ガールズちゃんねる
  • 1248. 匿名 2024/04/13(土) 22:49:32 

    >>1239
    ⚠️ガル子も🌫も24歳の設定 ⚠️🐚出現有の長編です。

    🌫『10年のキセキ』③

    次の日、私達は思い出の場所へと向かった。
    ──今から9年前の中学3年生の4月。私達は学校の裏山にタイムカプセルをこっそりと埋めたのだった。ちょうど付き合って1年が経過した頃で、9年後の24歳になる年にあけてみよう、と約束をしたのだった。
    その頃読んだ恋愛小説の影響で、『記念日にどこかで待ち合わせをするのも素敵だよね』などと話したりもしたが、待ち合わせ場所がなくなってしまうことも大いに有り得たので、タイムカプセルを埋めることに落ち着いた。
    今にして思えば、そんな先のことまで予測しているなんて随分ませた子供達だったと思う。

    ──10年。それはとてつもなく長い年月に思える一方で、いざ迎えてみると、夜空を駆ける流れ星だとか、打ち上げられた花火のように儚い一瞬の光のようにも感じられる。不思議なものだ──。

    私達は久しぶりに母校の裏山を訪れた。
    やぶれたフェンスの網から野良猫のように身をかがめて中に入る。
    ──見つかったら叱られるかもしれない。でもやっぱりどうしても中身の確認がしたかった。

    「このへんだったっけ?」

    ふたりして緑深い森の中を進んでゆく。生い茂った葉っぱをかき分けて、とがった枝などに注意して進んだ。油断していると、地に張り巡らされた根っこに躓きそうになる。
    ちょっとした探検をしているみたいで、わくわくと高揚感が高まっていった──。
    すると、大きな池のあるひらけた場所に出くわした。池の水面には蓮の浮き葉がいくつか浮かんでいて、風が吹くとちらちらと揺れていた。木々の隙間から差し込んだ真っ白な光が水面に反射して、虹色に揺らめいていた。そこには、あるがままの自然だけで創造された幻想的で美しい光景が広がっていた。
    そばには大きなくすの木も聳え立っている。
    「このくすの木の下だよ。まだ目印残ってたんだ。中身も無事だと良いね」
    むいくんがそう言いながら、目印──かつてアイスの棒でつくった矢印みたいな形のもの──を引き抜いた。
    そして、青いショベルで柔らかな土を丁寧に掘り起こすと、錆びた真四角の赤いタータンチェック柄の缶(外国のショートブレッドが入っていたもの)が出てきた。
    中身をあけると、お互いにあてた手紙がちゃんと入っていた。
    はい、とむいくんから私への手紙を渡される。
    手紙は年季が入っていたが無事だった。古びた紙特有の香りが鼻腔をくすぐる。私は、桜色の封筒を大事に開封した。

    続く

    また更新します。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。

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  • 1251. 匿名 2024/04/13(土) 22:52:26 

    >>1248
    読んでます♡

    +21

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  • 1254. 匿名 2024/04/13(土) 22:53:16 

    >>1248
    わぁ、長編なのね!
    続き楽しみに待ってるよ🤗💕

    +17

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  • 1282. 匿名 2024/04/13(土) 23:20:41 

    >>1248
    中学生からの付き合いがなんだかリアルで、日常のシーンですらドキドキする。等身大のむいくんと一緒に住んだら、こんな感じかなって思う。続きも楽しみにしています

    +17

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  • 1815. 匿名 2024/04/14(日) 23:00:58 

    >>1248 続き
    ⚠️ガル子も🌫も24歳の設定 ⚠️🐚出現有の長編です。

    🌫『10年のキセキ』④

    『ガル子へ。

    この手紙を君が読んでいるということは、僕たちは仲良くやっている、ということだよね?
    10年後の僕とガル子は元気ですか?
    君は相変わらずなのかな?
    できるなら会って話したいことがたくさんあります。

    僕たちが初めて付き合った日のことを覚えていますか?
    ガル子は知らないと思うけど、僕は君と出逢った時からずっと君のことが好きだったから、付き合えたときはとても嬉しかった。
    君は僕にとって一番大切な人だよ。話していてこんなに楽しくて安らげる人は他にいないよ。
    これからもずっと仲良く、幸せに歳を重ねてもらえたら嬉しいです。

    無一郎より』

    読んでいて涙が溢れた。
    手紙の中には、14歳のむいくんがいた。──賢くて、落ち着いた佇まいの美しい少年だった。
    私は、初めて手を繋いだりキスした時のこと、初デートした日のこと、(これは少し先の話になるけれど)初めて肌を重ね合わせた時のこと…なんかを思い出していた。
    数え切れない初めてを経験させてくれたのは、他の誰でもないあなただった。
    あてもなく自転車の旅をしたこととか、こっそり家を抜け出して初日の出を見に行った日のことなんかも思い出していた。
    水族館、遊園地、動物園、美術館、展望台、科学館…etc。大概のカップルが行きそうな場所は全部行った。出掛ける場所に困ってしまうくらい、近場のデートスポットは制覇した。
    それと、放課後の児童公園や駅前のファストフード店には何度足を運んだかわからない(アイスクリーム屋は残念ながらもう潰れてしまったけれど、ハンバーガーショップとドーナツショップは今もまだそこにあるので、店の前を通る度に青春の想い出が蘇ってくる)。
    私達はそこで無限におしゃべりすることができた──。
    そして、別れる時は名残惜しくて何度も手を振った。明日またすぐに会えるのに、片時も離れたくなくて、家に帰っても長電話したりした。
    こんな私達だけど10年の間ずっと順風満帆だったわけではない──。大学は別だったし、魔が差して他の人によろめきそうになったこともあるし、いくつかの危機を迎えた。乗り越えられたのは、むいくんの精神が成熟していたからだったと思う。
    ──むいくんは彼氏である前に親友であり、私の青春そのもので、もはや人生の一部なのだった。

    続く

    コメントくださった方、読んでくださってる方ありがとうございます。連打になってすみませんが、続きをあげていきたいと思います。

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