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17394. 匿名 2024/05/12(日) 16:25:05
>>9556 🪦供養🪦
《ア・ポステリオリ》ハピエンルート①(>>15095の26話からこちらに読み進めたらハピエンです)
⚠️趣味全振り・何でも許せる方向け
もうここに来ることもないだろうと少し感傷に浸り
ながら正門をくぐると、あるはずのないものが目に入って、はっと足を止めた。
────宇髄さんのバイク。
そしてそれに跨る、大好きな人。
「おう。終わった?」
どうして…
一時間程前に私をここで降ろして、帰っていったはずなのに。
もう会えないと思っていたのに────
反応しない私を見かねたのか、バイクから降りスタンドを立てた宇髄さんが、ゆっくりこちらへ歩いてくる。
「あのさぁ…」
ゆっくりこちらへ歩いてくる宇髄さんと私の間の距離が、どんどん縮まっていく。
手を伸ばせば触れられる距離。手を伸ばしてしまわないように、ぐっと堪えた。
「何か俺に隠してることあんだろ」
隠していることが。
就職が決まらなかったことなのか。
このまま飛行機に乗って実家に帰ろうとしていることなのか。
もう“友達”として側にいるのが辛くなってしまうくらい、宇髄さんのことを好きになってしまったことなのか。
「あのなー、どんだけ一緒にいると思ってんだ。いつもと様子がちげぇことくらいお見通しよ?」
バイクに乗って背中にぎゅっとするのが好きだったこと。
朝、宇髄さんより早く目が覚めた日は、こっそり寝顔を眺めていたこと。
どんなに辛いことがあった日も、宇髄さんがバイクに乗って迎えに来てくれたら、顔を見ただけで気持ちが癒されたこと。
隠していることなんて、数え切れないくらいたくさんある。
「俺には…話してくんねぇの?」
宇髄さんの大きな手が、私の指先をそっと掬い上げて遠慮がちにきゅっと握った。指の先から伝わる優しい体温と寂しげに伏せた目に、胸が締め付けられる。
つづく+21
-6
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17400. 匿名 2024/05/12(日) 16:27:37
>>17394《ア・ポステリオリ》ハピエンルート②
⚠️趣味全振り・何でも許せる方向け
そんな顔をさせたかったわけじゃない。
ただ。事実だけを淡々と告げよう。
私の気持ちは、溢れ出さないように。
タイミング逃しちゃって言えてなかったけど、就職決まらなかったから実家に帰ることになったって。それだけ伝えて、こっちに来た時はまた遊ぼうねって。
そうしよう。
そう思ったのに────
「宇髄さん」
「ん?」
名前を呼ぶといつもそうやって。
きゅっと口角を上げて微笑んで、私の顔を見て返事をしてくれる。
そういうところも、本当に────
「大好き」
宇髄さんが息を呑んだのが伝わった。
いつだって、宇髄さんが大事に守ってくれていたこの関係にヒビを入れてしまうのは、我慢の効かない子供の私の方で。
甘えていないつもりでも。
期待していないつもりでも。
やっぱりどこか、私よりもうんと大人の宇髄さんの気遣いで成り立っていた関係だったと、思い知らされる。
そっと握られていた手に力が籠ったのが伝わった瞬間。そのまま腕を引かれて抱き寄せられた。
つづく+20
-6
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