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15215. 匿名 2024/05/10(金) 05:57:50
>>14797
⚠️己の趣味に全振りです
Genius そのさんじゅうなな
「ガルコー!」
振り向いたのは目を大きく見開いたガルコ
駆け寄りたいが、スーツケースが邪魔をする
動けずにいるガルコに近づく
「ガルコ!どうしてたんだよ?突然メールもオンラインでも会えなくなるし…」
「むいくんごめんね」
ガルコの目から大粒の涙がこぼれ出す
藍染の手拭いで拭いてあげる
ホテルにチェックイン後、街を散策する
あの日のように浜辺に座って夕陽を眺める
「私ね、学部からドクターまでは研究が順調に進んでいたから調子にのっていたんだと思う。東海岸では研究が思うように進まなかった。成果が出ないから焦って悪循環に陥ったの。そのころだよ、もうメールもオンライン通話もする余裕がなかったの。むいくんには泣き言を言いたくなかったから。本当は言えば良かったんだよね」
ガルコを抱き寄せて、頭を撫でる
「ガルコが焦ってたなんて気づかなかった。本当にごめん。ガルコのどんなところも好きだよ。泣き言だっていっぱい言って。全部受け止めるから。まだ頼りない?あの頃のガルコに追いつけたかな?」
「もう追い越してるよ。むいくんの論文読んだ。すごくしっかりしてるってわかる」
「ガルコ」
「2年も音沙汰なしにしていたのに。空港でむいくんに名前を呼ばれたとき、一気に気持ちがあのころに戻ったの。でも、どうしたら良いかわからなかった。勝手に連絡を取らずに姿を消して、今更どんな顔をして会えば良いんだろうって。それなのに、むいくんが全部受け止めてくれたから。本当にありがとう。こうしてまた一緒に夕陽を見られて嬉しい」
「僕はずっとガルコのことを思っていたよ。1秒たりとも忘れたことなんてない。この学会で絶対会えると思って、飛行機だって頑張ったんだよ」
「──むいくん」
ガルコの目が潤んでいる
「もう泣くのはやめようよ。ガルコの笑顔が見たいよ」
学会2日目の午前中のセッションで2人とも研究成果を発表した
ランチタイムには2人とも質問攻めにあった
「教え子2人の立派な姿が見られて嬉しいですね」目を細める教授
「これもひとえに先生のおかげです」
学会最終日の夜、あの日と同じように星が見える丘に2人で行く
手を繋いで歩いていく
「綺麗」
星の輝きは変わらない
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15329. 匿名 2024/05/10(金) 12:44:39
>>15215
⚠️己の趣味に全振りです
Genius そのさんじゅうはち(しゅう)
夜空を眺めるガルコの目に涙が浮かんでいる
「ガルコ」
ガルコの手を握る力を強くする
「僕はここにいるよ。ずっと隣にいるよ」
「ありがとう。もう離れないようにするね」
「うん!何かあっても、ちゃんと言って。もう会えなくなっちゃうのはいやだよ。たとえガルコがどこにいたって見つけ出して、会いにいくからね」
「うん!これからは頼る。こんなに頼もしい彼が隣にいて幸せだよ」
春、卒業の季節
9年間の学生生活に終わりを告げる日が来た
4月からは製薬会社に研究職として就職し、共同研究先に常駐することになる
「9年間お世話になりました。4月からもよろしくお願いします」
「今度は学生ではなく共同研究ですね。頑張りましょうね」
教授との長い付き合いはまだまだ続く
ガルコは母校に助教のポストを得て、日本に帰ってくる
国際空港からの特急が駅に滑り込んでくる
「ガルコ!」
「むいくんただいま!」
「ずっとずっとそばにいてね」
「もう離れられないよ」
2人の思いがはるかかなたから、ひとつになる
お互いの新生活(僕は大して変わらないけれど)がうまくいくことを神さまにお祈りする
キメ宮神社にお参りし、「ガルコと思いは繋がっています」と報告する
「これからも2人仲良く暮らせますように」と新たにお願いをする
参道で名物のお餅を頬張る
「2人で食べる甘いものは最高だね!」
「うん!」
これからもガルコとたくさん甘いものを食べて、たくさん甘い時間を過ごしたい
おしまい
モチーフにした歌はSano IbukiさんのGeniusです
歌のタイトルをそのまま使っちゃいました
長々と書いてしまいましたが、プラスやコメントをくださり、本当にありがとうございました
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