いつ何が起こるかわからない人生だから、約束できる時にちゃんと約束しておく必要があると思ったのだ。一番大事なことを伝えておかないと、後悔してしまうことになるかもしれないから──。
    「コーヒー淹れてくるね。少し待ってて」
    むいくんはそう言うと、部屋の中へ行ってしまった。

    東の空に太陽が昇って、また新しい一日が始まる。何の変哲もない毎日の繰り返しだけれど、この平穏な日々が当たり前のことではないことを、忘れてはならないと思った。
    ふたりで過ごす時間を大切にできたら、次の世でもまたさらに次の世でも…何度でも奇跡を起こしていけると思った。
    私は、これまでに積み上げてきたふたりの時間──紡いできた言葉の数々と幸福な思い出、手を繋いで乗り越えてきた試練たち──のことを思った。
    ──ねぇ、むいくん。これまでの軌跡と、いくつもの奇跡の連続が、今日という日を作り上げたんだね。
    長い年月のすべてのキセキが実を結んで、私達の歴史に今新しい軌跡が記されようとしている。
    ──時空を超えた約束と生まれたての奇跡のような軌跡が、私の心をいつまでも震わせていた。

    完💍✨


    この話は私が彼トピを見つけた時からいちばん書きたかった物語です。投稿の場をどうもありがとうございました🌸

    +36

    -6