ガールズちゃんねる
  • 16633. 匿名 2024/05/11(土) 23:35:24 

    >>16598 つづき ⚠️欠損描写あり⚠️
    「チョコが溶けるその前に」27

    やっとみつけたそこは、目を覆いたくなるような光景だった。まるで悪い夢を見ているようだ。そうだ、これは長い長い夢かもしれない。きっともうすぐ目が覚めて、いつも通り家族と「おはよう」て笑い合うんだ。

    ぼろぼろの半々羽織で、かろうじてあの人だとわかった。
    すぐ側には、日輪刀を握った右手。
    「冨岡さん…、しっかり、して」
    尊い右手をそっと拾い上げ、土埃をはらう。
    「いま、助ける、から」
    まだ温かいそれを、彼の右腕に当てがった。
    「…右手を、右腕、に、合わせる」
    怒りと悲しみで、声が震える。それでも、冷静になるために声に出してひとつひとつ確認する。
    「位置は…、これで、よし」
    よくも、この人の右手を奪ったな。
    「今、縫合、しますから…」
    どくどくと遠慮なく流れ出る血が、私の手を赤く染める。
    「絶対、大丈夫、ですから」
    「………よせ」
    「まず、解毒剤を、打って、」
    「……無駄だ」
    「それから…、痛み止め、を…、」
    「…俺より、他の隊士の治療を」
    「固定、完了…、あとは、縫うだけ、」
    うわ言のように呟く私の口を、冨岡さんの左手が止めた。
    「お前は、…本当に言う事を聞かない」
    うん。最後まで、言いつけを守らなくてごめんなさい。
    「終わるまで…屋敷を出るなと…伝えたはずだ」
    どうしても、伝えたかったんだ。
    「…冨岡さん、生きてください」
    いつも私ばかり、言葉をもらってたから。
    「生きて、幸せに、なってください。絶対。もう、自分から幸せを諦めたらダメ」
    やっと、心から言える。
    「向こうで、私も幸せになります。だから、冨岡さんも…絶対、幸せになってください。それだけ、伝えに来ました」
    「……最後に教えてくれ。お前がいた世界は、鬼はいないんだな?」
    「……はい」
    「理不尽に、幸せを奪われることなく…誰もが平和に過ごしてるんだな?」
    「…はい」
    「…お前もか?」
    「はい…」
    「それなら、いい」
    傷だらけの痛々しい唇に、そっと自分の唇を重ねた。これは、最後のわがまま。
    「────甘いな」
    そう言って微笑んだ表情を、私はきっと忘れないだろう。

    右手を失くしたその人は、渾身の力を振り絞り立ち上がった。
    今度は、日輪刀を左手に握って。

    「…さよなら。冨岡さん」

    +22

    -4

  • 16655. 匿名 2024/05/11(土) 23:39:44 

    >>16633
    がる子ちゃんが居てくれて良かった…

    +20

    -3

  • 16747. 匿名 2024/05/12(日) 00:11:34 

    >>16633
    冨岡さんの、それならいいに、いっぱい詰まってる

    +20

    -2

  • 16910. 匿名 2024/05/12(日) 07:53:47 

    >>16633
    読んでます
    ああ辛い…(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

    +17

    -3

  • 17132. 匿名 2024/05/12(日) 12:30:19 

    >>16633
    ⚠️
    。゚(゚´ω`゚)゚。読んでます…!!!!

    +13

    -1