ガールズちゃんねる
  • 10235. 匿名 2024/05/01(水) 20:19:58 

    >>10087⚠️大正軸🌫️己の趣味に全振り

    『今宵、花嫁になる君へ』
    第三話

    「ええっ?!山向こう様が鬼で、あなたは鬼狩り?!」

    池のほとりに座った私は、大きくなりそうな声をやっとの思いで飲み込んで、小さな声で問い返した

    「うん。この村はもう長いこと鬼に支配されている。花嫁協定は、若い娘を確実に手に入れるための契約だ」

    「嘘…じゃあ、じゃあ今まで山向こうにお嫁に行った、モブ美ちゃんもモブ世さんも…?帰って来ないのは、そう言うわけなの…?」

    「うん」
    彼は横顔のまま頷いた

    「そんな、まさかそんなことが…?!でも待って、花嫁になるのは年に一人だけよ。鬼はそれで…足りてるの?」

    食糧が、とは口に出来なかった

    「足りないさ。だからこうした契約を、いくつもの村としてるんだよ」

    「いくつもの村と…。でも、鬼って夜に出るんでしょう?私たちの村では、夜鬼に襲われたりしないわ。それは山向こう様が守ってくださってるからだって。それは何故なの?なんで夜襲わないの?」

    「山向こうの守護があるから夜出歩いても襲われないなんて言うのはまやかしだ。そう言って安心させ、村人を夜に出歩かせて喰っているんだよ。いくら娘が栄養豊富で複数の村と契約しているからって、年に一人ずつでは足りなすぎる。この村にも時々、行方不明者がいるだろう」

    「それは、この村が貧しくて、出奔する人もいるし…鬼でなくても盗賊に襲われたり夜道を滑落したりして命を落とす人はいるわ」

    「皆がそう思う程度に喰う人数を抑えてる。たくさんの村と契約しているのはそのためだ」

    「もう…ずっとそうなの?」

    「そう聞いてる」

    「村の大人は知っているの?」

    「知らないさ。知っていたら娘を嫁になんてやれないでしょ」

    私は信じられない気持ちで息を吐いた

    (つづく)

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  • 10262. 匿名 2024/05/01(水) 20:45:03 

    >>10235
    ……そういうことだったの!!😳
    (続きとても気になる😇楽しみに待機してます)

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  • 10265. 匿名 2024/05/01(水) 20:46:40 

    >>10235⚠️大正軸🌫️己の趣味に全振り

    『今宵、花嫁になる君へ』
    第四話

    「…こんな大変なことなのに…どうしてずっと騙され続けてきたのかしら…」

    「それは僕にも分からないけど、それだけ巧妙なんだろう。最初に契約を結んだ、かつての村長は知ってると思う。娘と少々の村人の犠牲さえあれば、生活に苦しむ村を救えるんだ。いつ襲われるか分からない鬼に怯えるより、一定数の犠牲を約束して村の平穏を優先する、その方が良いかも知れないと思わせられたのかも知れないし、脅しにあったのかも知れないけどそれは分からない。この村の村長の家には代々娘が出来なかったのも、ここまで続いた理由かも知れない。今回娘のモブ子さんに白羽の矢が当たった村長が、昔の文献を紐解いて事実を知り、知人を介して御館様に相談してきたんだ。今の村長も、嫁入りした村の娘が里帰りしないことを、内心訝しがっていたのかも知れないね」

    「あなたは鬼狩り様なんでしょう?どうしてそのまま行かないで、モブ子ちゃんに扮して行くの?」

    「調査では、鬼は山向こうの主とその手下の老婆の二匹と言うことが分かってる。でもこれだけの仕組みを作って喰える人間を確保しようという鬼だから、ある程度の知能はあるだろう。それにこれはこの村だけの問題じゃない。同じような契約を結んでいる村がたくさんあるんだ。山向こうを盲信している村が察知して、邪魔が入る可能性もある。確実に相手の懐に入るには、俺が娘に扮して潜入することが得策だと御館様が判断したんだ」

    「そうなんだ…でも作戦とは言え、男の子なのに花嫁に変装するなんて嫌じゃなかった?」

    「別に。それで鬼が倒せるならなんてことないでしょ」

    「アタシはチョット嫌ダッタワヨ!デモコノ子ノ事ダカラ女装も似合ウニ決マッテルワ」

    「ま、そういうことだから、こんな酷い因習はこれで終わらせる。村にも平和が戻る。鬼に喰われる娘や若者が減って、鬼の支配から逃れられればきっと村も豊かになるよ」

    「霞さんが、倒してくれるのね?」

    彼はこくりと頷いた
    まだ若く、少女と見まごう姿だが、その引き締まった表情はとても頼もしく見えた

    「霞さん、気をつけて。私、ガル田の家のガル子。私に何か出来ることがあったら言ってね」

    「うん。僕の名前は時透無一郎。君に出来ることは黙っておくことだけだよ」

    彼はそう言って少しだけ微笑んだ



    しかしその翌日──

    ガル子の家に、白無垢が届けられた


    (つづく)


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