ガールズちゃんねる
  • 14819. 匿名 2024/05/09(木) 18:57:09 

    ⚠️デート企画⚠️解釈違い
    >>14816

    「ミズクラゲの恋」 第十話

    長く伸びた影を見ながらゆっくりゆっくり歩いても、10分もしないうちに出口に着いてしまった。
    何も言わずに歩幅を合わせてくれる優しさが嬉しかった。
    「愈史郎、今日はありがとう。すごく楽しかった」
    「俺も楽しかった。あとはやり残したことはないか?」
    「うん」
    真っ直ぐに正面から向き合った。
    後ろから夕陽を浴びた愈史郎はやっぱりかっこいい。
    手を伸ばしたら強く握り返してくれた。
    恋人ごっこはこれで終わり。
    最後は推しとファンらしく握手で終わるくらいがちょうどいい。
    泣きたくない。
    あと少しでも一緒にいたら、涙がこぼれそうだった。
    「私、寄り道して帰るので、現地解散でお願いします」

    電車に乗って深呼吸を一つした。
    誰にも言えないけど、ものすごーく正直に言うと、愈史郎が私の好きなところを教えてくれた時に「実は前から……」みたいな展開を妄想した自分が恥ずかしい。
    そんなわけないよね。夢小説の読み過ぎだ。
    愈史郎はたった一日だけなのに、絶対に夢を壊さない完璧な彼氏だったなあ。
    今までデート企画に当選した人は、お別れは辛くなかったのかな?

    家に帰って、お土産にもらったキャンディーを眺めた。
    予告どおりにイメージを上書きされて、今日のどこを切り取ってもときめく。
    どうしよう。実際に会ったらもっともっと好きになっちゃった。
    「この企画、夢みたいだけどリアコには終わってからがキツイなあ……」
    その日、私は初めて人を好きになり過ぎて泣くという経験をした。

    続く

    +25

    -6

  • 14822. 匿名 2024/05/09(木) 19:02:47 

    >>14819
    今日最初から読んで追いつきました!愈史郎ずっと格好良くて、ガル子ちゃんずっと可愛くて良い子で、涙を拭いてあげたい🥲

    +19

    -4

  • 14831. 匿名 2024/05/09(木) 19:29:06 

    >>14819
    切ないよ
    きっと推しに会ったらもっともっと好きになってしまうよね😢

    +18

    -1

  • 14874. 匿名 2024/05/09(木) 20:37:19 

    ⚠️デート企画⚠️解釈違い
    >>14819
    「ミズクラゲの恋」 最終話

    愈史郎のことをMAXまで大好きになってしまった私の心は気持ちの置き場がなくなってしまった。いつもだったら、芸能ニュースをチェックしていたけれど、それも疎かになってあの日のことを思い出していた。私、愈史郎の熱愛報道とか出たらどうなっちゃうんだろう。

    そんなぼんやりした状態でも、大学もバイトも休むわけにはいかないので、私は浅草の星バに向かった。今日もお店は混んでいる。次々に入るオーダーを捌いていると少し気が紛れた。
    「ご注文をどうぞ」
    「星バラテ一つください。ぬるめで」
    この声。顔を上げると猫みたいな大きな瞳と目が合った。
    「お、お支払いは?」
    「カードで」
    ピッ!
    「………………てる」
    聞き間違えじゃなければ、確かにこう言った。
    『バイトが終わったら外で待ってる』
    仕事が終わって、急いで着替えて外に出たら、愈史郎は本当に外に立っていて「少し歩こう」と促されて近くの公園に行った。
    どうしたんだろう。デート企画の時に何か忘れ物があった?実は企画は有料で未払いだったとか、不吉なことばかりが頭をよぎって、心臓がバクバクする。
    「今日は礼を言いにきたんだ」
    お礼?なんの?足をとめて地面に視線を落としながら愈史郎は続けた。
    「俺の仕事は華やかなようだが、周りは数字ばかり気にしているし、ネットではかなりキツイ意見もある。俺はあまり気にしないタチだが、しんどくなることもなくはない。あのデート企画の時は結構しんどい時期で、いつもと違う仕事だから受けたんだ」
    顔を上げた愈史郎と視線がぶつかった。
    意思のはっきりした大きな瞳が真っ直ぐにこちらを見ている。
    「役者はたとえ観客が一人でも全力を尽くす。目の前の一人を笑顔にできたらいいんだ。あの企画でガル子の顔を見ていて、そのことに気がついた。感謝している」
    私の存在が愈史郎に影響を与えたってこと?すごくない?企画が終わったら、私の存在なんて路肩の石になると思ってた。
    何か言わないと……声が上ずる。
    「わざわざ、それを伝えにきてくれたの?」
    愈史郎は首筋を長い指で掻きながら、少し困った顔をした。
    「今のは本音だが、それだけじゃない。役者として礼を言おうとか、この間のデート企画の後半はグダグダで悪かったとか色々理由を考えてきたが、シンプルにもう一度会いたかった。それだけだ」
    え?会いたい?誰が、誰に?
    意味を理解できない私に、じれったそうな声が飛んできた。
    「おい、なんか言えよ」
    「これなに?企画のアフターサービス?」
    「んなわけないだろ。あれはもう終わってる」
    「愈史郎、演技?」
    「本気だ」
    「……信用しない。信用しない」
    「その元ネタの男は、来週から新シリーズが始まるから最近まで一緒に仕事してた。ガル子が信じられるようになるまで、俺の言葉で伝えるから別にいい」
    そう言う愈史郎はスクリーンの中ともデート企画の時とも違う顔をしていた。

    20××年
    「愈史郎、早くー。映画が始まっちゃうよ」
    「本当に観に行くのか?」
    「そんな嫌そうな顔しないでよ。行くに決まってるじゃん。私は彼氏の活躍を巨大スクリーンで見たい派なんです」
    「実物がいるのに?」
    「それとこれとは別。なんだかんだ言って照れてるだけだってバレてるよ」

    おしまい
    inspired by POP STAR/平井堅

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