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14269. 匿名 2024/05/08(水) 19:28:00
⚠️デート企画⚠️解釈違い
>>14220
「ミズクラゲの恋」 第六話
水族館のひんやりとした空気は、火が出そうなくらい熱くなった私の頬を冷ましてくれた。
順路にしたがって歩いていくと、クラゲの水槽の前にきた。青いライトに照らされたクラゲは幻想的に揺れている。
あれ?この子達って。
クラゲの紹介プレートを探すと『ミズクラゲ』の文字。
「愈史郎、これって」
横にいた彼に声をかけると、愈史郎も頷いた。
「ああ、さっき外で見たのと一緒だな」
「やっぱりそうだよね、でも水槽の中にいるとキラキラしているね。やっぱり、こういうところにいるのは選ばれた美クラゲなのかな?」
「なんだよ。美クラゲって。醜クラゲもいるのか?」
愈史郎がふっと笑って、水槽に視線を戻した。
青いライトで光っている横顔もかっこいい。鼻筋も綺麗だし、まつ毛も長い。クセの強い役が多いけど、愈史郎も美青年なんだよね。クラゲを見ているふりをしながら、こっそり横顔を見ていたら、小さな口が開いた。
「こうやってライトがあたっているから特別に見えるけど、他のやつと変わらないのにな」
そうなのかな?少し引っ掛かりを感じたけれど、「先に進もう」という愈史郎の後をついていった。
水族館を出て次に向かったのは、パークの一番奥にある「ふれあい館」だった。
看板にはイルカとの触れ合いプログラムが何種類か並んでいる。
愈史郎が、ちらっとこちらを振り返って「その格好なら、ガッツリ泳ぐのはやめておくか……」と呟いた。
今日のために不器用なりに髪の毛を巻いて、いつもの倍以上の時間をかけてお化粧をした。愈史郎の目に映る私が少しでもマシに見えるように。それを気遣ってくれるのが嬉しかった。
「ガル子、これはどうだ?」と指差したのは『イルカと遊ぶプログラム』
膝上ぐらいまでプールに入ってイルカに触ったりトレーナー体験をできるプログラムだった。
「やる!」
「よし、決まり」
魚屋さんみたいなつなぎを着て、プールに入るとイルカが近づいてきた。「イルカの肌ってナスみたいな触り心地なんですよ」というトレーナーさんの説明を聞いて愈史郎が手を伸ばした。
「本当だな」
背中に触った彼が弾んだ声を出した。私も続いて触ったけど、ツルツルひんやりしていて気持ちいい。
「ちょっと日差しが強いね」
遮るものがないプールに立っていると、頭がチリチリする。
これは頭皮焼けるかも、と頭に手を当てていたら、「ガル子」と呼ばれて、スポッとキャップが被せられた。
キャップを取った愈史郎を見たトレーナーさんの目が一瞬大きくなったけれど、すぐに何事もなかったかのように説明を続けた。
陽の光に透けている髪の毛がキラキラしている。
水飛沫の中で無邪気に笑っている愈史郎とイルカが眩しい。
推しが尊いとはこのことか。この言葉を作った人、天才。
一通りのハンドサインを教えてもらって戯れているうちに、あっという間に時間は過ぎていった。
「では、最後は体験の記念に写真を撮りますね。お二人一緒でも、お一人ずつでも良いですよ」
写真撮ってもらえるの?やったー!
「じゃあ、彼女とイルカでお願いします」
笑みを乗せたままの声で愈史郎がお願いした。
あ……そっか、一緒の写真とか残せないよね。
肖像権とかあるのかな?
体験終了後、もらったイルカとのツーショット写真を見て胸がツキンとした。
続く+22
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14296. 匿名 2024/05/08(水) 20:18:50
>>14269
読んでます📖愈史郎がかっこよくて好きー💕+18
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14415. 匿名 2024/05/08(水) 22:05:51
⚠️デート企画⚠️解釈違い
>>9082ナンパから助けてくれる
>>4166一応男なんで
>>14269
「ミズクラゲの恋」 第七話
「あ、何かの撮影やってる」
イルカエリアを出たら、テレビの撮影をしてるっぽい集団がいた。
「あ、まずい……」
慌てて向きを変えようとした愈史郎に、向こうのほうが先に気づいた。
「あー!愈史郎だ」
駆け寄ってきたのは、私でも知ってるアイドルのモブ美ちゃん。細い!可愛い!真っ白で発光してるみたいにキラキラしてる!
「ちょっとー。この間の話、わたし聞いてないんだけどー」
鼻にかかった声まで可愛い。天は何物与えてるんだろう。感動している私と対照的に、愈史郎はわかりやすく焦っていた。
「ガル子、ごめん。事務所の後輩なんだ。ちょっとだけいいか」
「もちろん。私はあっちで休んでるね」
きっとリアルな話なんだろう。
愈史郎はさっきまでとは全然違って、困った顔をしたり、お兄さんみたいな顔をしながら話している。
はたから見ていてもお似合いの二人。
愈史郎にとってはあっちの世界が本物で、今日は企画なんだなぁ。
当たり前だけど、推しにもプライベートがあるんだよね。
スムーズにリードしてくれるけど、今日のこなれた感じは絶対彼女いるよね。
「はぁ、リアコは辛い」
ふと、さっきのミズクラゲを思い出した。
海のクラゲと水族館のクラゲは住む世界が違いすぎて絶対に一緒に泳ぐことはない。
少し現実に引き戻されそうになっていたら、知らない2人連れの男の人が近づいてきた。
「ねーねー。何してんの?暇だったら一緒にまわろうよ」
え?これナンパ?
「結構です。連れがいるんで」
精一杯そっけなく言ったけど、全然響いてないっぽい。
「連れって女の子?それなら4人でちょうどいいじゃん」
しつこいなぁ。でも強く断って怒らせるのも怖い。
この場を離れようか。でも、そうしたら愈史郎と逸れちゃう。連絡先も知らないのに。困っていたら、遠くから愈史郎が走ってきた。
「こいつは俺の彼女だから」
軽く息を弾ませたまま、相手を一瞥すると私の手を取ってさっさと歩き出した。
置き去りにした男たちの「え?あれってもしかして……」「ゆしろ……」という声が聞こえた。
「バレたか。逃げるぞ」
愈史郎の声を合図に、私たちは手を繋いだまま走り出した。
走って走って海沿いまできたら、遊覧船乗り場で「出航しまーす」という声が聞こえてきて、船に駆け込んだ。
ガラガラの遊覧船の一番後ろの隅に座って逃げ切ったことを実感したら、ふつふつと笑いが込み上げてきて、涙が出るほど笑った。
「さっき、待たせてごめんな」
「全然平気。それより、愈史郎は写真とか撮られたらまずかったんじゃないの?わたし自分でなんとかしたのに」
「なに言ってんだ。遠くからでもわかるくらい顔が引き攣ってたぞ。彼女がナンパされているのに黙っていられるか。俺も一応男だから、ガル子一人くらい守れる」
企画だって分かってる。それでも嬉しかった。
続く
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