ガールズちゃんねる
  • 13969. 匿名 2024/05/07(火) 23:13:25 

    >>12624

    ⚠️
    🌫️
    あなたのそばで


    今日は柱同士の手合わせの日。みんな僕より年上だし稽古はとても勉強になった。
    予定より早く終わったから夕方前には家に着きそう。
    ガル子は何してるかな?もし忙しくなかったら散歩に誘ってみようかな。あっガル子は甘い物が好きだし甘味処に行くのもいいな──

    家に着いたけど、いつも玄関で出迎えてくれるガル子の姿はない。銀子にガル子への伝言頼まなかったからなぁ。
    草履を脱いで家の中に上がり廊下を進む。
    「ただい…」
    言いかけた僕は思わず口を閉じた。
    少し開いてる襖の奥に見えたのは、泣いているガル子の姿だった。僕には気付いていない。
    「無一郎くん……無一郎くん…」
    僕の名前を呼びながら涙を流している。
    いたたまれなくなった僕はその場を離れ、屋敷の外に飛び出した。


    ──そう…そうだ。
    君はいつも笑顔だった。
    笑顔でいてくれた。
    僕の前で明るくふるまってくれた。
    任務から帰ったときは明るい笑顔で僕を出迎えてくれた。
    気丈に振る舞ってるけど、本当はか弱い女の子なんだ。
    僕が任務に出たあとは、きっといつも僕の無事を祈ってたんだよね。

    ──ごめん。ごめんガル子───

    あのとき僕は、後悔してないって言ったけど、一つだけ心残りがあるんだ。
    君を置いていってしまうこと。本当は君とずっと一緒にいたかった。
    もう叶わない願いなんだ。叶えることはできないんだ───
    堪えていたものが一気にあふれ出し、僕の頬を濡らしていった。


    続く
    コメント、プラスありがとうございます✨

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  • 14526. 匿名 2024/05/08(水) 23:58:01 

    >>13969
    ⚠️ 🌫️
    あなたのそばで


    スマホのアラームで目を覚ます。
    隣で寝ている彼を起こさないように、ベッドからそーっと抜け出しキッチンに立った。
    朝ご飯何にしようかな…。そんなことを考えてると後ろから急に抱き付かれた。

    「きゃっ」
    「ガル子ぉ…」
    彼が気配を消すのが得意なのはあのころから変わらない。まぁ今は無意識なんだろうけど。
    「おはよ、むいくん。びっくりしたよ」
    私の肩に頭を乗せてくる。
    「おはよぉ。起きたらガル子が隣にいないんだもん」
    「ごめんね。朝ご飯準備しようと思って」

    「ちょっ…重いよ」
    彼が体重をかけてきた。
    「くっついてたいんだもん」
    あのころは甘えてくることなんて滅多に……ううん、全然なかったけど、今はこんな風に甘えてくることがある。そこがすごくかわいい。
    「今日、柱の方たちと会う日でしょ。早く準備しないと」
    「あっそうだった!」
    背伸びしながら洗面所に向かって行った。

    「「いただきます」」
    「柱の方たちと会うのいつぶりだっけ?」
    「え~っと……2ヶ月ぶりくらいかな」
    「今でもこうして会う機会があるっていいよね。本当に素敵だと思う」
    「うん──本当にそう思う。平和な世界でみんなとまた会えて。もちろんガル子とも」
    「うん!私も」


    玄関で彼を見送る。
    「夕方には帰るよ」
    「うん。ふろふき大根作って待ってるね」
    「やったぁ!」
    ほっぺたにキスをしてくれた。
    あのころからふろふき大根が好きなのも変わらないね。
    「いってきます」
    「いってらっしゃい」

    ベランダに出て駅に向かう彼を見送る。
    私の方を振り返って笑顔で手を振ってる。私も笑顔で手を振り返す。
    後ろ姿を見ていたら、あのころの姿が重なった。長い髪、背中に『滅』と書かれた隊服、日輪刀─────

    でも今は鬼狩りに行くためではない。
    前世からの大切な仲間に会いに行くため。
    その事実に自然に笑みがこぼれる。

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