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1762. 匿名 2024/04/14(日) 21:45:58
>>1412
御伽草子『遠眼鏡』(7)
⚠️療養所として女子キャラ屋敷の名だけ出て来ます
「義勇、あの娘が随分と気にかかるようじゃノ」
蝶屋敷の門を出たところで、寛三郎が口を開いた
「そう言うわけではない。ただ、あの少女の足が治る方法はないのか確認しただけだ」
「見立てでは、訓練で回復する見込みが有りそうじゃノ」
「そうだな、入院の必要がありそうだが。本人を連れて行けばもっと詳しいことが分かるんだろうが…」
「それはなかなか難しいゾ義勇。あの子にはちゃんとした父親が居ル」
「ちゃんとしている?ちゃんとしているものか。足の悪い娘を一人で住まわせているんだぞ」
「そうかも知れんが物質的には充分な物を与えられているようダ。そのような娘を勝手にあちこち連れて行くわけにもいくまい」
「物を与えているだけで治る足を治さない父親など、居ないのと同じだ」
義勇の頑固さは今に始まったことではないが今回の様子はどうジャ。あまりややこしいことにならないと良いがノウ…寛三郎はため息をついた
それからも義勇は、あの沼地で鍛錬をする時にはガル子を迎えに行き、連れ出した。彼女も義勇らが来る日を心待ちにし、足が痛む日や雨の日は、遠眼鏡を覗いてその様子を熱心に見つめていた
鍛錬を見せているのか見せるために鍛錬しているのか分からんナ。寛三郎はやれやれとため息をついたが、鍛錬の機会が増えるのは彼のためでもあるし、何よりあのしかめ面が和らいでいるような気がして嬉しく感じるのだった
ところがこうした日々は、思いのほか早く終わりを告げた
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1880. 匿名 2024/04/15(月) 05:52:31
>>1762
御伽草子『遠眼鏡』(8)
⚠️療養所として女子キャラ屋敷の名だけ出て来ます
「次にここに来るのは来週の予定だ。寛三郎の予報では、明日からしばらく雨が続くようだから、見物したければ遠眼鏡ですると良い」
ある日の夕方、義勇はガル子を部屋に送り届けるとこう伝えた。しかし彼女は首を振った
「義勇さん……実は、あなたの鍛錬を見物するのは今日が最後だったの。父様がね、この家を売り払うことにしたんですって。明後日には私は迎えが来て、遠くに行くことになる。もう、あなたとは会えなくなってしまうの」
「…!」
「ごめんなさい、急なことで私も驚いてしまって…。今日はずっと、そのことを伝えなきゃと思ってたんだけど、言ってしまったら本当のお別れになってしまいそうで、言えなかった。でも、やっぱり挨拶だけはしておきたい。義勇さん、今までありがとう…。私、私本当に楽しかっ」
「君はどこへ行くんだ?家に戻ることになるのか?それとも」
義勇はガル子の言葉を遮って声を荒げた
その様子にガル子は驚きつつも、首を振って答えた
「家には戻れない。上手に歩けない娘がいることを、父は良く思っていないの。足が不自由では見合いもさせられないと言われたわ。私はどこか遠い療養所にやると言われてる」
「療養所?そこに行けば治るのか?」
「分からない。小さな頃はお医者様に診てもらっていたこともあるんだけど、母が亡くなってからは父は治療しても無駄だといって私をここに置いたの。私に治療を受けさせる気は父にないと思う。私は兄様や姉様のように、お仕事を手伝ったり良い家に嫁いだりして父様のお役に立てないもの。でも父には感謝もしているわ。ここに来たからこそあなたに会えた。義勇さんと巡り会うことが出来た」
それを聞くと義勇は、決意したように後ろに控えていた寛三郎を見た
「寛三郎、今からガル子を蝶屋敷に連れて行くぞ」
「義勇?!」
「ガル子、機能回復の訓練を受けられるところなら知っているところがある。俺と一緒にそこに行こう」
「えっ?!でも……」
「君の父親は君を手放すつもりなんだろう。いや、父親が返せと言っても俺は聞くつもりはない」
「義勇さん」
「それに」
「王子は姫をさらうものと昔から決まっている」
義勇はガル子を軽々と抱き上げ、窓をすり抜けた+31
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