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12102. 匿名 2024/05/05(日) 08:07:03
>>12101⚠️解釈違い⚠️キメ学とパン屋が出てきますが竈門ベーカリー様とは無関係です⚠️何でも許せる方
『サンドイッチに焦がれて』
🥪⑺
あっという間に3月が来た。
今月、私は大学を卒業して、このお店も退職する。トミオカさんには、一言ご挨拶しておきたい。でも、お別れを意味するそれは、なかなか言えなくて。今日こそは、今日こそはといつも思うのだけど…
ウィーン…
自動ドアが開く。来た!今日こそ言わなきゃ!
「これをお願いします」
「かしこまりました。あの、」
「現金です」
「じゃなくて、あ、じゃなくなくないんですけど、現金ですよね。あの、、私、今月いっぱいで」
「…………」
「ごめんなさい、関係ないですよね」
「…寂しくなるな」
「え?」
「就職先のことを聞いていたから、今年卒業するのだろうとは思っていたが。最終日はいつだ?」
「21日の木曜日です」
「そうか。また来る」
それからもトミオカさんは今までと変わらぬ様子で来店されて、来月も再来月もまだまだこんな日常が続くんじゃないかとすら思えた。
最終日は、そんなのは錯覚だと言わんばかりに淡々と訪れた。
「いらっしゃいませ」
ああ、今日で最後なんだ。寂しいなあ。でも、家はこの近くだし、時々お姿を見かけたりは出来るかも知れない。その時、私のことを覚えていてもらえたら嬉しいな。
「ガル井さん、これを」
「?」
「ささやかだが、卒業祝いだ」
「そんな!頂いて…いいんですか。ありがとうございます!大切にします!」
「卒業、おめでとう」
じゃあ元気で、と控え目に手を挙げて去っていく後ろ姿を、ツーンとなる鼻の奥に負けないように、涙なんか絶対にこぼすものかと見送った。
休憩の時間。トミオカさんから頂いた細長い包みに手を掛ける。
姿を現したのは、大人っぽいツヤツヤ輝くボールペンだった。Garuko.Gって刻印が入ってる。素敵。社会人って感じがする。
一緒に、小さなメモ紙が入っていた。
《いつからか、パンを買う時にあなたと会話することが楽しみになっていた。あなたからパンを買うと、一日を前向きな気持ちで過ごせた。ありがとう。
4月からは、達成感や喜びもあれば、難しいことや悔しいことも少なからずあると思う。周りを頼りながら、持ち前の真っ直ぐさで頑張って欲しい。応援している。冨岡》
うれしくて、寂しくて、淡い思い出に出来る自信がまだなくて。ぽたぽたと落ちる涙で、綺麗な文字が滲んでいく。
これは、私の一生の宝物。
続く+36
-10
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12104. 匿名 2024/05/05(日) 08:19:15
>>12102
胸がキュっと締め付けられる…。
冨岡さんの手紙、冨岡さんらしくて素敵です✨+25
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12111. 匿名 2024/05/05(日) 08:40:17
>>12102
こんな手紙とプレゼント貰ったらますます好きになってしまうじゃん!!ってゆーか連絡先とか!どこかに書いてないの???ヤキモキしながら続きを待ちます+19
-4
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12114. 匿名 2024/05/05(日) 08:46:54
>>12102
うわーん、私まで嬉しくて寂しくて涙が出てきたよー🥲
ガル子ちゃんどうする?冨岡さんが来る時間にパン屋さんにお客さんとしてくるか、思い切って学校行ってみちゃうとか⁈冨岡さんとまた会うためにどうしたらいいか、私も考えちゃうよー。+19
-4
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12119. 匿名 2024/05/05(日) 09:00:52
>>12102
今気がついて⑴から読んできました!
なんて良いお話…😢このパートでは胸が締め付けられる思いです。お手紙の内容も素敵で✨
続きもお待ちしております。
+21
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12330. 匿名 2024/05/05(日) 17:13:50
>>12102
もう会えなくなっちゃうと思ったら切なくなるよね…(T ^ T)続き楽しみにしてます!+16
-3
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12340. 匿名 2024/05/05(日) 17:44:02
>>12102⚠️解釈違い⚠️キメ学とパン屋が出てきますが竈門ベーカリー様とは無関係です⚠️何でも許せる方
『サンドイッチに焦がれて』
🥪⑻
あのパン屋から彼女の姿が消えて2ヶ月と少し。俺は後悔していた。
あの時、卒業祝いとして渡したボールペンに、自分の連絡先を添えておけば良かった。
社会人になるということは、人生の大きな節目だ。自分も昨年の春は、プライベートなど考える余裕はなかった。右も左も分からず、新しい生活に順応するのにエネルギーを使う。
これからその時を迎える彼女の状況を思えば、独りよがりに連絡先を渡すことは憚られた。
近くに住んでいるというから、そのうちどこかで会えるだろうとも踏んでいた。
中途半端な遠慮をした己が憎い。
この2ヶ月で、人は会おうと思わなければ会えないことを知った。
たとえ、同じ駅を利用し、同じ街を歩いていたとしても────
それは、梅雨の始まりを思わせるじめじめした夜のことだった。
駅前広場の隅に、俯く彼女を見つけた。その様子は、俺の知る溌剌とした彼女ではなかった。
それでも。
その姿を、見なかったことにして帰路につくことは出来なかった。
「あの」
「…!!冨岡さん…!」
切磋に顔を背けた彼女の目は、つい先程まで泣いていたのが即座にわかるくらいに赤く腫れていた。
「お恥ずかしい姿を…」
「こちらこそ、考えなしに声をかけてすまなかった」
「そんな、とんでもない。あの、先日は素敵なボールペンをありがとうございました。私何のお返しもしてなくて…ごめんなさい」
「お返しなど求めていない。気に入ってくれたなら良かった」
「宝物です。ううんお守りかな。大切に、いつも持ち歩いてます。」
「そうか」
久しぶりに会った彼女は、服装や化粧がそうさせるのだろうか、パン屋で働いていた頃よりも大人っぽく洗練された印象を受けた。
おそらく今弱っているのだろう彼女を、俺は────綺麗だと思った。
続く+31
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