ガールズちゃんねる
  • 15148. 匿名 2024/05/10(金) 00:30:08 

    🎂誕生日①
    ⚠️🐚🔥 ⚠️解釈違い

     今日は年に一度の特別な日。
     付き合い出して初めて迎える彼の誕生日とあって、私は朝からそわそわしっぱなしだ。

     大学の授業を終えた私は急いでアパートに帰ってシャワーを浴び、髪とメイクを整える。お気に入りのワンピースの下には、この日のために奮発した勝負下着を身に付けた。
     「今日こそは煉獄さんをその気にさせるんだから!」
     鏡に映る自分に気合いを入れて部屋を出た。

     電車に揺られながら、手のひらに乗せた鍵をそっと眺める。
     前回のデートの時、誕生日に手料理をご馳走したいと言ったら「作って待っていてくれるか?」と、合鍵を貸してくれてびっくりするやら嬉しいやら。
     付き合い始めておよそ10か月。ようやく恋人らしくなってきたのかな、と嬉しさで頬が緩んでしまい思わず車内を見回した。大丈夫、みんなスマホに夢中で誰も私のことなんて見ちゃいない。

     駅の改札を出て、彼のマンションの近くにあるスーパーに寄った。初めて振る舞う手料理はハンバーグ。私の数少ないレパートリーの中で、これだけは上手に作れる自信がある。
     煉獄さんの喜ぶ顔を思い浮かべながら材料をカゴに入れていく。スーパーの買い物をこんなに楽しいと思ったのは初めてかもしれない。

      ◇ ◇ ◇

    「お邪魔しまーす」
     緊張しながら鍵を差し込みドアを開けた。何度も来ている部屋なのに初めて訪れたときのようにドキドキする。そうっと足を踏み入れると、いつものようにすっきりと片付けられた部屋にホッとする。

     彼はあまり自炊をしないようだけど、まな板や包丁、鍋やフライパンなど、ひと通りの物は揃っている。
     もしかしたら歴代の彼女が使っていたのかもしれない……。そんな勝手な想像を巡らせて軽く嫉妬した。

    「煉獄さんだって、たまには何か作ってみたりするよね」
     買ってきた食材をしまおうと冷蔵庫を開ければ、入っているのはミネラルウォーターと缶ビールだけ。とても料理などするとは思えず溜息が出た。
     でも、あの煉獄さんに何もないはずがない。外食ばかりの彼に食事を作ってあげたいと思う女性なんて、きっといくらでもいるだろう。

     気を取り直してリビングのテーブルに花を飾った。スーパーの花屋さんで買った小さなブーケが、シンプルな部屋に彩りを加えた。

    つづく

    +24

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  • 15155. 匿名 2024/05/10(金) 00:46:57 

    >>15148🎂誕生日②
    ⚠️🐚🔥 ⚠️解釈違い


    ────煉獄さんとの出会いは、大学にほど近い場所にある小さなカフェだった。
     穴場的な落ち着いた雰囲気の店で、私は窓際のカウンター席の隅で課題を広げることが多かった。

     ある日、派手な髪の人が近くの席に座った。スーツ姿が格好良く決まって華やかな印象を受けた。
     その人は、まったりとコーヒーを飲みながら窓の外を見ている。整ったきれいな横顔を、気付かれないように盗み見た。

     うっかり落としたペンがその人の足元に転がった。咄嗟に立ち上がろうとした私に手のひらを向けて制止すると、さっと拾い上げ、手渡してくれた。
     お礼を言うと凛々しい眉毛を下げてにっこりと笑って、その瞬間に私は恋に落ちた。
     それは20年の人生で初めて味わう感覚だった。

    「そこの大学の学生さんかな」
     彼が窓の外をそっと指差した。
    「──はい!」
     話しかけられるとは思わず、びっくりして返事がうわずってしまった。
     低めの落ち着いた声が甘く耳に残って、その日は寝る間際まで彼のことばかり考えていた。
     
     それ以来、私がカフェに行った日には高確率で彼が現れるようになり、少しずつ言葉を交わすうちに勉強を見てもらったり食事に誘ってもらうようにもなった。
     彼は5歳年上の会社員。大学の男友達よりだいぶ大人で頼もしい。三度目の食事で交際を申し込まれ、次のデートの帰りには送ってもらった車の中でキスされた。

     こんなドラマみたいなことが本当にあるんだと思いながら、やっぱり手慣れているのかなと、この時は少し警戒したのだけれど……。
     
     部屋で一緒に過ごすことも増えてキスやハグもする仲になったのに、いつまでたってもその先に進まない。万全な心の準備も虚しく、結局いつもお行儀良くアパートまで送られてしまうのだ。

     自分の貧相な恋愛遍歴を辿っても、3ヶ月、遅くても半年以内までには何となくそんな雰囲気に持ち込まれていたから、なおさら煉獄さんの気持ちが分からない。
     いっそこちらから迫ろうかとも思うのだけど、未だ経験がないこともあって尻込みする。これまでの私は相手に対してどこかしら冷めていて、どうしても身体を許す気になれなかった。適当な理由を付けては断るうちに自然消滅、というパターンを何度か繰り返した。

     でも煉獄さんは違う。出会った日から強く惹かれ、どんどん好きになっていく。独り占めしたい、私だけを見ていてほしい。こんなふうに思ったのは彼だけだ。

     さすがに丸腰で百戦錬磨の男に迫るのは気が引けるし、甘い雰囲気の中で優しく求められ、男らしくリードされながら……。そんな理想の初体験像だって頭の中に描いていたりするわけで、どうしても煉獄さんから行動に移してくれるのを期待してしまう。

    つづく

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  • 16451. 匿名 2024/05/11(土) 22:02:30 

    >>15226
    お題に紐付けさせてください。

    >>15148
    🎂誕生日(全8話)
    ⚠️🐚🔥 ⚠️解釈違い

    今Partで投下できたのはこれだけですが、推しの誕生日のお話が書けて満足しています。プラスやコメントを頂けてとっても嬉しかったです。ドキドキしてもらえてよかった😆読んでくださりありがとうございました♡

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