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1412. 匿名 2024/04/14(日) 11:47:56
>>1291
御伽草子『遠眼鏡』(6)
「きゃっ…?!」
ガル子は義勇に抱き上げられ、腕の中で揺れていた
「王子はこうやって姫を抱き上げるのだろう。俺の家にも絵本はあった」
「えっ、えっ、いいです、こんな…!」
ガル子は顔を真っ赤にしてもがいた
私が踊りたいだなんて言ったから…!ガル子は羞恥と自己嫌悪でいたたまれなくなった
しかし義勇はその両腕でしっかりと彼女を抱き、どうと言うこともない、と言う表情でガル子に問いかけた
「怖いか?」
「ううん怖くない。でも、恥ずかしい」
消え入るような声でガル子がそう答えると、義勇は言った
「俺もだ。でも──」
義勇はそう言うと抱え上げたガル子の顔を仰ぎ見た
我慢ばかりするな
君はこの部屋で一人、もう充分に我慢して来たんだろう
足が悪くたってこうすれば踊れる
それに
「悪くない気分だ」
そう言うと、義勇はガル子を両腕で抱いたままくるりと回って見せた
「踊り方は全く分からないが」
義勇の台詞にガル子が吹き出し、二人は声を合わせて笑い始めた
義勇のこんな笑顔を見るのは久しぶりじゃナと、寛三郎は思った
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1420. 匿名 2024/04/14(日) 12:12:25
>>1412
ずっと読んでます!
義勇さん、王子様にぴったりでめちゃくちゃ素敵💙
見守ってくれる寛三郎も優しい+26
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1762. 匿名 2024/04/14(日) 21:45:58
>>1412
御伽草子『遠眼鏡』(7)
⚠️療養所として女子キャラ屋敷の名だけ出て来ます
「義勇、あの娘が随分と気にかかるようじゃノ」
蝶屋敷の門を出たところで、寛三郎が口を開いた
「そう言うわけではない。ただ、あの少女の足が治る方法はないのか確認しただけだ」
「見立てでは、訓練で回復する見込みが有りそうじゃノ」
「そうだな、入院の必要がありそうだが。本人を連れて行けばもっと詳しいことが分かるんだろうが…」
「それはなかなか難しいゾ義勇。あの子にはちゃんとした父親が居ル」
「ちゃんとしている?ちゃんとしているものか。足の悪い娘を一人で住まわせているんだぞ」
「そうかも知れんが物質的には充分な物を与えられているようダ。そのような娘を勝手にあちこち連れて行くわけにもいくまい」
「物を与えているだけで治る足を治さない父親など、居ないのと同じだ」
義勇の頑固さは今に始まったことではないが今回の様子はどうジャ。あまりややこしいことにならないと良いがノウ…寛三郎はため息をついた
それからも義勇は、あの沼地で鍛錬をする時にはガル子を迎えに行き、連れ出した。彼女も義勇らが来る日を心待ちにし、足が痛む日や雨の日は、遠眼鏡を覗いてその様子を熱心に見つめていた
鍛錬を見せているのか見せるために鍛錬しているのか分からんナ。寛三郎はやれやれとため息をついたが、鍛錬の機会が増えるのは彼のためでもあるし、何よりあのしかめ面が和らいでいるような気がして嬉しく感じるのだった
ところがこうした日々は、思いのほか早く終わりを告げた
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