ガールズちゃんねる
  • 13323. 匿名 2024/05/06(月) 22:02:57 

    >>11874 真実の愛を探して 2/6
    ⚠解釈 美女と野獣パロ、獣化👹様(コメントありがとうございました)

    花びらの最初の1枚が枯れ落ちた。
    あれから1年足掻き続けていた私はこれに少々焦り、“真実の愛”とやらに向き合うことにした。が、そもそも愛とはなんだ?そんなものある訳なかろう。愚かな人間どもの妄言にすぎぬ。
    とはいえ、そんなことを言っていては話が進まない。
    愛が存在すると仮定して、私と女が互いに好意を持てば良いのだろう?簡単なことではないか。
    愛などただの思い込みだ。私の方は自己暗示の類でどうにでもなる(脳をいじればより確実だが、業腹なことに今は体内も操作が出来ない)し、女の方も少し褒めそやしておけば勝手にその気になる。腐っても平安貴族。女心をくすぐる言葉など考えずとも口から勝手に飛び出してくる。
    と、ここまで考えたところで、今の己の姿に思いあたった。元の姿であれば如何様にでもなろうが、こんな姿では…
    いや、諦めるな私。私は限りなく完璧に近い生物だ。打開策を考えるのだ。

    まずは現状把握だ。
    花びらは残り49枚。今日までの日数は入り口から見える月の満ち欠けで計算したから大体あっているだろう。つまり猶予は49年というところか。
    ちなみに花は彼岸花ではなかった。なんとも腹立たしい。

    次に洞窟内の環境としては、調度や食事(人間用の食事に限るが)は、欲しいと念じれば出てくる。
    皮肉なことに、これまでに住んだどの屋敷よりも快適に過ごせている。古今東西の書物もふんだんにあるので、飽きることもない。

    そして肝心な“真実の愛”の対象だが…
    この一年ここを訪れる者は、居なかった。
    どういうことだ?
    元々この洞窟には不老不死になる花が咲いているという伝説があった。だから誰かしら来るだろうと思っていたのだが。
    向上心の無い人間共め。もっと生き汚くなれ。ここに不老不死(仮)の花があるぞ。
    とにかく相手がいなければ何も始まらぬ。どうにかして人間を呼び込まなければ。
    ここの書物で読んだセイレーンとかいう妖かしのように、歌でも歌うか?

    ────────────────────

    あの日引きちぎった蔓が、入り口の上方を覆うほどに伸びた。
    そして花びらは残り43枚。

    初めて、人間が来た。

    その日、私は月見酒を楽しんでいた。
    獣の姿では人の食物を食うことができるため(酷い味ではあるが)、雰囲気を出すためにちびちび飲んでいたのだ。蔓のせいでもうすぐ空を拝めなくなるのだから、今のうちに楽しんでおきたいではないか。

    今日の月はいまいちだなと切り上げようとしたとき、一人の女が現れた。
    突然のことに、私は一瞬固まってしまった。
    しかしすぐに持ち直し、怯えさせないよう穏やかな声で話しかけた。
    ──────はずだったのだが。
    口から飛び出したのは威嚇しているような、嗄れた唸り声だった。
    その声に怯えた女は、洞窟に足を踏み入れる前に逃げてしまった。

    なんたる不覚。ずっと話していなかったため、声帯が衰えていたのだ。
    やっと来たチャンスを逃した怒りで、わたしはその日から暫く暴れ狂った。
    (一通り暴れた後は、発声練習を日課にした。私は失敗も糧にできる男だ)

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  • 13335. 匿名 2024/05/06(月) 22:10:36 

    >>13323 真実の愛を探して 3/6
    ⚠解釈 美女と野獣パロ、獣化👹様 

    蔓は入り口を覆い隠し、花びらは残り9枚。もう外からでは、洞窟があることさえ分からないだろう。
    蔓の隙間から光が見えるように、私は毎夜灯りを灯した。

    この作戦が功を成し、光に引き寄せられる蛾のごとく何人もの人間が訪れた。
    しかし、どいつもこいつも…愛を育むどころではなかった。いきなり切りかかってくるような好戦的な輩だとか、泣き叫んで話にならない奴らばかり。
    私はほとほとうんざりしていた。

    ──────────────────
    蔓が厚く茂り、花びらはとうとう残り1枚を残すのみとなった。

    これは…もう無理じゃないか…と弱気になっていたある嵐の晩のことだった。おぼつかない足取りで一人の男が現れ、洞窟に入ってくるなり卒倒した。遭難者のようだ。
    ……男。男か…男は正直守備範囲外だ。
    しかし、こいつが最後のチャンスかもしれない。私は葛藤しながら、男の看病をした。

    よっぽど消耗していたらしい。男は二日後にやっと目覚めた。
    私は頭の中で真実の愛、真実の愛と唱えながら優しく声をかけ…る間もなく、男は必死に命乞いをしてきた。曰く、自分が死んだら大切な娘が一人ぼっちになってしまう、何でもするから命だけは助けてほしい、と。

    その言葉に怒りがこみ上げる。誰がお前を助けたと思っているのだ。
    と同時に、この外見に対する絶望も。

    お前も─────絶望すればいい。
    それほどまでに娘が大切ならば。私は男に囁いた。
    「お前を助ける代わりに娘を寄こせ」


    数日後、娘がやってきた。本当に来るか半信半疑だったが、男に伝えた脅しがしっかりと効いたようだ。

    私の姿について父親から聞いているだろうから、娘をこれ以上怯えさせないよう姿を隠しておく。
    そう、好意を抱かせるために姿を見せる必要はないと気づいたのだ。平安の時分は和歌だけで駆け引きしたものだ。幸い声は元のままであるし、あの頃のように歌を贈るのも良いかもしれぬ。娘が寛げるよう、女性好みの部屋や食事も用意しておいた。
    完璧だ。

    希望が見えたことで久方ぶりに浮き立った気分は、娘の声を聞いた瞬間、少し沈んだ。
    その娘は、異国の言葉を話していた。

    そういえばあの男、河童のような妙な髪型だった。最近の流行は理解できんと翁のようなことを思っていたが、外つ国の者だったか。いやまて、父親は日本語を話していたのだ。娘も話せるのでは?

    恐る恐る話しかける。
    娘は「???」という顔をし、私には理解できない言葉を口にした。


    気分が、地表を突き抜け娘の母国に届くほど、沈下した。
    今日はもう何も考えたくない。私は娘を部屋に残したまま、自室に引き籠もった。

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