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12618. 匿名 2024/05/05(日) 23:45:51
>>12607
「大盛りご飯と恋の炎」③
「ガル子ちゃん!」
終業後の廊下で前から駆け寄って来るのは高校時代に部活が一緒で、ウブヤシキ工業に来て偶然再会した1歳上のモブ美先輩だった。
「食堂の方にはお知らせ行ってなかったのかな?路線バスのルートで倒木があって運行見合わせ中なんだよ」
「そうなんですか?ちょっと席を離れていたから気付かなかったのかも」
どうやら、日中の突風のせいらしい。
「私ともう一人、先輩の車で送ってもらうんだけどガル子ちゃんも乗せてって頼んで来る!大きい車乗ってる人だから」
「いいんですか?何かすみません」
恐縮するけれど、実際の所とても助かる。
任せといてと駆け出して行ったモブ美先輩はすぐに戻って来た。その後ろには溶接班にこの春入ったばかりのモブ崎さんともう一人…
「モブ美ちゃんの後輩って言うのはガル山さんの事だったのか!」
(煉獄さんだ!…ってモブ美ちゃん呼び!?まさか、まさかね??)
「煉獄先輩、職場ではモブ田って呼んでください!お兄ちゃんも居ないから紛らわしくないでしょう?」
「とは言え君の兄をモブ田と長年呼んでいるからモブ田呼びは違和感が…」
「ガル子ちゃん、実は煉獄先輩とウチのお兄ちゃん高校の時からの友達なのよ。ちなみに2人も藤の花高校で」
私の予感は良い意味で外れたらしく、ちょっとホッとしたのと共に初めて知った事実に胸が高鳴る。
「ガル山さんはモブ美ちゃんの1歳下だと聞いたから、俺が卒業した春にガル山さんが入学…入れ違いだが先輩だったようだ」
地元で働いていると同じ学校の出身者に出会いやすいのはあるあるだ。特にウブヤシキ工業は工場ゆえに最寄り駅から車でも30分以上かかる立地なので、尚更地元民が多い上に8割は自家用車で通勤している。
私やモブ美先輩のように路線バスで通勤しているのは少数派なのだ。
続く+23
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13133. 匿名 2024/05/06(月) 20:18:04
>>12618
(コメント、プラポチありがとうございます!🙏)
「大盛りご飯と恋の炎」④
煉獄さんが車を正面玄関まで回して来てくれてモブ崎さんが助手席に、モブ美先輩と私は後部座席に乗り込む。大きい車とは聞いたけれど、なるほど。街中でもよく見かける人気のSUVだ。
「さて、出発しよう。ところでガル山さんの家はどの辺りだろうか?」
「壱ノ町です」
「なら、モブ崎が参ノ町、モブ美ちゃんが弍ノ町だからルート的に最後になってしまうがそれでも良いだろうか?」
「全然平気です!送って頂けるだけでありがたいですから。よろしくお願いします」
大きい通りを避けながら煉獄さんが車を走らせ、10分ほどでモブ崎さんの家に、そこから更に15分ほどでモブ美先輩の家へと到着した。
「先輩、ありがとうございました。後はガル子ちゃんの事よろしくお願いしますね」
「ああ。モブ田によろしく言っておいてくれるか」
「はい、週末にキャンプ行くんですよね?お兄ちゃんに聞きましたよ」
モブ美先輩が降りて、煉獄さんと二人きりになってしまった車内。自分は後部座席に居るとは言え、初めての状況…何か話した方がいいのか、黙っていようかと迷う私の様子を察したかのように煉獄さんが話し掛けてくれる。
「今日の昼食の焼き魚に付いていた猫の形の大根おろしは、ガル山さんのアイディアだったと聞いたが?」
「えっ、パートさんに聞きましたか?実は煉獄さんがヒントになったんです」
「俺が?」
「はい、お昼に食堂に来る時の煉獄さんってパッチリした目がキラキラしてて、前髪の感じも耳っぽく見えるし猫みたいだなって思ってて」
「ライオンのようだとは時々言われるが、猫と言われるとはな」
「何かこう、可愛いなぁって…すみません!」「ハハッ、構わない。俺がそんな風に見えているとは自分ではわからないから面白い」
煉獄さんが笑って、バックミラー越しに見える目が少し細くなる。その優しい表情に幾分緊張も解れた。
「そういえば、モブ美先輩のお兄さんとは仲良しなんですね」
「うむ、モブ田も含めて高校時代のクラスメイト達でよくつるんでいてな。そうだ、栄養士のガル山さんに折角だから聞いてみたい。キャンプでカレーをよく作るのだが、少し目先が変わって栄養も申し分ないような調理法はないだろうか?」
(どうしよう?キャンプだから簡単さ優先だよね…そうだ!)
「そうですね、玉ねぎとお肉だけでルーを作ってグリルで焼いた野菜を上にトッピングするのはどうでしょう?かぼちゃ、アスパラ、パプリカとか。野菜の栄養が逃げにくくて見た目も華やかになると思います」
「それはすぐに実践出来そうだ、ありがとう!」
そんな話をしているうちに家の前に着いていた。
「煉獄さん、本当にありがとうございました」
「俺の方こそガル山さんと話しながらで楽しい帰り道になった。ありがとう。俺はこの先の伍の町だからあと少しだ。ではまた明日!」
煉獄さんの車が見えなくなるまで見送り、ホッと一息つく。
話してる時の言葉一つ一つがとっても優しくて、煉獄さんの事が更に好きになっちゃったな…
続く+30
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