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12101. 匿名 2024/05/05(日) 08:01:34
>>11604⚠️解釈違い⚠️キメ学とパン屋が出てきますが竈門ベーカリー様とは無関係です⚠️何でも許せる方
『サンドイッチに焦がれて』
🥪⑹
おはようございます。ふたたびのモブ川です。今日は私にお話させて下さいね。
一月往ぬる、二月逃げる、三月去る。
年が明けてしまえば、春まではあっという間です。
一月にガル子ちゃんは、王子微笑!あれはもはや絵画!と大興奮してたけど、私はトミオカさんの微笑みなんて一度も見たことがありません。
つまりそれは、ガル子ちゃんにだから見せる表情なんじゃない?と思うのです。
今は逃げる二月の真っ只中。つまり、ガル子ちゃんの卒業まであと少し。
最近、トミオカさんとガル子ちゃんは、お会計の時に必ず一言二言交わしているようです。
決して聞き耳を立ててるわけではないんですよ。私はトミオカさんのお会計の時に、うっかりレジに入らないようにしてるだけで。
彼は体育の先生で、ここの最寄駅から数駅のところで一人暮らしをしていて、剣道の心得があるみたい。
ガル子ちゃんはガル子ちゃんで、実家暮らしで家はこの近くだとか、大学では何を学んでるとか、就職先はどんな業界で…とか、お互いのことを随分話して、楽しげな様子です。
私に言わせれば、ガル子ちゃんがグイグイ話しかけてるというよりは、トミオカさんの方がガル子ちゃんに会いに来てる、ガル子ちゃんと言葉を交わすのを楽しみにしてるように見えるわね。
だって、そうじゃなきゃ彼はどうして月・火・木に来店するようになったんだと思います?
でもねガル子ちゃん。
肝心なことを伝えてないと思うの。就職の話をしてるから、言わずとも伝わってると思ってるのかしら。
ガル子ちゃん、あなたは来月でこのお店を…
そのことは、トミオカさんにはハッキリと伝えた方が良いと思うわ。
このお店が繋ぐ二人の時間は有限。見ている私は、とってもとっっても!!もどかしいのよ。だけど、若いって、儚くて素敵ね。
お付き合いありがとう。モブ川のひとりごとでした。それではまた。
続く+31
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12102. 匿名 2024/05/05(日) 08:07:03
>>12101⚠️解釈違い⚠️キメ学とパン屋が出てきますが竈門ベーカリー様とは無関係です⚠️何でも許せる方
『サンドイッチに焦がれて』
🥪⑺
あっという間に3月が来た。
今月、私は大学を卒業して、このお店も退職する。トミオカさんには、一言ご挨拶しておきたい。でも、お別れを意味するそれは、なかなか言えなくて。今日こそは、今日こそはといつも思うのだけど…
ウィーン…
自動ドアが開く。来た!今日こそ言わなきゃ!
「これをお願いします」
「かしこまりました。あの、」
「現金です」
「じゃなくて、あ、じゃなくなくないんですけど、現金ですよね。あの、、私、今月いっぱいで」
「…………」
「ごめんなさい、関係ないですよね」
「…寂しくなるな」
「え?」
「就職先のことを聞いていたから、今年卒業するのだろうとは思っていたが。最終日はいつだ?」
「21日の木曜日です」
「そうか。また来る」
それからもトミオカさんは今までと変わらぬ様子で来店されて、来月も再来月もまだまだこんな日常が続くんじゃないかとすら思えた。
最終日は、そんなのは錯覚だと言わんばかりに淡々と訪れた。
「いらっしゃいませ」
ああ、今日で最後なんだ。寂しいなあ。でも、家はこの近くだし、時々お姿を見かけたりは出来るかも知れない。その時、私のことを覚えていてもらえたら嬉しいな。
「ガル井さん、これを」
「?」
「ささやかだが、卒業祝いだ」
「そんな!頂いて…いいんですか。ありがとうございます!大切にします!」
「卒業、おめでとう」
じゃあ元気で、と控え目に手を挙げて去っていく後ろ姿を、ツーンとなる鼻の奥に負けないように、涙なんか絶対にこぼすものかと見送った。
休憩の時間。トミオカさんから頂いた細長い包みに手を掛ける。
姿を現したのは、大人っぽいツヤツヤ輝くボールペンだった。Garuko.Gって刻印が入ってる。素敵。社会人って感じがする。
一緒に、小さなメモ紙が入っていた。
《いつからか、パンを買う時にあなたと会話することが楽しみになっていた。あなたからパンを買うと、一日を前向きな気持ちで過ごせた。ありがとう。
4月からは、達成感や喜びもあれば、難しいことや悔しいことも少なからずあると思う。周りを頼りながら、持ち前の真っ直ぐさで頑張って欲しい。応援している。冨岡》
うれしくて、寂しくて、淡い思い出に出来る自信がまだなくて。ぽたぽたと落ちる涙で、綺麗な文字が滲んでいく。
これは、私の一生の宝物。
続く+36
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