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13498. 匿名 2024/05/07(火) 01:43:26
譜面が完成したので一気にいきます!
>>13451
【神を自称する者よ】⑧
いくつかの季節がめぐり、宇髄は前にも増して柱として忙殺される日々が続く中で、ふとあの神のことを思い出していた。八つ当たりした事でバツが悪くなったこともあり、赴く用事も無い事からその事を心の隅においやっていたのだが、先日邸にやってきた隠の言葉が気にかかる…
「以前神隠しの鬼が棲んでいた森にある御神木が枯れかけているらしいですよ」
袖触れ合うも他生の縁というが、神と縁をある者など自分以外にいるのだろうか。一抹の不安を胸に、その夜、宇髄は森へ向かった。
いつものように森に足を踏み入れ、口には出さず名を呼んでみるも何も起きない。更に森の奥へと進みながら名を呼び続け四半刻…ようやく出会えた女は大木へ寄りかかるように座っている。
「性懲りもなくまた来たのかえ…」
宇髄は女の前に膝をつき様子を伺うが、以前のような畏怖を纏った雰囲気はなく、やはり衰弱しているようだ。
「何があったんだ」
「時が来ただけじゃ…力も衰えお主の呼びかけに応じるのが遅うなった…許せよ お主…それを未だ付けておるのじゃな とうに効力は消えておろうに」
「アンタが護りだとくれたんだろ、なら効力があろうがなかろうが俺にとっちゃこれは護りだ。それよりこの状態だ、どうにかならねえのかよ」
女が首を軽く横にふるとパラパラと顔に髪が流れる、宇髄は絹糸のようなそれをそっと掬い耳にかけてやる
「もう充分じゃ それに我は人ではない…消えたとてお主が気に病まずともよい存在じゃ それにの─こうなったのは我の自業自得じゃ」
「どう言うことだ」
「神とはな 元来その地を守るものじゃ その地に住まうものを分け隔てなく守る…それを破ればこうなるのは道理よ 我は淘汰され この地にはまた新しい神が降りるじゃろう」
平等を破った─その言葉で宇髄は悟る。鬼狩りに手を貸し、自分に護りを与えた事で起きた事態…その事実に思わず女の身体を抱き締めた+18
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13499. 匿名 2024/05/07(火) 01:48:09
>>13498
【神を自称する者よ】⑨
「お主のせいではない…我の我儘でやったことよ」
背に回された腕で背をぽんぽんと叩かれ身体を離すと宇髄はいつかとは逆に女の目を覗き込む
「言えよ、あるんだろ?あんたが消えなくて済む方法が」
「何を世迷言を…」
「わかんだよ。あんたはいつも飄々として感情が読めなかったが…今は分かる。なあ、言ってくれ…頼む……俺をこれ以上格好悪い男にしないでくれ…」
女の手が宇髄の頬を撫ぜる
「相分かった…聞いた上でお主がどのような判断をしても我は構わぬ 一瞬でも迷うたなら即森を去れ 良いな」
「わかった、それでいい」
「ならば”約束“をしようぞ…言わば神との契約じゃ 破ることは出来ぬ 我の話を聞いてお主が迷いを見せれば即刻森の外へ弾き出される ではお互いの真名を告げ契約を交わすぞ──我の真名はガルハナノミコト」
「俺は宇髄だ、宇髄天元」
「天元…良い名じゃの では天元 我が消えずに済む方法を教えようぞ─何簡単じゃ 我を人に堕とせばよい」
「神を人に…どうすりゃいい」
話して聞かせてやるから座れと言われ、宇髄は女を膝へ抱え直しその場に座った
「今 我の力が失せ始めたのは 人に肩入れをした罰じゃ…このまま我は消え 浄化され無辜の神として生まれ変わる 罰としてはまだ軽いほうじゃ じゃが神には犯してはならぬ禁忌があっての…それが人間と情を交わすこと…意味はわかるであろ 人と情を交わした神は人に堕とされ その人間の傍で人として一生を過ごす 但し─その人間が他の者と情を交わせば 神であったものは跡形もなく消え 無になり その人間もまた地獄へ落ちる 神を人に堕とすというのはそれだけ罪深い行為じゃ」+19
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