ガールズちゃんねる
  • 14220. 匿名 2024/05/08(水) 17:10:12 

    ⚠️デート企画⚠️解釈違い
    >>1259照れる推し
    >>14114

    「ミズクラゲの恋」 第五話

    タイミングを見計らったように「そろそろ、敬語はやめないか?」と愈史郎に言われて小さく頷いた。
    私鉄からモノレールを乗り継いで駅を降りたら、潮の匂いが鼻をくすぐった。
    しばらく行くと、大きな橋が見えてきた。ひらけた橋の上を風が抜け、視界に海が広がっている。
    足を止めて欄干から下を覗くと、水面に白いものがふよふよと浮いていた。
    「愈史郎、何か浮かんでるよ」
    「どれ?ああ、あれはクラゲだな。ミズクラゲ」
    「へー。この時期にもあんなにいっぱいいるんだね」
    クラゲは気持ちよさそうに波間を漂っていた。

    橋を渡ってすぐに自販機で飲み物を買った。
    愈史郎が出したのは黒の二つ折りの財布。何気なく見ていたら「マジックテープの財布じゃなくてがっかりしたか?」と笑われた。
    なんか、すっかりからかわれてる。
    「一応、成人してるからな。免許証でも見るか?」
    そんな!個人情報!見たいに決まってる!けど見ちゃダメでしょ。首をぶんぶん横に振ったら「じゃあ、やめとく」と笑顔のままお財布をしまった。

    ついたのは海の近くのテーマパークだった。
    「俺、水族館好きなんだ」
    『好きなんだ』
    自分のことじゃないってわかっているけど、その言葉にドキッとした。
    「ガル子は?」
    「……私も好き」

    ……
    ……
    ……

    うわー!言葉のチョイス間違えたかも。っていうか言葉が足りなかった?水族館だよ!水族館のこと!
    いや、愈史郎のことは好きなんだけど、決して今のは告白した訳じゃなくて…
    もう、なんて訂正したらいいのかわからなくてプチパニックになって、愈史郎の顔を見たら片手で口元を押さえている。
    え?ちょっと顔が赤い?
    「ガル子。そこで照れるな。俺にも移る」
    うそっ!可愛い。
    「ああ、もう調子が狂った。とにかく中に入るぞ」
    少し強引に繋がれた手に引っ張られながら、斜め後ろから見た愈史郎の耳が赤くて、私にまで熱さが伝染した。

    続く

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  • 14269. 匿名 2024/05/08(水) 19:28:00 

    ⚠️デート企画⚠️解釈違い
    >>14220

    「ミズクラゲの恋」 第六話

    水族館のひんやりとした空気は、火が出そうなくらい熱くなった私の頬を冷ましてくれた。
    順路にしたがって歩いていくと、クラゲの水槽の前にきた。青いライトに照らされたクラゲは幻想的に揺れている。
    あれ?この子達って。
    クラゲの紹介プレートを探すと『ミズクラゲ』の文字。
    「愈史郎、これって」
    横にいた彼に声をかけると、愈史郎も頷いた。
    「ああ、さっき外で見たのと一緒だな」
    「やっぱりそうだよね、でも水槽の中にいるとキラキラしているね。やっぱり、こういうところにいるのは選ばれた美クラゲなのかな?」
    「なんだよ。美クラゲって。醜クラゲもいるのか?」
    愈史郎がふっと笑って、水槽に視線を戻した。
    青いライトで光っている横顔もかっこいい。鼻筋も綺麗だし、まつ毛も長い。クセの強い役が多いけど、愈史郎も美青年なんだよね。クラゲを見ているふりをしながら、こっそり横顔を見ていたら、小さな口が開いた。
    「こうやってライトがあたっているから特別に見えるけど、他のやつと変わらないのにな」
    そうなのかな?少し引っ掛かりを感じたけれど、「先に進もう」という愈史郎の後をついていった。

    水族館を出て次に向かったのは、パークの一番奥にある「ふれあい館」だった。
    看板にはイルカとの触れ合いプログラムが何種類か並んでいる。
    愈史郎が、ちらっとこちらを振り返って「その格好なら、ガッツリ泳ぐのはやめておくか……」と呟いた。
    今日のために不器用なりに髪の毛を巻いて、いつもの倍以上の時間をかけてお化粧をした。愈史郎の目に映る私が少しでもマシに見えるように。それを気遣ってくれるのが嬉しかった。
    「ガル子、これはどうだ?」と指差したのは『イルカと遊ぶプログラム』
    膝上ぐらいまでプールに入ってイルカに触ったりトレーナー体験をできるプログラムだった。
    「やる!」
    「よし、決まり」

    魚屋さんみたいなつなぎを着て、プールに入るとイルカが近づいてきた。「イルカの肌ってナスみたいな触り心地なんですよ」というトレーナーさんの説明を聞いて愈史郎が手を伸ばした。
    「本当だな」
    背中に触った彼が弾んだ声を出した。私も続いて触ったけど、ツルツルひんやりしていて気持ちいい。
    「ちょっと日差しが強いね」
    遮るものがないプールに立っていると、頭がチリチリする。
    これは頭皮焼けるかも、と頭に手を当てていたら、「ガル子」と呼ばれて、スポッとキャップが被せられた。

    キャップを取った愈史郎を見たトレーナーさんの目が一瞬大きくなったけれど、すぐに何事もなかったかのように説明を続けた。
    陽の光に透けている髪の毛がキラキラしている。
    水飛沫の中で無邪気に笑っている愈史郎とイルカが眩しい。
    推しが尊いとはこのことか。この言葉を作った人、天才。
    一通りのハンドサインを教えてもらって戯れているうちに、あっという間に時間は過ぎていった。
    「では、最後は体験の記念に写真を撮りますね。お二人一緒でも、お一人ずつでも良いですよ」
    写真撮ってもらえるの?やったー!
    「じゃあ、彼女とイルカでお願いします」
    笑みを乗せたままの声で愈史郎がお願いした。
    あ……そっか、一緒の写真とか残せないよね。
    肖像権とかあるのかな?
    体験終了後、もらったイルカとのツーショット写真を見て胸がツキンとした。

    続く

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