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17190. 匿名 2024/05/12(日) 13:24:20
>>17188⚠️何でも許せる方⚠️以前別場所に落としたものの手直し再掲です⚠️大正軸推し亡き後
『最後の初めて』(2/2)
その日は、急に思い立ち書棚から本を取り出した。それは、義勇さんがよく読んでいたもの。
バサッ
間から落ちたのは、見覚えのない薄い冊子。
それは、指輪の型録だった。こんな物を持っていたの、知らなかった。パラパラと中を見てみると、傍線がたくさん引いてある。
───結婚の指輪は現今は男子も嵌めるようになつて
───内側を種々工夫して結婚の記念の字を彫刻
妙に知識があることを不思議に思っていたけど、ここが情報源だったのね。あれもこれもたくさん印が付けてある。
でもね義勇さん。こういう物は普通、一つを選んで贈るものじゃない?私はこの花型も、こっちの立爪も、この捻梅も贈ってもらった。本当に片っ端から。
そして印のついた傍らに、がたがたの文字を見つけた。
───大正◯年◯月◯日贈。よく似合う。しかし特別な時につけるとのこと。それでは俺の代わりにガル子に添うものにならない。次は控えめな造形の物が良いか。
ああ。恋しくてたまらない。
こういうところですよ義勇さん。言葉が足りない。
……違う。私は知ってる。
それを伝えたら、着実に近づく“別れ”の足音に私が怯えることを、彼はわかっていたから。だからまた、大切なことに一人で蓋をして。
あの茄子に手を伸ばす。
私も貴方を、愛してるから。
そろそろちゃんと、帰りの足も用意してあげないと。オガラを手に取る。
ぽた、と、一粒落ちた水滴を、茄子の皮が弾く。一つ、また一つと流れて落ちる。
それは、この茄子の牛に乗る人の涙にも見えて。
「…寂しいよ、義勇さん」
ありがとう、さよなら、、大好き。忘れることなんて、無かったことになんて、出来ない。
風に揺れた羽織の裾が、落ち着けと言わんばかりに私の背中を撫でた。
(抱きしめてやれなくてごめん)
(寂しい思いをさせてごめん)
こういう時、貴方は決まって謝る。
もう想いは十分に届いてる。触れることも会話することも叶わない現実は、とっくに受け入れた。もう、送ってあげなくちゃ。
今、お願いできることは───
来年もどうか、帰って来てね。私のところへ。
「牛さん、明日はどうぞご安全に。ゆっくりゆっくりお戻り下さい。お持たせの鮭大根が重たくて、ごめんなさいね。」
終わり+21
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17200. 匿名 2024/05/12(日) 13:29:12
>>17190ちょこっと補足と懺悔
単体で読めるお話ですが、>>10018「残桜」のその後です。実は時系列的にはこちらが先に書いたもので、私の中ではこちらが主軸になっています。
題名は初盆のことです。現世で2人が“初めて”共に経験する事はこれが最後、という意味です。
相応の時期のpartで投下するつもりでいましたが、やっぱり今回のうちに落としてしまおうかずっと悩んでいて、もう勢いで行ってしまえ!と思い。私の個人的な思い入れで、ここまではどうしても繋げておきたくて、フィナーレの空気に紛れて完全に自己満で投下しました。すみません。
先のお話で義勇さんが書いていた手紙の山を、何通かは一緒に笑って読めた数年後の夏のことなのか、はたまたそれは叶わず同じ年の夏のことなのか、ここは読んで下さった方に委ねたいと思います。
この後トピが閉じる時間までにはほぼ来られないと思うので、これにて失礼します。最後にしんみりしたの落としてごめんなさい!
それでは、名残惜しいですが皆様お元気で、楽しいフィナーレを!そして寝不足だけどアニメ楽しみましょうね(๑•̀ㅂ•́)و✧+17
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17215. 匿名 2024/05/12(日) 13:38:46
>>17190
一足早いしっとりした静かな空気
触れられないけど側にいて感じられる🌊
切なくも温かいお話☺
🍆にたくさんの鮭大根をお土産に
また来年も──
私もそう願わずにはいられません🥰
胸にしんと染みるお話をありがとうございました!+17
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