ガールズちゃんねる
  • 13299. 匿名 2024/05/06(月) 21:45:36 

    >>13291《ア・ポステリオリ》12
    ⚠️趣味全振り・何でも許せる方向け(※元カノの話してます)

    「身体に良くねぇのはわかってたんだけど…当時もうそういうのもどうでもよかったんだよな…。この匂い吸い込んだら彼女の気持ちわかったりしねぇかなって思ってたら、気付いたらやめられなくなっちまったんだけど。口寂しいっつーか、暇つぶしっつーか、もう特に意味もなく吸ってる感じ」
    「…なんかわかるよ。寂しくなっちゃうの」

    誰かの体温に触れて。
    誰かの匂いに包まれて。
    そうやって安心することを覚えた身体は、そう簡単に一人で傷を癒せるようにはならない。いつまでも、またその温もりを欲してしまう。

    「桜が好きだったんだよ、彼女。春になったら花見に行こうっていつも言っててさ…だから、その年も当たり前のように行くと思って連絡待ってたら、来たのがさっきの別れのセリフ。
    俺、春苦手なんだよな…桜が咲くから。あんま見たくねぇっつーか。まだ吹っ切れてねぇからそう思うんだろうけど…」

    そういえば、宇髄さんと初めて会った季節も春だった。初対面だったのに、ラーメンを食べたり海に行ったり一日中一緒にいたのは、きっと、何かを紛らわすためだったのかもしれない。

    「お前はどうしてんの?寂しくなった時は」
    「うーん…なんだろ。ゲームかなぁ」
    「ふーん。まぁ、時間潰すにはもってこいだな。時間が過ぎるの待つしかねぇよな、こういうの」
    「時間薬ってやつ?でも私は吹っ切れたというか、元彼思い出して寂しくなったりはもうないかな…」 

    何で吹っ切れたのか。
    何が、私に前を向かせたのか。

    私の傷を癒してくれたのは、いつも側にいてくれた宇髄さんだったのに。

    この時の私は、まだそのことに気が付いていなかった。

    ❀ ❀ ❀ ❀ ❀

    4月になった。
    桜前線は私たちがいる東京を通過して、私は二年生に進級し、宇髄さんは社会人になった。

    すっかり大学生活に慣れて土地勘も出てきた私は、憧れていたコーヒーチェーン店でバイトを始め、宇髄さんは新人研修だとか歓迎会だとかで、お互い忙しく過ごしていた。

    平日はそれぞれ頑張って、週末になると宇髄さんの家に集合して「一週間お疲れ様!」と乾杯する。

    「仕事、どんなことしてるの?」
    「今まだ研修中だから、色々。全部の部署回って、そっから配属が決まるらしい」
    「そっか。希望は出せたりするの?」
    「一応。通るかわかんねぇけど」

    元気がなかった宇髄さんは、桜の花びらが散って葉桜になっていくにつれ、少しずついつもの宇髄さんに戻っていった。

    つづく

    いつもコメントやプラポチありがとうございます。コメント投稿期限が出ましたね…(´・ω・`)トピ終了までに完結させたい💪💦

    +32

    -8

  • 13307. 匿名 2024/05/06(月) 21:53:17 

    >>13299
    ずっと読んでます!
    トピの期限出ましたけど最後まで見届けたいです✨

    +20

    -3

  • 13309. 匿名 2024/05/06(月) 21:53:34 

    >>13299
    タバコ吸う宇髄さんセクシーやろうな…🤤
    吸わないけどシガーキスしたい…
    失恋話は聞いてる方も胸が苦しくなりますよね…

    +22

    -5

  • 13515. 匿名 2024/05/07(火) 06:21:48 

    >>13299
    ホントに好きだったんだなぁ...その姿を見るガル子ちゃんも切ない(/ _ ; )
    でも側で寄り添っていたガル子ちゃんの存在は大きいと思うんだけどな...

    +20

    -5

  • 13887. 匿名 2024/05/07(火) 21:57:47 

    >>13299《ア・ポステリオリ》13
    ⚠️趣味全振り・何でも許せる方向け

    梅雨真っ盛り。連日の雨に嫌気がさしていた頃。
    企画課を希望していた宇髄さんは、結局営業課に配属になった。

    「まぁ、ぐだぐだ言ってたってしょうがねぇ。頑張るしかねぇか!」

    と明るく笑う姿を見て、ほっとする。

    「課長がちゃんとわかってくれててさ、俺が企画課希望して入社したって。でも、きっと営業の仕事も後々生きてくるからって、いい経験になるからって。営業の仕事終わったら、前企画課にいたからってそっちの話もめちゃくちゃ詳しく教えてくれんだよ」

    そんな宇髄さんの話を聞いたり。私も初めてのバイトでのわからないことや失敗談を話したり。話はつきなくて。

    お互いのことをたくさん話して。
    誰かの気配を感じながら眠りについて。

    そんな充実した毎日が、ただ楽しかった。

    一度二人して風邪を引いてしまってから、私たちはちゃんとベッドで眠るようになった。宇髄さんの家の広いベッドは二人並んで横になっても十分余裕があって、寝心地がいい。
    ベッドの左側が宇髄さんで、右側が私。
    なんとなく定位置が決まっていて、寝相のいい私たちは、真ん中の見えない境界線を越えることはない。

    朝起きたら、宇髄さんがワイシャツに腕を通しネクタイを締めて出勤準備をする横で、私も帰り支度をする。

    毎回歯ブラシや着替えなどの私物を全て持ち帰る私を見て、宇髄さんが呆れたように笑う。

    「どうせまた来るんだから置いとけば?」
    「やだ。宇髄さんが誰かを連れ込んだ時に、修羅場の原因になったら困る」
    「いやもうそんなことする元気も暇もねぇよ…」

    ソファも床も、せっせと粘着テープをコロコロと転がす。

    「髪の毛の一本も残さないから安心して!」
    「…お前変なとこ真面目だよな。長女って感じ」
    「あ、正解。妹と私の二人姉妹」
    「へー、妹いくつ?似てる?」
    「3つ下。顔は似てるけど、私と違って妹は派手な陽キャ」
    「マジ?会ってみたいわ」

    他愛無い会話をしながら朝食を済ませて、そして宇髄さんの出勤ついでにバイクの後ろに乗せて家まで送ってもらう。

    家までほんの一分に満たない短い時間だけれど、この時に宇髄さんの背中にくっついて感じる安心感で、毎日色々なことを頑張れて。

    夏も秋も冬もあっという間に過ぎて行った。

    つづく

    +29

    -6