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15292. 匿名 2024/05/10(金) 11:11:46
>>15226
🔥さん誕生日🎂
毎年この日になると落ち着かない。
5月10日。
杏寿郎の誕生日───
杏寿郎と付き合いはじめたのは社会人になって間もない頃だった。
快活に笑い、誰にでも分け隔てなく優しく振る舞う彼に急速に惹かれて行き私は深い深い恋に落ちた。
杏寿郎は優しかった。
私を心から愛し、大切にしてくれた。
街で偶然出会った知人にも
「俺の彼女だ。可愛いだろう!」
と本当に誇らし気に自慢してくれた。
そして、そういう時の相手のどこか困ったような顔を私はいつも見逃さなかった。
あれは雨が降った日───
退勤時間になる頃、晴天の霹靂とはこの事かというような土砂降りの雨が降り始めた。
まさか降るとは思ってもいなかった私は折り畳み傘も置いて来てしまっていた。
とりあえずホールで雨の様子を見ながら隙を見て帰ろうと思っていた時、見覚えのある姿が自動ドアの向こうから現れた。
「酷い雨だから迎えに来たぞ!一緒に帰ろう、ガル子!」
スーツの肩を濡らし、そう言って笑った彼の笑顔は陽光が射したように眩しかった。
そしてそれを遮るように聴こえて来た先輩たちの「やば」をまたしても私の耳は聴き逃さなかった。
きっかけはそれからだろうか。
「そういうの、やめてよ」
人前でも嬉しそうに手を繋ごうとして来る杏寿郎の手を私は振り払い、風で乱れた髪を直してくれようとする彼から顔を背けた。
今でも彼の悲しそうな顔をはっきりと覚えている。
自信が無かった。
私は彼に相応しく無い事は分かっていた。
私よりも彼に似合う人が他に居る。
そのまだ見ぬ誰かの方が彼を幸せに出来るのに、私は彼を手放したくなかった。
好きで好きで仕方ないのに、どうして私はこんななんだろう───
どんどん壊れて行く自分に耐えられなくなった私は彼からの連絡にも返事が出来なくなって行き、そのうちその連絡も途絶えた。
5月10日。
今さら何を言うつもりだろうか。
あれから片時も忘れた事のない彼の番号をタップする。
呼び出し音の後、しばらくの間があって懐かしい声が聴こえて来た。
あの陽だまりのような、優しく暖かい声。
「・・・もしもし、杏寿郎?誕生日おめでとう。私ね───」
おわり+29
-7
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15321. 匿名 2024/05/10(金) 12:29:00
>>15292
1レスなのに深い物語があって心が揺さぶられます。
この後の二人が気になる+18
-3
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15463. 匿名 2024/05/10(金) 19:32:56
>>15292
続きすごい気になるよぉ+19
-4
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