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10397. 匿名 2024/05/01(水) 22:31:46
>>10387《ア・ポステリオリ》4
⚠️趣味全振り・何でも許せる方向け
「あれ?車かと思った…」
「悪かったな…期待外れで」
「いえ、違うんです。初めてだから、バイクに乗るの」
ちゃんと乗れるだろうかと不安に思いながらも、受け取ったヘルメットを被り顎の下のベルトを留める。さっさと先にバイクに跨った彼に、早く後ろに乗れと促され恐る恐る大きな車体によじ登った。
「足、そこに置いて」
「ここ…?」
「そー。行くぞ。家まで道案内頼む」
前を向いてエンジンをかけた彼が、こちらを振り向く。
「お前落っこちそうだなぁ…もちっとこっち来て。で、手ぇこっちな」
前に詰めて腕は彼のお腹に回すように言われ、言われた通りにすると彼の背中に私の身体が密着する形になった。なるほど、この方が安心だ。
「ちゃんと掴まっとけ。マジで落っこちんなよ」
大きなエンジン音を立て発進したバイクは、音に似合わずそっと走り出した。振り落とされるような動きではなかったけれど、初めて感じる直接頬を掠める風の勢いに少し驚いて、お腹に回した腕にぎゅっと力を込めてしまう。
「あー!家そこです!!」
「おい!耳元でそんな大声出すな!聞こえてるっつーの!ってか、近っ!」
おそらく徒歩三分程の距離は、バイクだとあっという間だった。
「近いって言ったじゃないですかっ!!!」
「だからうるせーっつってんだろうが!声のボリューム落とせ!」
「エンジンの音が!すごいから!」
「聞こえてるっつってんだろ!」
二人で大きな声で騒いでいると、彼は私が指差すマンションを素通りした。
「あーーー!家通り過ぎた!」
「あーーー!うるせぇ!俺、この先のコンビニに用あるからついでに付き合え!」
「何のついでですか!!」
「はぁ!?ついでとか何もねぇよ!お礼に飯買ってやろうとしてんだから、空気読んで大人しく着いて来い!」
私に釣られているのか、彼まで声が大きくなっている。
「あ、コンビニあっち…あー!通り過ぎましたけど!」
「っだーーーー!お前がうるせぇから車線間違って入れなかったじゃねぇか!」
家もコンビニもどんどん遠ざかっていく。太陽の下で風を感じながらこんなに大きな声を出すのは、いつぶりだろう。この爽快感何かに似ていると考えていたら、元彼と乗ったジェットコースターを思い出してしまった。
こんなことを思い出すのは、今朝嫌な夢を見たせいだと一人で悶々としていると、バイクのエンジン音がふっと消えた。いつの間にか停まっていたのは、ラーメン屋の駐車場。
つづく+34
-8
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10402. 匿名 2024/05/01(水) 22:34:15
>>10397
めっちゃ好き😘+23
-3
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10403. 匿名 2024/05/01(水) 22:36:07
>>10397
テンポよくてめっちゃ引き込まれる~!+19
-5
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10410. 匿名 2024/05/01(水) 22:38:31
>>10397
バイク二人乗りいい!!
続き楽しみにしてます!+20
-3
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10460. 匿名 2024/05/01(水) 23:10:57
>>10397
楽しい!
だけど、なんでか切なさも感じる…ノスタルジーというか。
この先も楽しみ!+19
-4
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10552. 匿名 2024/05/02(木) 07:21:07
>>10397
更新今気づいた(๑˃̵ᴗ˂̵)!!
⚓️付けさせてください🙏+22
-6
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10556. 匿名 2024/05/02(木) 07:36:26
>>10397
2人、合うなぁ!恋はもちろんしたいんだけど、この宇髄さんと純粋に友達として過ごしたい気もする
素敵な関係+22
-5
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10638. 匿名 2024/05/02(木) 15:20:56
>>10397
楽しい🏍️+19
-2
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10894. 匿名 2024/05/02(木) 21:39:29
>>10397《ア・ポステリオリ》5
⚠️趣味全振り・何でも許せる方向け(※🏨の話してます)
「…え?」
「ほら、降りろ。腹減ったから、飯食うぞ」
ゆったりとした歩調で暖簾をくぐった彼がカウンター席に腰掛けたから、なぜ急にラーメン?そういえば名前も知らないのに…と不思議に思いながら、大人しくついて行って隣に座る。
塩ラーメンの半炒飯セットを注文して“宇髄天元”と名乗った彼は、同じ大学の四年生らしい。
私も味噌ラーメンの餃子セットを注文して、簡単に自己紹介をした。そして、二人で適当な世間話をしながら麺を啜った。
「ところで…」
食べ終えてお冷を飲む私に視線を向けた彼が、テーブル備え付けのすりおろしニンニクを指差している。
「お前、さっきラーメンにニンニク大量に入れてなかった?」
「……入れましたけど」
「ニンニク餃子も食ったろ?」
「はい…食べました。え、ダメ…?」
質問の意図がわからない。
「それさぁ、もし俺とこのままいい雰囲気になってホテルに行くことになったりしたらどーすんの?」
「あ…その可能性は全く考えてなかった…」
「だよなぁ。考えてたら食わねぇわな」
…何?どういうこと?
「よし!今から暇?天気いいから海行こうぜ」
「え、ホテルは?」
「行かねぇよ!!!」
笑いながら伝票を持って立ち上がった彼がレジへ向かうのを、慌てて追いかける。
流されるまま、再びバイクの後ろに跨った。途中立ち寄ったコンビニでやっと彼は煙草を手に入れることができて、私にもアイスを買ってくれた。
しばらく走らせると海岸沿いに出て、頬を掠める空気に、潮の香りと湿り気が混ざり出す。
「海、好きなんですか?」
「好きってわけじゃねぇけど、まぁたまに来る」
「泳いだりは?」
「たまに誘われてサーフィンするくらいだな」
風とエンジンの音にかき消されないで、なおかつ彼にうるせぇと言われないぐらいの声量で喋るのも慣れてきた。
道の駅の駐車場にバイクを停めて、歩いて海の方へ向かう。二人並んで堤防に腰掛けた。
彼が一旦立ち上がって私からずいぶん離れたところに座り直したことを不思議に思って見ていると、「あ、悪ぃ。煙いかもしんねぇから」と煙草の箱を掲げる。「あ、なるほど」と、私は私で買ってもらったアイスの封を切った。
つづく+38
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