ガールズちゃんねる
  • 12678. 匿名 2024/05/06(月) 08:04:01 

    >>12340⚠️解釈違い⚠️キメ学とパン屋が出てきますが竈門ベーカリー様とは無関係です⚠️何でも許せる方

    『サンドイッチに焦がれて』

    🥪⑼
    聞けば、簡単な案件だとして渡された仕事の中に、相手方が相当な曲者の案件があるらしい。これも勉強だと教育係の先輩と共に当たっているが、今日は電話口で酷く怒鳴りつけられ、職務中に泣いてしまったと。そのことが悔しくて、帰り道もまた泣けてきたのだと。

    「こんな顔で帰って両親に心配をかけたくなくて。だからといってお店はどこも混んでるし、少しここで落ち着いてから帰ろうと思ってたところで…。職場で泣くなんて失態、子供じゃないんだからと情けなくなります」
    「まあ、それはそうだな」
    「…グサッときます」
    「すまない。まだ入社して間もないのだから別に良いんじゃないかと言ったところで、君はそれを甘んじて受け入れるような質ではないと思った」
    「学校の先生ってすごいですね。仰る通りだなと思います、本当に情けない」

    つい先日までの、パン屋での学生アルバイトとしての働きぶりを見ていれば分かる。教職だからでは、決してない。
    人一倍責任感が強く、一生懸命。よく気が回り、周りが何を求めているかを常に理解している。そして少々無理をしても、それに応えようとする。

    それゆえに、自分を抑え込んでしまうところがあるのか。甘え下手な性格というのだろうか。
    現に、弱った姿をご両親に見せぬよう、一人この場所で過ごしていた。

    「家まで送って行く」
    「ありがとうございます。でも、話を聞いて頂いたのに、これ以上ご迷惑をお掛けするわけには」
    「こんな時間だ。女性を一人で歩かせるわけにはいかない」
    「一人といっても10分くらいの距離ですし!冨岡さんだって明日も朝早くからお仕事ですよね。早く休まれた方が」
    「言い方を変えよう。俺とここで話した帰り道に、君が万が一にも怖い目に遭ったりしたら、俺が後悔してもしきれない」

    我ながら狡いと思う。どのように言えば彼女が断らないかを分かっていて、言葉を選んだ。
    心配だったのは本当だ。ただ、もう少しだけ彼女と同じ時間を過ごしたかった。

    「……ではお言葉に甘えて、よろしくお願いします」


    続く(次が最終話です)

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  • 12680. 匿名 2024/05/06(月) 08:10:12 

    >>12678⚠️解釈違い⚠️キメ学とパン屋が出てきますが竈門ベーカリー様とは無関係です⚠️何でも許せる方

    『サンドイッチに焦がれて』

    🥪⑽(最終話)
    駅前から続く大通りを、冨岡さんと並んで歩く。
    駅から家がもっと遠かったら良いのにと、初めて思った。せめて、あの青信号が早く赤になればいいのに。
    さっきは「早く休まれた方が」なんて大人ぶったことを言ったつもりだったけど、本当は名残惜しくて、一秒でもこの時間が長く続いて欲しいと思った。

    「…パン」
    「はい?」
    「朝パンを買う時、ガル井さんがいないと調子が狂う」
    「ふふっ、そうなんですか。光栄です」
    「モブ川さんが高速でレジ対応をしてくれる」
    「目に浮かびますwモブ川さんは本当に仕事が早くて、周りをよく見ていらして、ずっと目標でした。皆に会いたいなぁ。パンも食べたい。最近お店が開いてる時間に帰れないから、なかなか」
    「なら今度の週末どうだ」
    「そうですね!って毎週そう思うんですけど、いざ休日になると一人で外に出ようと思えなくて。ズボラです」
    「そうじゃない、一緒にどうだという意味だ」
    「一緒に!?」
    「一緒にお店に行って、パンを買って、さっきの芝生広場で食べる。可愛がってくれた人達にも会える。どうだろうか」
    「嬉しい、嬉しいんですけど、貴重な休日を…良いんですか?お忙しいのに」
    「俺も、ガル井さんとゆっくり話がしたい」
    「それ、どういう…」
    「良ければ、連絡先を交換してもらえるか」


    そして訪れた週末。
    数ヶ月ぶりなのに既に懐かしさを感じるあのパン屋に、冨岡さんと一緒に入る。

    「ガル子ちゃん!」
    「モブ川さぁーん(涙)」
    「(王子と良い感じじゃない!もしかして?)」コソコソ
    「(違います!!私は違わないですけど!もー言わせないで下さい!!)」コソコソ
    「(良い報告待ってるよ♡)」
    製造の皆さんやサンド係の皆さんが、仕事の合間を縫って代わる代わる出て来て、激励の言葉をくれた。嬉しい、ありがたい。

    「良い店、良い仲間だな」
    冨岡さんが言う。
    「本当に。ここで働かなければ、今の私はありません」
    そう。これから何か始まりそうな予感がする、あなたとの出会いも────

    「そろそろ行くか」
    差し出された手を取り、歩き出す。
    もうすぐ、あなたと出会った夏がまたやってくる。


    終わり
    (長くお付き合いありがとうございました!)

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