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13852. 匿名 2024/05/07(火) 21:29:48
>>13413
⚠️お奉行様🐚⑤
⚠️なんでも許せる方向け
⚠️自己満
🫶コメント、プラス感謝です🙏
「──宿下がり?」
「はい」
実家から、文が届いた晩のことだった。その夜私は御館様の褥に呼ばれた。
夜着に身を包んだ御館様は私の着物の帯を解く手を止めて聞き返した。
「あ、あの……母が病に臥せっているという便りが届いたのです」
何も今この瞬間に言うこともなかろうという後悔と、母への思慕が合わさって私の瞳からは雫が一粒滑り降りていた。
「泣かずともよい、明日にでも母を見舞うてやれ」
そう言って御館様は泣きじゃくる私の背を摩り、引き締められた胸を貸してくださった。
あくる朝、私は腫れぼったい瞼で女中頭に挨拶をし、実家へと向かった。
「奥方様も寛大な御方で良かったねぇ」
とびっきりの嫌味のせいか胸の辺りが落ち着かなかったけれど、私は久方ぶりに外の空気を吸いながら、道を急いだ。屋敷を離れるにつれ街並みは雑多な空気に変わっていく。
だが洗練とは程遠いその雰囲気が私は好きだった。物売りの呼び込みや、どこかから漂ってくる炊事の香り、幼子の泣き声すらも生命に溢れているような気がした。
突然里帰りした私を見て、母は仰天した。「あんた!まさかクビになったのかい!?」と私の肩を掴んで揺さぶる母を落ち着かせるためにご褒美代わりの里帰りだよ、と嘘をついた。
御館様の手がついたことは、母や父には言えなかった。だが後ろめたい気持ちが表情に出ていたのか、両親は私を心配してくれた。
続く+21
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