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11044. 匿名 2024/05/03(金) 07:36:39
>>11042
歌お題🍃③(全3話)
⚠痣の寿命
大きな戦いが終わった。
もう腰に携える刀は無い。「殺」の羽織はボロボロに傷み、もう纏う事も無い。
指先が欠けた手で、守れきれなかった幾多の命を想う日々。だからこそ、今も隣にある生命を、心から愛しく想う。
「今年も綺麗に色づいたね」
茜色に染まる峠道。サネカズラが赤く艶やかな実を湛える様は、どこか誇らしげで、尊い。
「来年も一緒に見ようね」
酷使したこの身体には、次の秋はやって来ないかもしれない。人差し指と中指の欠けた右手で、小指の欠けた小さな左手を握る。お互い残された指を絡め、温もりを移し合う。
「あァ、また一緒に見よう」
「明日はどうする?」
「鹿の子でも食うかァ」
「そうだね」
約束に口付けを添えて、胸に刻む。
例え今日、世界が終わるとしても、明日の予定を立てよう。絡めた指の先に、共にある未来があるならば。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
重い瞼をこじ開けると、見慣れた天井が見えた。老舗の和菓子屋の事務室で、長椅子に横たわっていた。身に纏うのは鉄色の作務衣と前掛け。指は10本揃っている。
(…夢か?)
起き上がり、店に戻る。ショーケースに並ぶ小倉鹿の子が真っ先に目に止まった。
「…あしひきの 山さな葛 もみつまで 妹に逢はずや 我が恋ひ居らむ…」
長い間知らなかったはずの最後の言葉が、流れるように唇から零れた。
懐かしく恋しい声が脳裏で目を覚ます。
(…約束の時だ)
その時、ガラッと店の戸が開いた。
見ると、若い女が息を切らして、頬を上気させて立っていた。そしてその大きな瞳は、一瞬一際大きく見開かれた後、見る間に潤んでいった。
女の唇がゆっくり開く。
「─────あなたに会いたくて、生まれて来たんだよ」
終わり
【Mrs. GREEN APPLE/Soranji】
+29
-7
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11047. 匿名 2024/05/03(金) 07:44:25
>>11044
ああぁぁぁーーー大好きな曲!!冒頭で必ず推しを思い浮かべる!!
ふたりがまためぐり逢えてよかった😭朝から心にしみるすてきなお話をありがとうございます✨+19
-4
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11049. 匿名 2024/05/03(金) 07:50:57
>>11044
素敵なお話と曲が2人の指のように絡み合って…とても好きなお話です ありがとうございました。+21
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11057. 匿名 2024/05/03(金) 08:28:26
>>11044
あぁ、泣いてしまった🥲
歌も好きなんだけど、最後の締めのセリフ、歌詞が、やっぱり心にくるよね。
ありがとうございます✨+21
-5
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11144. 匿名 2024/05/03(金) 12:15:46
>>11044
読ませてくれてありがとう😢✨+17
-4
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11229. 匿名 2024/05/03(金) 16:27:45
>>11044
曲もだけど和歌の歌、最中に鹿の子、実葛の実と、どれもが浮き上がる感じに心に染みるお話でした
素敵なお話をありがとう+24
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