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11874. 匿名 2024/05/04(土) 19:39:02
真実の愛を探して 1/6
⚠解釈 美女と野獣パロ、獣化👹様
⚠8で未完になっていた話です。8投下分も一部修正したので最初から載せます。完成版は先日別の場所に投稿したため、自作の転載となります。8ではまとめに入れておらずお礼が遅くなってしまいましたが、あの時コメントくださった皆さんありがとうございました。
私は美しい物が好きだ。
艶やかな絹織物。簾の隙間から見える蹴鞠に興じる若者達。御簾越しに差し込む日の光…
それに比べて。
寝たきりのためシワだらけの衣。艶のない髪に、骨ばった腕。薄暗い部屋で一人横たわる私は、なんと醜悪な姿だろう。
私は………私が嫌いだった。
久しく忘れていた人だった頃の記憶がふっと蘇ったのは、青い彼岸花を探すために入った洞窟の中だった。
洞窟の入口を隠すように生えていた蔓をひきちぎり数歩踏み込んだところで、かろうじてぶら下がっているしめ縄の向こう側に青い花が見えた。これは幸先が良いとほくそ笑みながら、私はとうの昔に役目を放棄したしめ縄を踏みつけた。
その瞬間。
突然、立っていられないほどの目眩を感じた。ぐわんぐわんと脳を揺さぶられるその感覚に、思い出したくもないあの頃───私が不完全な生き物だった頃───の記憶が蘇る。
「まずい…」
倒れると思った時にはもう、視界が暗転していた。
ぴちゃん… ぴちゃん…
どのくらい気を失っていたのだろう。頬に滴る不快な水滴で眠りから覚めた。
まだモヤのかかっている頭を振りながら、瞼をこじ開ける。
最初に見えたのは、青い花を握りしめた獣の手だった。猿でも迷い込んだか?私はその手から花を奪い取ろうと、腕を伸ばす。
ところがだ。
伸ばした腕には眼の前の手と同じく立派な毛が生えていた。
「どういういことだ?」
私は自分の腕をまざまざと見つめた。そして、手から肘、肘から肩へと視線を巡らせる。
毛むくじゃらの腕は、さらにふさふさな体に繋がっていた。
「まさか…」
私は自分の顔に触れた。毛むくじゃらの指が、硬い毛の中にズブズブと沈んでいく。
恐る恐る、側にあった水たまりを覗き込む。
醜い獣が、こちらを睨みつけていた。
私は獣の姿になっていた。
……あの頃よりもさらに醜悪な姿に。
頭の中に声が響く。
"その花が散るまでに真実の愛を見つけられれば、元の姿に戻れるだろう"
「…ふざけるなっ!」
いつものように姿を変えようとするが、変えられない。
洞窟から出れば戻るのではと入口に向かうも、しめ縄より外に踏み出せない。外が見えるだけに、なんとも口惜しい。
それならば洞窟ごと破壊してはどうかと暴れるが、傷一つつかない。
私は途方に暮れた。+21
-3
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11887. 匿名 2024/05/04(土) 20:09:20
>>11874
しめ縄踏んづけちゃったからかな…
続き待ってます!+17
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13323. 匿名 2024/05/06(月) 22:02:57
>>11874 真実の愛を探して 2/6
⚠解釈 美女と野獣パロ、獣化👹様(コメントありがとうございました)
花びらの最初の1枚が枯れ落ちた。
あれから1年足掻き続けていた私はこれに少々焦り、“真実の愛”とやらに向き合うことにした。が、そもそも愛とはなんだ?そんなものある訳なかろう。愚かな人間どもの妄言にすぎぬ。
とはいえ、そんなことを言っていては話が進まない。
愛が存在すると仮定して、私と女が互いに好意を持てば良いのだろう?簡単なことではないか。
愛などただの思い込みだ。私の方は自己暗示の類でどうにでもなる(脳をいじればより確実だが、業腹なことに今は体内も操作が出来ない)し、女の方も少し褒めそやしておけば勝手にその気になる。腐っても平安貴族。女心をくすぐる言葉など考えずとも口から勝手に飛び出してくる。
と、ここまで考えたところで、今の己の姿に思いあたった。元の姿であれば如何様にでもなろうが、こんな姿では…
いや、諦めるな私。私は限りなく完璧に近い生物だ。打開策を考えるのだ。
まずは現状把握だ。
花びらは残り49枚。今日までの日数は入り口から見える月の満ち欠けで計算したから大体あっているだろう。つまり猶予は49年というところか。
ちなみに花は彼岸花ではなかった。なんとも腹立たしい。
次に洞窟内の環境としては、調度や食事(人間用の食事に限るが)は、欲しいと念じれば出てくる。
皮肉なことに、これまでに住んだどの屋敷よりも快適に過ごせている。古今東西の書物もふんだんにあるので、飽きることもない。
そして肝心な“真実の愛”の対象だが…
この一年ここを訪れる者は、居なかった。
どういうことだ?
元々この洞窟には不老不死になる花が咲いているという伝説があった。だから誰かしら来るだろうと思っていたのだが。
向上心の無い人間共め。もっと生き汚くなれ。ここに不老不死(仮)の花があるぞ。
とにかく相手がいなければ何も始まらぬ。どうにかして人間を呼び込まなければ。
ここの書物で読んだセイレーンとかいう妖かしのように、歌でも歌うか?
────────────────────
あの日引きちぎった蔓が、入り口の上方を覆うほどに伸びた。
そして花びらは残り43枚。
初めて、人間が来た。
その日、私は月見酒を楽しんでいた。
獣の姿では人の食物を食うことができるため(酷い味ではあるが)、雰囲気を出すためにちびちび飲んでいたのだ。蔓のせいでもうすぐ空を拝めなくなるのだから、今のうちに楽しんでおきたいではないか。
今日の月はいまいちだなと切り上げようとしたとき、一人の女が現れた。
突然のことに、私は一瞬固まってしまった。
しかしすぐに持ち直し、怯えさせないよう穏やかな声で話しかけた。
──────はずだったのだが。
口から飛び出したのは威嚇しているような、嗄れた唸り声だった。
その声に怯えた女は、洞窟に足を踏み入れる前に逃げてしまった。
なんたる不覚。ずっと話していなかったため、声帯が衰えていたのだ。
やっと来たチャンスを逃した怒りで、わたしはその日から暫く暴れ狂った。
(一通り暴れた後は、発声練習を日課にした。私は失敗も糧にできる男だ)
+18
-4
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14773. 匿名 2024/05/09(木) 17:00:54
>>13462 まとめの場をありがとうございます。
👹様、🌙さん、☀さん推しです。
時間の都合でお返事出来ませんでしたが、コメントや+してくださったガル子さん、ありがとうございました。
(前回のまとめにコメントいただいたガル子さん達へ。トピが閉じた後で読ませていただきました。優しいお言葉ありがとうございました)
■👹様
・真実の愛を探して:>>11874
・交通安全当番:>>11777
・天邪鬼:>>12870
・悪いことをして慰めて欲しいなどムシが良すぎる:>>12653(「慰めて」を「褒めて」と読み間違えていました。お題主さん申し訳ありませんでした)
・ストーカーっぽい一言、大嫌い始まり:>>12311
・出られない部屋、背中合わせ、マザール・ウ・ブラッハ:>>12057
■🌙、👁、🕶さん
・クロスオーバー:>>12129
・ミャクミャク:>>11780
・ズートピア:>>11789
・他の女の子が輝いて見える:>>11827
・推しが照れる:>>12153
・サン・ジョルディ、上書き、トラウマ:>>12654
・既読スルー:>>12411
■☀さん
・沼、異世界、最後の一滴:>>11808
・花篝、あの話の続き:>>12213
・最後の🐚、残花、文学:>>11937(🐚)
・あくまでも提案、残りの寿命を買わせてよ:>>12480
・後火:>>12236
・AIにまかせてみる(おにぎり):>>12749(そこそこ気になる修正漏れを見つけたため削除依頼しました。コメントくださった方申し訳ありません)
■他
・個人的彼トピあるある:>>12062
今回は大遅刻でした。
先週の土日しかまとまった時間がとれず、実質2日間の参加となりました。素敵なお題がいっぱいで、イメージは浮かぶのに文字起こしが間に合わなかったものも。指が足りない…と何度思ったことか。トピ待ち中のお楽しみが出来たとプラスに捉えることにします。
>>11775にも書きましたが、他の方の話を全然読めてないので、ネタ被りしてたらごめんなさい。
4からの参加でいつもは早い段階で気づいていたので、残り1週間と知った時はちょっと落ち込んだんですけど、リアルとのバランス面においては今回のような短期集中が良いかもしれない。
次回も皆さんにお会いできることを楽しみにしています。+48
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