ガールズちゃんねる
  • 11376. 匿名 2024/05/03(金) 21:47:49 

    >>11368 『パリ・マジック』 第25話 ⚠️解釈違い🐍/🐚かも?な感じの表現あり/己の趣味に全振り/何でも許せる方向け

    「今から行って、入れる所ってあるのだろうか?」
    私のお手製パリガイドを見ながら、小芭内くんが私に問う。
    「観光地はほとんど夕方に閉まるから、凱旋門とエッフェル塔くらいしかもう入れないと思う。あとは今日が夜間開館日のオルセーかな」
    「だよなぁ」
    彼が口元に指を添えて、難しい顔をしながら眉毛を下げた。
    「この時間は大体みんな夜ごはんだから」
    「ならば何か食べに行こう」
    「お腹すいてる?」
    「それなりに。たくさん歩いたから」 
    「私もお腹すいた。何食べたい?」
    「できればパリらしいものを。せっかくだから、君のこのガイドに載っている店がいいのだが」
    「じゃあ───ここ。オススメのビストロ。マジックアワー見ながら行こう?」
    「あぁ」
    コンコルド広場に着くと、まさにマジックアワーと呼ぶに相応しい、色濃い夕焼け空が広がっていた。オレンジからピンク、そしてパープルからブルーへのグラデーションを描くそれと同じ色に染まったセーヌ川の向こうでは、エッフェル塔がシャンパンフラッシュの真っ最中だ。
    「本当に綺麗な街だな」
    「うん、魔法にかかったみたいだよね」
    「あぁ…そうだな」
    広場からパリの街を見渡しながら感嘆のため息を漏らす彼と鏑丸の瞳までもが、頭上の空と同じ色に染まる。写真を撮っているうちに、そういえば二人の綺麗な瞳の“どアップ“は撮っていなかったなと思い、超至近距離でシャッターを切った。
    「───近すぎ」
    レンズ越しに綺麗なジト目にじろりと睨まれ、思わず笑う。
    「ごめん。でも物凄く綺麗なんだもん。バイカラーの宝石みたいな眼になってる」
    「君の瞳もだが?」
    「え?嘘?」
    冷んやりとした小芭内くんの指が、私の目元にそっと触れる。突然顔に触れられ頭が真っ白になった私は、息をするのも忘れて彼の綺麗な瞳に取り憑かれたように吸い寄せられた。
    「すごく綺麗だ」
    彼の細い指が、私の睫毛をなぞるように目元を撫でる。背筋にぞくりと何かが走り、一瞬身体が痺れるような感覚に陥った。目元に触れていた彼の指がついと滑り、うなじに添えられる。思わず目を瞑って身体を硬くした。彼の薄い唇が、私のおでこに優しく口付けする。え?と思って目を開けると、この上なく優しく笑う綺麗な瞳が私を見ていた。
    「ここは、まだしない」
    彼の骨ばった人さし指が、ぷにっと私の唇に押し当てられる。
    「───まだ?…まだって……え?」
    悪戯っぽく小芭内くんが笑い、私の頭をくしゃっと撫でた。
    「まだ、はまだ。いずれって意味」
    暫くぽーっとして、それから火を噴きそうな程に身体が一気に熱くなる。火照った私の手を取り、また歩き出した小芭内くんの後について歩きながら問いかけた。
    「ねぇ───いずれって、いつ?」
    「内緒」
    尚も楽しそうに笑ってこちらをちらりと振り返った彼の頬も耳も、少し赤くなっているように見えたのはマジックアワーに染まっていたせいだろうか。
    「ねぇ、教えてよ」
    「まだ言わない」
    「ねぇ、今聞きたい」
    繋いでいた手を前後にぶんぶん振っていたら、小芭内くんがその手をぐいと引き寄せた。私の身体が彼にぐっと寄りかかる。見上げると優しく微笑む彼の顔がすぐそばにあって、今しがたの彼の言葉も相まりもう嬉しくて堪らなくなった私は、ブーケを持った手で彼にぎゅっと抱きついた。一瞬驚いた顔をした彼が、くすりと笑って私を優しく包み込む。切り揃えられた髪が私の額に降り注いだ。彼の首元に頬をうずめて、胸いっぱいに息を吸い込んだ。
    「近いと言ってるのだがな…」私の髪に頬を擦り寄せた小芭内くんが、小さくため息をつく。
    「だって、『いずれ』がいつになるかなんて分からないじゃない。一生無いかもしれないし」尚もぎゅっと彼にしがみついた。
    「────これ以上近付くと危ないから言ったのに」私の背中をきゅっと抱いて、彼がぽつりと呟いた。

    (つづく)

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  • 11385. 匿名 2024/05/03(金) 21:51:23 

    >>11376 『パリ・マジック』 最終話(第26話) ⚠️解釈違い🐍/長くなりましてごめんなさい/己の趣味に全振り/何でも許せる方向け

    ため息をつく小芭内くんの腕の中で、問いかける。
    「危ないって、何が?」
    「本当にもう───何にでも真っ直ぐなのは君の良いところだが、それが却って心配でもあってな……留学期間は1年半だよな?」
    「え?うん」
    「君を縛りたくはないが、流石に1年半もの間、ただじっと待つのは不安でな。すまないが約束させてくれないか?」強い光を宿した彼の綺麗な双眸が、射抜くように私の目を覗き込む。
    「約束って……」
    「君の帰国を待っている。君が日本に帰ったら、絶対にまた会おう」
    小芭内くんが言っていることの意味は分かったけど本当なのかが分からなくて、にわかには信じられない私はただただ目をぱちくりさせた。
    「白いリコリスの花言葉───」
    「……え?花言葉?」
    「そう。このリコリスの花言葉は、『また会う日を楽しみに』だ」指先で白い花をそっと撫でて彼が言った。
    「帰国したらまた会おう───約束だ」彼の唇がもう一度その言葉を紡ぐ。
    「ほんとに、約束してくれるの?」
    柔らかな笑みを湛えた異色の双眸が尚一層細くなり、こくりと頷いた。
    「それから、白いバラの花言葉だが───バラは何本ある?」
    「え?えっと………え、めっちゃあるんだけど…20本くらい?」
    「24本だ。24本の白いバラの意味は、『いつもあなたを想っています』」
    「……………いつも…」
    「あともう一つ」「まだあるの?」
    「あぁ。白いリコリスにはもう一つ意味があってな」
    彼の綺麗な瞳から目が逸らせなくて、取り憑かれたように見つめる私に、彼が優しくそっと囁いた。
    「───『想うはあなたひとり』」
    言葉が出なくてぽかんとしている私に、若干不安気に眉を顰めた小芭内くんが問いかける。
    「……詰め込み過ぎたか?」
    ぶんぶんと首を横に何度も振る。冷んやりとした掌が私の頬を包んで撫でた。
    「毎日は難しいかもしれないが、出来るだけこまめに連絡する。ガル子も無理のない程度に返してくれると嬉しい」
    「うん!」
    彼に抱きつき喜ぶ私のほっぺたに、彼のほっぺたがぎゅっと押し付けられる。
    「勉強で忙しいだろうが、たまに近況を教えて。待ってるから」
    「うん!絶対する!毎日する!」
    彼の腕の中で何度も頷いた。
    「君がもし、パリで他の男に惹かれたとしてm…」小芭内くんの唇に、人差し指を押し当てて黙らせた。
    「大丈夫だよ」
    彼が綺麗な目をぱちくりさせる。
    「そんな余裕ないから」
    「あぁ、きっと忙しいよな」
    「そうじゃなくて」
    くすりと笑う私を、不思議そうな顔をした彼が覗き込む。
    「小芭内くん以外の人が入り込んでくる余裕なんて最初っから無い。だから大丈夫だよ」
    左右で色の違う瞳が大きく見開かれ、それから満面の笑みになる。
    「私が想う人も小芭内くんだけだよ。1年半後も私と同じ気持ちでいてくれるなら、また会って?帰国したら真っ先に会いに行くから」
    「あぁ、待ってる。約束だ」
    私の背中にまわした腕に力がこもる。彼の腕の中でもう一度胸いっぱいに息を吸い込んだ。
    いつしか街には暗い影が落ち、頭上にはブルーアワーへとシフトした紺碧の空が広がっている。こちらに差し出された彼の腕に、そっと腕をまわして寄り添った。見つめる先の左右で色の違う綺麗な瞳が、嬉しそうにまた微笑んだ。

    (おわり)
    今夜も連投失礼しました。最後までお読みくださった方々、ありがとうございました。自分の大好きを詰め込んだ趣味全開のこんな長文に、プラスやコメントをいただけて物凄く嬉しかったです。いただいたコメント、毎回何度も読み返しました。いつもまとめてお礼形式にしてしまいすみません。お付き合いくださり本当にありがとうございました。

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