ガールズちゃんねる
  • 11368. 匿名 2024/05/03(金) 21:43:19 

    >>9696 リアル鬼滅メンズと一日デート企画 『パリ・マジック』 第24話 ⚠️解釈違い🐍/今夜完結/己の趣味に全振り/何でも許せる方向け

    頭上に広がるパリの夕焼け空を仰ぎ見た。
    「マジックアワーだよ。私、この時間帯の空が一番好きかも」
    「綺麗だな、本当に…日本で見るマジックアワーと、どこか違って感じる。街並みが違うせいだけでは無いと思うのだが、気のせいだろうか」
    「パリの方が空気が乾燥してるし、緯度が高いから光の角度も違うしで見え方が違うのかも」
    「成程な。なぁ、少し歩かないか?地上からもこの景色を見てみたい」
    「そうだね。そろそろ降りよっか」
    凱旋門の展望台から地上に戻り、先程通った地下道を抜けて、シャンゼリゼ通りの歩道に出る。脇道にあるお花屋さんのディスプレイに目を留めた小芭内くんが、お花を買いたいと言ったのでお店に入った。
    店内を見ながらちょっと待っててと言った彼が、フローリストに身振り手振りと片言の英語で何やら伝え始めた。彼の用事を待つ間、フランスアンティーク調の落ち着いた店内ディスプレイを静かに堪能する。数分経って戻ってきた彼の手には、白いバラのブーケが握られていた。よく見ると、バラに混ざって白いリコリスも入っている。
    「この時期にもリコリスがあるんだな。今は手に入らない季節だと思っていたから驚いた」
    「珍しいね。改良品種かな。それか温室とかで年中作れるようになってるのかもね」
    「そうだな───はい」
    少し身を屈めてこちらに上目遣いを向ける彼が、白いブーケを差し出した。
    「今日のお礼。急いで日本を発ったから、何も用意して来ていなくてな…急拵えで申し訳ないのだが」
    下がり眉の優しい笑顔が、少し首を傾げて私に言った。
    (───本当にいいの?こんなことまでしてもらっちゃって……)
    胸がいっぱいになってしまって、咄嗟に言葉が出てこない。嬉しすぎて、鼻の奥がつんとする。またしても泣き出しそうになるのを気合いでなんとか堪えて、白いブーケを受け取った。
    「ありがとう…私、何も用意してないのに…」
    「そんなことないだろう。今日一日、俺たちをたくさん楽しませてくれたし、写真もたくさん撮ってくれた。パリ案内のコレも貰ったし」
    スウェットのポケットの上から、中に入っているあの封筒を彼が撫でる。
    「昨日から準備しておいてくれたのだろう?俺の行きたい所を今日一日で全部まわれるようにプランを練って、チケットを取って。この後のためにガイドも書いて。君の気遣い全部が俺にとって贈り物だし宝物だ」
    堪えていた私の涙が、ここでついに決壊した。
    「君は今日、俺にたくさんの夢を見させてくれた。今度は俺が君に夢を見せる番」
    涙で前がよく見えない私の手を引いて、小芭内くんがシャンゼリゼ通りを進んで行く。貰ったブーケを胸の前で大切に抱いた。
    「どこ行くの?…道、分かる?」
    「よく分かってない」
    「じゃあ、だめじゃん」
    二人で声を出して笑い合った。
    「だめでもいい。君とこうして気が向くままに歩きたい。それに、道を探しながら行くのも良くないか?もし間違っていたって、気付いた時に直せば良い」
    「直すの私だよね」
    泣きながらまたしても吹き出した。
    「そう、よろしく」
    「やだって言ったら?」
    目元を拭って鼻を啜った。
    「三人で迷おう。行ける所まで行けば、きっと何か見つかるから」
    「ふふっ、楽しそう」
    「だろう?」
    左右で色の違う綺麗な瞳が、私を見て愉快そうに笑う。言葉にならないくらいに嬉しくて堪らなくて、また涙が溢れてくる。ポケットから出したハンカチで、小芭内くんが私の涙を拭い、頭をぽんぽんと撫でてから、私の手を引いて言った。
    「行こう」「うん」
    空が更に赤味を増してゆく中、手を繋いでシャンゼリゼ通りをコンコルド広場方面へと歩く。
    「やっぱり、パリ・マジックだ」
    「奇跡が起きたか?」
    「うん。信じられないくらいの、夢みたいな幸せが降って来た」
    「俺もだ」
    小芭内くんがおでことおでこをこつんと合わせてきたのでまた笑った。頭上には刻一刻と色味を変えるマジックアワーのパリの空。どこに向かっているのか誰も分かっていないくせに、不思議と微塵も不安の無い、幸せなショー・タイムの始まりだった。

    (つづく)

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  • 11376. 匿名 2024/05/03(金) 21:47:49 

    >>11368 『パリ・マジック』 第25話 ⚠️解釈違い🐍/🐚かも?な感じの表現あり/己の趣味に全振り/何でも許せる方向け

    「今から行って、入れる所ってあるのだろうか?」
    私のお手製パリガイドを見ながら、小芭内くんが私に問う。
    「観光地はほとんど夕方に閉まるから、凱旋門とエッフェル塔くらいしかもう入れないと思う。あとは今日が夜間開館日のオルセーかな」
    「だよなぁ」
    彼が口元に指を添えて、難しい顔をしながら眉毛を下げた。
    「この時間は大体みんな夜ごはんだから」
    「ならば何か食べに行こう」
    「お腹すいてる?」
    「それなりに。たくさん歩いたから」 
    「私もお腹すいた。何食べたい?」
    「できればパリらしいものを。せっかくだから、君のこのガイドに載っている店がいいのだが」
    「じゃあ───ここ。オススメのビストロ。マジックアワー見ながら行こう?」
    「あぁ」
    コンコルド広場に着くと、まさにマジックアワーと呼ぶに相応しい、色濃い夕焼け空が広がっていた。オレンジからピンク、そしてパープルからブルーへのグラデーションを描くそれと同じ色に染まったセーヌ川の向こうでは、エッフェル塔がシャンパンフラッシュの真っ最中だ。
    「本当に綺麗な街だな」
    「うん、魔法にかかったみたいだよね」
    「あぁ…そうだな」
    広場からパリの街を見渡しながら感嘆のため息を漏らす彼と鏑丸の瞳までもが、頭上の空と同じ色に染まる。写真を撮っているうちに、そういえば二人の綺麗な瞳の“どアップ“は撮っていなかったなと思い、超至近距離でシャッターを切った。
    「───近すぎ」
    レンズ越しに綺麗なジト目にじろりと睨まれ、思わず笑う。
    「ごめん。でも物凄く綺麗なんだもん。バイカラーの宝石みたいな眼になってる」
    「君の瞳もだが?」
    「え?嘘?」
    冷んやりとした小芭内くんの指が、私の目元にそっと触れる。突然顔に触れられ頭が真っ白になった私は、息をするのも忘れて彼の綺麗な瞳に取り憑かれたように吸い寄せられた。
    「すごく綺麗だ」
    彼の細い指が、私の睫毛をなぞるように目元を撫でる。背筋にぞくりと何かが走り、一瞬身体が痺れるような感覚に陥った。目元に触れていた彼の指がついと滑り、うなじに添えられる。思わず目を瞑って身体を硬くした。彼の薄い唇が、私のおでこに優しく口付けする。え?と思って目を開けると、この上なく優しく笑う綺麗な瞳が私を見ていた。
    「ここは、まだしない」
    彼の骨ばった人さし指が、ぷにっと私の唇に押し当てられる。
    「───まだ?…まだって……え?」
    悪戯っぽく小芭内くんが笑い、私の頭をくしゃっと撫でた。
    「まだ、はまだ。いずれって意味」
    暫くぽーっとして、それから火を噴きそうな程に身体が一気に熱くなる。火照った私の手を取り、また歩き出した小芭内くんの後について歩きながら問いかけた。
    「ねぇ───いずれって、いつ?」
    「内緒」
    尚も楽しそうに笑ってこちらをちらりと振り返った彼の頬も耳も、少し赤くなっているように見えたのはマジックアワーに染まっていたせいだろうか。
    「ねぇ、教えてよ」
    「まだ言わない」
    「ねぇ、今聞きたい」
    繋いでいた手を前後にぶんぶん振っていたら、小芭内くんがその手をぐいと引き寄せた。私の身体が彼にぐっと寄りかかる。見上げると優しく微笑む彼の顔がすぐそばにあって、今しがたの彼の言葉も相まりもう嬉しくて堪らなくなった私は、ブーケを持った手で彼にぎゅっと抱きついた。一瞬驚いた顔をした彼が、くすりと笑って私を優しく包み込む。切り揃えられた髪が私の額に降り注いだ。彼の首元に頬をうずめて、胸いっぱいに息を吸い込んだ。
    「近いと言ってるのだがな…」私の髪に頬を擦り寄せた小芭内くんが、小さくため息をつく。
    「だって、『いずれ』がいつになるかなんて分からないじゃない。一生無いかもしれないし」尚もぎゅっと彼にしがみついた。
    「────これ以上近付くと危ないから言ったのに」私の背中をきゅっと抱いて、彼がぽつりと呟いた。

    (つづく)

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