ガールズちゃんねる
  • 12340. 匿名 2024/05/05(日) 17:44:02 

    >>12102⚠️解釈違い⚠️キメ学とパン屋が出てきますが竈門ベーカリー様とは無関係です⚠️何でも許せる方

    『サンドイッチに焦がれて』

    🥪⑻
    あのパン屋から彼女の姿が消えて2ヶ月と少し。俺は後悔していた。
    あの時、卒業祝いとして渡したボールペンに、自分の連絡先を添えておけば良かった。

    社会人になるということは、人生の大きな節目だ。自分も昨年の春は、プライベートなど考える余裕はなかった。右も左も分からず、新しい生活に順応するのにエネルギーを使う。
    これからその時を迎える彼女の状況を思えば、独りよがりに連絡先を渡すことは憚られた。
    近くに住んでいるというから、そのうちどこかで会えるだろうとも踏んでいた。

    中途半端な遠慮をした己が憎い。
    この2ヶ月で、人は会おうと思わなければ会えないことを知った。
    たとえ、同じ駅を利用し、同じ街を歩いていたとしても────


    それは、梅雨の始まりを思わせるじめじめした夜のことだった。
    駅前広場の隅に、俯く彼女を見つけた。その様子は、俺の知る溌剌とした彼女ではなかった。
    それでも。
    その姿を、見なかったことにして帰路につくことは出来なかった。

    「あの」
    「…!!冨岡さん…!」

    切磋に顔を背けた彼女の目は、つい先程まで泣いていたのが即座にわかるくらいに赤く腫れていた。

    「お恥ずかしい姿を…」
    「こちらこそ、考えなしに声をかけてすまなかった」
    「そんな、とんでもない。あの、先日は素敵なボールペンをありがとうございました。私何のお返しもしてなくて…ごめんなさい」
    「お返しなど求めていない。気に入ってくれたなら良かった」
    「宝物です。ううんお守りかな。大切に、いつも持ち歩いてます。」
    「そうか」

    久しぶりに会った彼女は、服装や化粧がそうさせるのだろうか、パン屋で働いていた頃よりも大人っぽく洗練された印象を受けた。
    おそらく今弱っているのだろう彼女を、俺は────綺麗だと思った。

    続く

    +31

    -6

  • 12342. 匿名 2024/05/05(日) 17:48:58 

    >>12340
    冨岡さん目線キターーーーッ
    出会えて良かったーーーーー

    +21

    -3

  • 12356. 匿名 2024/05/05(日) 17:58:02 

    >>12340
    義勇さん目線好き!キュンとする!!
    あぁ…会えてよかった!!

    +18

    -3

  • 12358. 匿名 2024/05/05(日) 18:16:36 

    >>12340
    出会えて良かった〜!

    +17

    -2

  • 12377. 匿名 2024/05/05(日) 18:50:29 

    >>12340
    冨岡さんが動き出したー(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)

    +18

    -3

  • 12678. 匿名 2024/05/06(月) 08:04:01 

    >>12340⚠️解釈違い⚠️キメ学とパン屋が出てきますが竈門ベーカリー様とは無関係です⚠️何でも許せる方

    『サンドイッチに焦がれて』

    🥪⑼
    聞けば、簡単な案件だとして渡された仕事の中に、相手方が相当な曲者の案件があるらしい。これも勉強だと教育係の先輩と共に当たっているが、今日は電話口で酷く怒鳴りつけられ、職務中に泣いてしまったと。そのことが悔しくて、帰り道もまた泣けてきたのだと。

    「こんな顔で帰って両親に心配をかけたくなくて。だからといってお店はどこも混んでるし、少しここで落ち着いてから帰ろうと思ってたところで…。職場で泣くなんて失態、子供じゃないんだからと情けなくなります」
    「まあ、それはそうだな」
    「…グサッときます」
    「すまない。まだ入社して間もないのだから別に良いんじゃないかと言ったところで、君はそれを甘んじて受け入れるような質ではないと思った」
    「学校の先生ってすごいですね。仰る通りだなと思います、本当に情けない」

    つい先日までの、パン屋での学生アルバイトとしての働きぶりを見ていれば分かる。教職だからでは、決してない。
    人一倍責任感が強く、一生懸命。よく気が回り、周りが何を求めているかを常に理解している。そして少々無理をしても、それに応えようとする。

    それゆえに、自分を抑え込んでしまうところがあるのか。甘え下手な性格というのだろうか。
    現に、弱った姿をご両親に見せぬよう、一人この場所で過ごしていた。

    「家まで送って行く」
    「ありがとうございます。でも、話を聞いて頂いたのに、これ以上ご迷惑をお掛けするわけには」
    「こんな時間だ。女性を一人で歩かせるわけにはいかない」
    「一人といっても10分くらいの距離ですし!冨岡さんだって明日も朝早くからお仕事ですよね。早く休まれた方が」
    「言い方を変えよう。俺とここで話した帰り道に、君が万が一にも怖い目に遭ったりしたら、俺が後悔してもしきれない」

    我ながら狡いと思う。どのように言えば彼女が断らないかを分かっていて、言葉を選んだ。
    心配だったのは本当だ。ただ、もう少しだけ彼女と同じ時間を過ごしたかった。

    「……ではお言葉に甘えて、よろしくお願いします」


    続く(次が最終話です)

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