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14427. 匿名 2024/05/08(水) 22:13:24
>>13875⚠️解釈⚠️見切り発車⚠️自萌え⚠️😼社長
年上の後輩📿⑮
三年経って開発が終盤に差し掛かり、現場や役所や職人の元を走り回っている時に、とある会社から打診が来た。
新規開拓は無理だと思われていた業界で薬剤取扱いから始まり、まだ日本で馴染みのなかった配達ロボとそのルートを広げつつあり、急激にシェアを広げていた通販会社だった。
膨大な人脈ある若い社長だと知ってはいたけれど、実際に会ってみると驚くほど若く見えた。
サラサラとした前髪を少し横に流した下にある大きな目は、陽に透けると紫がかってみえる。
何百年と人の間で生きてきた、アンティークの鉱石のような瞳。
連れていた美しい女性たちよりも見入ってしまった。
不躾なほど社長を見て話をした。
「気になりますか」
社長は資料に目を落としたままで聞いた。
「申し訳ありません、綺麗だなと、思って」
「そうではなくて」
実際、見入っていなければ、私は自分を保てそうになかった。
社長の隣には悲鳴嶼くんがいたから。
「毎日時間ごとにインテリアが変わるのは面白いですし、それに、正直に言って資金面で非常に魅力的です」
「ありがとうございます。こちらは宣伝だけ出来ればいいので、UB開発さんにとって良い方向で企画を詰めて行けたら…」
開発を進めていけば資金不足は必ず起こるが、綿密に計画立てていたのでほぼ軌道内に収まっていた。
目の前にいる、三年前に辞めた人間が何度も何度も確認していた計画だった。
そしてまだ誰にも話していない先のことだったが、資金面でもう少し余裕がほしいと思っていたところだった。
見透かすようなタイミングだった。
きっと彼だ。
馬鹿みたいに確信を持ってそう思った。
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14438. 匿名 2024/05/08(水) 22:26:39
>>14427⚠️解釈⚠️見切り発車⚠️自萌え
年上の後輩📿⑯
「元気でしたか」
エレベーターに向かう途中、彼が小さく訊ねた
少し前方では山本社長たちが談笑している
「ちょうど困っていたところだったので、渡りに船でした。ありがとうございます。」
咄嗟に自分が元気かどうかわからなかったので、そう答えた。会話になっていないのに、彼がじっと見つめてうん、と言ったので、それだけで彼には何もかも正確に伝わっているんだなと思った。
「こちらとしてもメリットがありますから。時間はあるから、他の会社ともじっくり比べてください。」
悲鳴嶼くんが横顔だけで微笑む。廊下には絨毯が敷き詰められていて、柔らかすぎて私はいつもよろめいてしまう。危ないな、とほんの一瞬肩を支えられた。
やっと回ってきた初めての大きな仕事で、毎日のように助けてほしいと思いながら、一度も連絡しなかった。
先を見越してタイトになりそうな時は抱えた仕事を前もって分配し、チームの誰もが常に誰に頼られてもいいようなペースを確保することを念頭に置いた。彼ならばそんなことはやらなくても最後までやれただろう。
上から嫌がられても彼にはなれなくても、私は私のやり方で、時折挫けそうになりながら、やっとここまで来れた。
「…あ、姫ちゃん、元気ですよ」
「本当か、治療を頑張ったんだな。あの子も、あなたも。」
懐かしい、と思った。
悲鳴嶼くんはいつも何かにつけて褒めてくれていた。いなくなってわかった。どれだけ支えられていたのか。
のろのろと絨毯の廊下を並んで歩いていると、三年前のあの日に戻った気がしてしまう
4年経てば体のすべての細胞は入れ替わる。3年経てば気持ちは変わる、私も彼もあの時とは違う人間になっている
大丈夫、懐かしい人だ。
気づけばずいぶん前を歩いていた山本社長が怒ったように置いていくからなと言って、悲鳴嶼さんは本当に置いていかれた。
「ごめんなさい」
「ああ違う。社長は別のことに怒っているんです。だから気にしないでください。」
「別のことって?」
「私があなたに会いに来たことに。」
見上げるとそのまま彼の指が顎に添えられた
「よく見せて」
指先が眉に瞼に触れて、よかった、と柔らかな声が落ちてきた
「血色がいい。安心しました。」
エレベーターが着いて彼がするりと離れ、先客のいる中に入ると、私たちは階下まで一言も喋らなかった
次からは山本社長も悲鳴嶼さんも来ることはない。今日いた女性2人と話し合いを進めていく。
「お元気で。」
「悲鳴嶼さんも。」
三年前と同じ言葉を言われて、少し力が要ったけれど、今度は笑って返すことが出来た
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