ガールズちゃんねる
  • 15045. 匿名 2024/05/09(木) 23:01:13 

    >>14949《ア・ポステリオリ》24
    ⚠️趣味全振り・何でも許せる方向け

    宇髄さんは仕事が忙しいと言っていて、あれから会えていなかった。

    三分歩けば会える距離にいるのに、向こうがこれ以上深い繋がりを求めていないのなら、大人しく、そして何事もなかったかのようにまた“友達”でいなければ。

    でも。壊してしまった壁は、もう私の想いを隠してくれない。

    また春が来る。春はやっぱり、胸が苦しい。
    宇髄さんも、今。彼女を思い出しながら煙草の匂いを吸い込んでいるのかもしれない。

    ❀ ❀ ❀ ❀ ❀

    実家の両親に就職が決まらなかったことを連絡すると、呆れたり悲しんだり一通りしたあとに、最初の予定通り卒業したら仕送りは打ち切ると宣言された。

    「もう帰ってきなさい」と、飛行機に乗ってあっという間にやってきた父が部屋の解約手続きと引越し業者の予約をして、引き渡しの日まで一人黙々と部屋の片付けをしていた。

    宇髄さんに会わない日々が、どんどん過ぎていく。

    もう会わない方がいい。
    優しい宇髄さんを、これ以上困らせたくない。

    ​────“友達”は…どうやってお別れするの?
    ​────黙っていなくなりゃいいんだよ。

    前に、二人で話したことを思い出していた。

    ❀ ❀ ❀ ❀ ❀

    最後に、大学に寄ってから空港に向かおうと大きなリュックを背負って歩き出すと、スマホの着信音が響く。

    「…もしもし?」
    「おう、お疲れ。今どこ?」

    聞こえてきた、いつも通りの優しい声に胸が押しつぶされそうになる。

    「今…学校に向かって歩いてる」
    「マジ?ちょっとそこで待っとけ。動くなよ」
    「え、私今から用事が…」

    ​────切れた。どうしよう。
    すぐバイクの音が聞こえてくる。

    「よ、久しぶり」

    軽く手を挙げる宇髄さんの笑顔を見て。
    やっぱり好きだなぁ、大好きだなぁと思ってしまう。

    つづく

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  • 15048. 匿名 2024/05/09(木) 23:02:32 

    >>15045
    あ“あ“あ“…(ノД`)

    ※語彙がカオナシだ…ごめんよ

    +18

    -5

  • 15050. 匿名 2024/05/09(木) 23:03:41 

    >>15045《ア・ポステリオリ》25
    ⚠️趣味全振り・何でも許せる方向け

    「…ってか、何そのでけぇ荷物」
    「久しぶり。これは色々…」

    いつものようにヘルメットを渡してくる宇髄さんに、やんわり押し返した。

    「私今から学校行こうと思ってて。卒業式でゼミの教授とお話しできなかったからお礼言いたいし、他にも色々やることがたくさんあって…」

    私の話しを聞いているのかいないのか、宇髄さんは「へー…」と相槌を打ちながら、勝手に私の頭にヘルメットを被せて顎下のベルトを留めてしまった。

    「…聞いてる?私学校行くんだけど…」
    「送ってくから乗れよ」
    「すぐそこだから…」
    「いいから、乗れって」

    動揺を隠しながら後ろに跨って、宇髄さんの背中にしがみつくと。何だろう…少しの違和感を覚えて、でもそれの正体がわからない。違和感の正体を探っているうちに、正門が横目に見えた。

    「あ…えっ…あーー!学校通り過ぎた!」
    「うるせぇなぁ…ついでにコンビニ付き合えよ」
    「コンビニは通り過ぎないでね!」
    「どうしよっかねぇ。通り過ぎるかもしんねぇなぁ」

    笑っている宇髄さんの背中にくっついて、ぎゅうぎゅうと腕に力を込めて抗議の意を示す。
    このままあっちこっち連れ回されてしまうのかもしれない、春だから。
    でも、春だけど…変わらない様子の宇髄さんに少し戸惑う。

    何を話していいのかわからなくて黙っていると、信号待ち中、前を向いたまま宇髄さんが一気に言った。

    「俺ねー、仕事辞めたわ」
    「え…」

    信号が青になって、ゆっくり動き出す。

    「ちょっと揉めたけどな。退職願出してから課長のイビリがすごくって、それで参っちまって。お前にも会えねぇくらい落ちててさ…」
    「…そうだったんだ」
    「ずっと連絡できなくて悪かったな…。かっこ悪りぃとこ、見せたくなくってよ」
    「…いつもかっこいいよ、宇髄さんは」
    「おー、嬉しいこと言ってくれんじゃん。もう引き継ぎも顧客への挨拶周りも終わって、やっと人心地ついた感じ」

    いつの間にか、コンビニは通り過ぎてしまっていた。

    「よかった…ずっと顔色悪かったから」
    「心配掛けて悪かったな。だからパァーッとお疲れ様会しようぜ!頑張ったよな、俺ら」

    今は、私の顔色が悪いかもしれない​────。
    気付かれないように、「そうだね、今度しようね」と明るい声を返した。

    つづく

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