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13283. 匿名 2024/05/06(月) 21:36:12
>>8843
ほれぐすり🔥⑦
⚠大正軸の煉獄さん ⚠解釈違いに注意
「いま、惚れ薬……と言ったのか?」
「はい。杏寿郎さんはその効果で、一時的に私を……その……好きになっているのです。」
「……まさか」
「本当です」
「この気持ちは薬のせいだというのか?そんなはずはあるまい」
炎柱は、私をギュッと抱きしめた。私は炎柱の腕から抜け出して言った。
「あの夜。私が包帯を巻いた夜に、炎柱は惚れ薬を飲んでしまっていたのです」
炎柱は目を大きく見開いて、その後じっと考えるように黙っていた。
私は一歩下がって、額をめいっぱい床につけた。
「身分をわきまえず、大変失礼なことをして申し訳ありませんでした。決して許して欲しいなどとは言いません。今後二度と炎柱様の前には現れませんので、私のことは……」
そう言いかけたところで、言葉が詰まる。
目の奥がジンジンとして涙が溢れると、鼻の下までつたっていく。唇が震えて声がうまく出せない。涙声で力を振り絞って言った。
「私のことは…忘れて……どうか日々ご無事でお過ごしください。炎柱様のご無運を祈っております。」
「むう。だが……俺は…!!」
そう言った炎柱の声を振り切り、私はその場から逃げるように走り去り、奥の部屋に閉じこもった。
その後、炎柱が部屋に追いかけて来ることはなかった。
****
それから私は、藤の家を出て、親戚の家に住まいを移した。名目は家事手伝いということで置いてもらった。
遠い山奥の村だ。実家の者たちには、炎柱にはこの場所を言わないようにお願いしてある。本当は藤の家で鬼殺隊を助けるという役目を果たしたかったが、どうしても炎柱と顔を合わせることができなかった。
炎柱から実家に何度も手紙が届いていたと聞いたが、私は読みに帰る事が出来なかった。読んだ所で、炎柱に申し訳が立つ訳では無い。それに……炎柱の気持ちが私から離れるという現実を見るのが怖かった。
季節は二つ進んで今は秋。もう、とっくに惚れ薬の効果は切れている。
でも、私は馬鹿みたいに、炎柱にかけてもらった甘い言葉や、触れられた時のぬくもり、そしてあの夜の燃えるような口づけを思い出している。炎柱は私を好きだと言ってくれた。あの瞬間、愛してくれていた。寝ても醒めても、その時の心が満たされていく気持ちを反芻しては、また絶望するということを繰り返していた。
炎柱は今、誰かをあんなふうに愛しているかもしれない。抱きしめているかもしれない。名前を呼んで、口づけをして…あぁ…。
宛のない苦しさは、つむじ風に舞う落ち葉と共に同じところをグルグルと巡る。
庭に雑然と散らばる落ち葉を、箒で掃いていると、柿の木に一羽の鴉が止まった。
「ヨウヤク見ツケタ。ガル子サン、オ久シブリデス。」
見覚えのあるその鴉は、私の目の前で漆黒の羽を広げてお辞儀をした。
つづく+27
-5
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13305. 匿名 2024/05/06(月) 21:51:58
>>13283
┣¨キ(*゚ ゚*)┣¨キ+19
-3
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13553. 匿名 2024/05/07(火) 09:03:53
>>13283
読んでます~。どうなるのかな…ドキドキ(・・?+15
-4
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13682. 匿名 2024/05/07(火) 16:03:22
>>13283
ほれぐすり🔥⑧
⚠大正軸の煉獄さん ⚠解釈違いに注意
私に「久シブリ」などと声を発する鴉を、私は一羽しか知らない。そう、今目の前に現れたのは炎柱の鎹鴉の要(かなめ)だった。
要は、焦った様子で私に言った。
「杏寿郎様ガ、ヒドク心ヲ患ッテイル。ガル子サン、ハヤクフミヲ読ンデクダサイ」
炎柱が、心を患っている…?
要の説明によると、理由は分からないが、私がいなくなってから炎柱の様子がおかしくなってしまったという。やはりあの怪しげな惚れ薬のせいで精神を乱してしまったのだ。とんでもないことをしてしまった。モブ恵さんは、あの薬を他の人にも使ってしまってはいないだろうか。
要も手紙の内容までは分からないらしく、とにかく私が読まないと、解決できそうもないと言う。
私は、炎柱の身が心配になり、手紙を読むため家に帰ることを決心した。
****
帰路の途中に、おつかいの風呂敷を持ったモブ恵さんと鉢合わせた。
「あっ!ガル子ちゃん!やっと会えたわ。急に家を出ちゃうんだもん」
「モブ恵さん、すいません。それよりも、あの惚れ薬、やっぱり危険なようなんです……!」
「あぁ、そのことなんだけどね、聞いてよ。あの惚れ薬ね、薬屋さんの嘘っぱちだったのよ。薬屋さん、私をからかってみたんだって。おかしいんだもん、モブ雄さんに飲ませたのにちっとも効かなくって。それで、薬屋さんに問い詰めたら、薬屋さん、前から私の事が気になってたみたいでね、私が誰に飲ませるのか知りたかったようで、それでね………」
モブ恵さんの話は途中から聞こえなくなって、頭の中で疑問と驚きが大渋滞を起こしていた。
どういうこと?惚れ薬は効果を示していたはずだ。確かに炎柱はあの夜、突如として私を好きになってくれた。
そしてあの日以降炎柱は、恋人かのように私に想いを向けてくれていた。
「ねぇ!聞いてる?!」とモブ恵さんがわたしの目の前で手をひらひらさせた。
「え!?──うん。」
「そうなると、おかしいのよね。どうして炎柱にだけは効いたのかしら…あの薬はただの滋養強壮の漢方薬なのよ。薬屋さんも、そんなはずは無いって。」
つまりそれは……どういうこと……?
混乱を抱えたまま、半年ぶりに実家の門をくぐる。
「ただいま帰りました。あ───…」
そこには、壁にもたれた炎柱が立っていた。
「……やっと会えた。あれから君の行方がわからなくなったので、どうすれば会えるか考えて、時間が空けばここに来て待っていたんだ。手紙を一通も読んでくれないとは、君は案外頑固なのだな」
炎柱は、少しやつれた顔をしていて、私を見て眉を下げて力なく微笑んだ。
次で最終話です(コメントありがとうございます✨)+27
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