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14111. 匿名 2024/05/08(水) 10:30:20
>>12892
「ミズクラゲの恋」 第三話
⚠️デート企画
⚠️解釈違い
「ガル子は、どこに行きたいんだ」
愈史郎に名前を呼ばれてる……夢かな、これ。
「おい!」
「あ、すみません。映画!映画に行きたいです。愈史郎が出てるシリーズの劇場版まだやってますよね?」
愈史郎と一緒に、愈史郎が出てる映画を見る。それってものすごく贅沢じゃない?
「却下」
え?
この企画で却下とかあるの?みんなやりたいことに付き合ってもらえるんじゃないの?
目が点の私の前で、愈史郎が淡々と説明する。
「第一に、俺はその映画の台本を初めから終わりまでセリフを覚えているぐらい読み込んでいて、全てのストーリーを知っている。第二にせっかくのデートなのに仕事関連のものに触れると、頭が仕事モードになる。第三に2時間も映画館にいたらその間、ガル子と話ができない」
愈史郎が私の鼻先に指を突きつけた。
「俺は自分の顔より彼女の顔を見ていたい派なんだ」
うわー!指先が触れそうです!
「異論は?」
「ないです!」
「プランBはあるか?」
プランB?あ、他に行きたいところか。
今日のためにあれこれ検索したネット情報を思い出す。
……だめだ。テンパって出てこない。
百面相の私を愈史郎は急かすわけでもなく、楽しそうに眺めている。
「ガル子、男と出かけるの初めてだろ?」
「う…」
だって、ずっと愈史郎を推してて、「愈史郎よりかっこいい人がいたら付き合う」って公言してて、それ以上の人には出会ったことないんだもん。
そんな私の貧しいプライベートを知られるのは死んでも嫌で黙っていたら、愈史郎はお構いなしで続けた。
「しかも、デートがつまらなかったら自分のせいかもしれないと気に病むタイプだな」
図星すぎる……
貧相な私の情報では映画デートからのイタリアンぐらいしかプランがなくて、時間が余ったり気づまりだったらどうしようと、ちょっと不安だった。
愈史郎の猫みたいな瞳がくるりとした。
「今日は俺に任せてみないか?つまらなかったら俺のせいにしたらいい」
いや、愈史郎の顔を見ているだけで365日過ごせるからつまらないなんてことは絶対にない。でも、そんな言い方をしてくれる優しさに気持ちが軽くなった。
「お願いします!」
「そしたら、電車に乗るぞ。軽く1時間くらい」
愈史郎は当たり前のように私の手を引いて駅に向かった。
続く
+27
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14114. 匿名 2024/05/08(水) 10:37:33
>>3202耳打ち
⚠️デート企画⚠️解釈違い
>>14111
「ミズクラゲの恋」 第四話
電車では運良く並びの席が空いていて、隣同士に座った。近い…なんかすっごくいい匂いする。それだけで胸がいっぱいになっていると、耳打ちされた。
「ガル子」
「はいっ!」
自分でもビックリするくらい大きな声が出て、あまり人がいない車内でも視線を集めた。
「しっ」
すかさず唇に指を当てられ、唇を閉じた。耳元の小さな声は続いた。
「着くまで暇だから、ガル子のことを教えてくれ。俺にもなんでも聞いていい。タブーはなし」
私もつられて小声になった。
「えっ?他にもお客さんいますよ」
「ああ、だから他の人には聞こえないように」
耳にかかる息がくすぐったくて、赤くなっているのがわかる。
「なんでも?」
「ああ。なんでも」
「好きな色は?」
「コバルトブルー」
「芸能界で一番仲がいいのは?」
「難しいな。現場でよく話すのは炭治郎かな」
「兄弟は?」
「一人っ子」
「好きな食べ物は?」
「わらび餅」
「星バで好きなメニューは?」
「星バラテちょっとぬるめ。俺、猫舌なんだ」
私の知らなかった愈史郎の情報がどんどん溜まっていく。耳元でコソコソ話している間に、電車は次々に駅を通り過ぎていく。
「俺も質問。友達にはなんで呼ばれてるんだ?」
「ガル子」
「好きな季節は?」
「夏」
「そういえば、浅草の星バでバイトしてるって言ってたな。家があっちの方なのか?」
「いえ、それは聖地……」
あっぶな、気持ちと一緒に口も軽くなるところだった。愈史郎の浅草の映画の聖地巡礼しにいって、そのままバイトを始めたなんて言ったらドン引きされる。
「せ……成長のために、外国人も多い地域で働きたいなぁと思って」
「えらいな」
「また、私のターンでもいいですか?」
「どうぞ」
「彼女はいますか?」
愈史郎は少し考えて、耳元で囁いた。
「いま隣に座ってる」
続く+25
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