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15467. 匿名 2024/05/10(金) 19:35:03
>>1379🍃掻き乱す
任務を終えて帰ってきた実弥は一目で疲れているのが分かった。お風呂用意してあるよと言うと草鞋の紐を解きながら首を振る。
「いや、いいわァ。寝る」
廊下に上がる時もわたしの肩を一度ぽんとしただけで顔は見えなかった。そのまま奥に向かう背中を小走りに追いかける。いつもなら土間までついてくる爽籟も外にいるみたいだ。
……何か、あったかな。
疲れているだけならたまにあるけど、悪態のひとつもこぼさず表情さえ窺えないのは珍しい。聞いても答えが返ってくる類いではなさそうなので問い糺すようなことはしない。もちろん心配ではあるけれど。
気付かれないよう、後ろ姿に手をかざす。柱から隠まで鬼殺隊全員が背負う「滅」より苛烈な、広い背中のその文字が示す覚悟は、きっとまだわたしが触れていいものじゃない。
庭に面した寝室には朝日が横から差し込んでいた。実弥はもう部屋の中だ。広縁から声を抑えて呼びかける。
「わたし、居間にいるから。起きたら呼んでね」
返事がない。もう布団に入っちゃったかな。ふぅと息を吐いて立ち上がろうとすると、目の前でふと何かが動いた。
障子の間からにゅっと突き出た手が来い来いと手招いている。
え、何。恐る恐る近づく。障子の前に膝をついて体を寄せると、伸びてきた大きな手がくしゃっと髪をかきまぜた。
「わっ」
肩をすくめるわたしに構わず、隙間から手だけがわしゃわしゃと髪を乱す。本体は相変わらず障子の向こうだ。もう、何なの。犬じゃないんだから。
憮然とするわたしをよそにその手が耳の裏を通って顎を前へなぞり、唇に触れる。合図みたいなその仕草に心臓がどくんと跳ね上がった。けど、親指は下唇を優しく滑っただけで触れたまま動かない。
部屋の中は見えない。動かない。
動けない。
──かたん、とん、ぱたぱた。
遠くで街が目覚める音がする。
下唇をみょんと剥かれた変な顔のまま待つ。すると実弥はもう一度わたしの頭をぽんぽんと撫でてから、障子の向こうに手を引っ込めていった。
「おやすみィ」
中の薄暗がりから布団に潜り込む音と、ややあって小さな寝息が聞こえてきた。そっと障子を閉める。
乱れた髪の毛に手をやる。それから、唇。
朝日のせいで温かい。
──さぁて、と。
とりあえず替えの隊服を出しておかなきゃ。草鞋も新しいものを。お風呂も火は保っておいて。
でも、その前に。
膝を払って立ち上がる。庭に目を移すといつもの松の木に彼の相棒の姿がない。あれ、どこ行ったかな。
「おいで、爽籟。洗ったげる」
そう呼びかけて見回すと、井戸端の盥にすでにちょこんと収まった爽籟が、遅いぞとでも言いたげに飛沫をあげて羽ばたくものだから慌てて庭に降りたのだった。+30
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15495. 匿名 2024/05/10(金) 20:07:36
>>15467
支える為に、保つ為に、存在が必要な時ってあるよね…。相手が求めている物を求めらている分だけ与えられるってすごい愛情だなァ。+18
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15500. 匿名 2024/05/10(金) 20:16:23
>>15467
言わなくても絶妙な距離で相手の負担にならないように心配り出来るガル子さんが素敵ですね きっと実弥にとってかけがえのない大切な女性なんだろうな…+19
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15506. 匿名 2024/05/10(金) 20:25:10
>>15467
素敵…😇髪も心も掻き乱されたい+19
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16935. 匿名 2024/05/12(日) 08:34:29
>>13462まとめお借りします
⚠️解釈違い
不死川実弥
>>1266 桜随筆
>>4780 あの扉絵の話
>>4926 風薫る
>>7192 もう少し
>>12066 柱稽古の後
>>12773 死合わせ
>>15467 掻乱
煉獄さん
>>3772 窮鼠と黒猫
おたおめ続編間に合いませんで死た!
久しぶりの参加で楽しかったです、投下少ない&無風オブ無風の身で図々しくもまとめさせて貰いました、何故なら楽しかったから!!
なんだかんだありますが、楽しかったからですね。み〜て〜ってしたかったんです。
変わり映えもアイコンになるようなハジけた特徴もなく、なんとなくやっぱ場違いかもナァ〜と思いつつ(そんなことないよ待ちではないw)「何処かの誰かが楽しんでくれた」がやんわり伝わるのが楽しいんです、甘えさせてもらってるんです。
風向きは肌感でオノレが一番よく分かってますが、ちょっと隅っこお借りして顔を出したり引っ込めたりしてますのでをおゆるしを…
これにて御免、コメント・プラスくださった方には最敬礼で御礼申し上げ奉り候!!
同担、ついにアニメだぞ一緒に死のうな♡
お疲れ様でした🥹+42
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