ガールズちゃんねる
  • 10087. 匿名 2024/05/01(水) 12:07:17 

    >>9866⚠️大正軸🌫️己の趣味に全振り

    『今宵、花嫁になる君へ』
    第二話

    その日の晩、私は散歩に出かけた
    村の外れにある池は私の気に入りの場所だった。今日みたいな月の夜には、水面に映った光がさざなみに洗われているかのように輝いた
    池を眺めながらゆっくりとほとりを歩いていると、枝を踏む音がした
    顔を向けると髪の長い少女が歩いて来る
    あれは…あの姿は…

    「あ…あの、こんばんは。あなたはもしかして、村長さんのところに来た、霞さん?」
    私が声をかけると、頭上から烏が降りてきてギャアギャアと騒ぎ立て、「サッサとオカエリ!鬼ガ出ルワヨ!」と言った

    「大丈夫よ、この村は鬼は出ないの。山向こう様が守ってくださってるのよ」

    私が教えるとその烏は大袈裟に首を傾けて、「ハン、呑気ナモノネ」と言った

    「いいえ本当よ。山向こう様はこの村から嫁をとる代わりに娘の家には財産を、村全体には守護を与えてくれているの。だからこの村は夜でも出歩くことが出来るのよ。ねぇ、あなた霞さんよね?この度はお嫁入りおめでとう。いつか私も選ばれたら山向こうへ行くかもしれない。そうしたらよろしくね」

    彼女は伏し目がちにうつむいたまま、何も言わずに私の横をすり抜けた

    「あ、待って、霞さん」

    振り返って彼女に手を伸ばした瞬間、私は体勢を崩して池の淵にズルリと足を滑らせた

    「きゃっ…」
    「…っ!」

    素早く抱き止めてくれたその腕に思わずしがみついた私は、ハッと驚きの声をあげた。固く、ガッチリと筋張った腕は女の子のそれではない。私が彼女の顔を見上げると、「あーあ、バレたか」と呟いてため息をついた

    「こ、声も…あなた男の子なの?!」

    彼はシーっと口に指を立て、烏は「声ガ大キイ!」と私の頭をペシペシと叩いた

    「えっと…どういうこと…?あなたは山向こうへの花嫁さんとして来た霞さんでしょう?」

    「……」
    「イイからオカエリ!」

    「それにその格好…腰に差しているのは刀…?」

    彼は観念したようにもう一度ため息を付き
    「仕方ないな。これから話すことは他言無用だ。約束できる?」と射るような目で私を見た

    私は黙って頷いた

    (つづく)

    +30

    -8

  • 10090. 匿名 2024/05/01(水) 12:19:07 

    >>10087
    読んでるよー!
    すでにワクテカが止まらないっ!🤗💕🌫

    +23

    -4

  • 10091. 匿名 2024/05/01(水) 12:20:05 

    >>10087
    おーーー!鬼狩りむいくんのお話!!続き楽しみです!!

    +23

    -5

  • 10092. 匿名 2024/05/01(水) 12:21:22 

    >>10087
    物凄く引き込まれてます!
    この先の展開が楽しみ💨

    +23

    -5

  • 10098. 匿名 2024/05/01(水) 12:39:31 

    >>10087
    読んでます♡続きも楽しみです✨

    +20

    -3

  • 10144. 匿名 2024/05/01(水) 14:49:59 

    >>10087
    ワクワクです💕

    +15

    -5

  • 10157. 匿名 2024/05/01(水) 16:07:19 

    >>10087
    🐢
    わああ、この話は絶対好きなやつ😆しおり代わりにコメントさせていただきます
    霞さんに土器土器💕

    +20

    -7

  • 10235. 匿名 2024/05/01(水) 20:19:58 

    >>10087⚠️大正軸🌫️己の趣味に全振り

    『今宵、花嫁になる君へ』
    第三話

    「ええっ?!山向こう様が鬼で、あなたは鬼狩り?!」

    池のほとりに座った私は、大きくなりそうな声をやっとの思いで飲み込んで、小さな声で問い返した

    「うん。この村はもう長いこと鬼に支配されている。花嫁協定は、若い娘を確実に手に入れるための契約だ」

    「嘘…じゃあ、じゃあ今まで山向こうにお嫁に行った、モブ美ちゃんもモブ世さんも…?帰って来ないのは、そう言うわけなの…?」

    「うん」
    彼は横顔のまま頷いた

    「そんな、まさかそんなことが…?!でも待って、花嫁になるのは年に一人だけよ。鬼はそれで…足りてるの?」

    食糧が、とは口に出来なかった

    「足りないさ。だからこうした契約を、いくつもの村としてるんだよ」

    「いくつもの村と…。でも、鬼って夜に出るんでしょう?私たちの村では、夜鬼に襲われたりしないわ。それは山向こう様が守ってくださってるからだって。それは何故なの?なんで夜襲わないの?」

    「山向こうの守護があるから夜出歩いても襲われないなんて言うのはまやかしだ。そう言って安心させ、村人を夜に出歩かせて喰っているんだよ。いくら娘が栄養豊富で複数の村と契約しているからって、年に一人ずつでは足りなすぎる。この村にも時々、行方不明者がいるだろう」

    「それは、この村が貧しくて、出奔する人もいるし…鬼でなくても盗賊に襲われたり夜道を滑落したりして命を落とす人はいるわ」

    「皆がそう思う程度に喰う人数を抑えてる。たくさんの村と契約しているのはそのためだ」

    「もう…ずっとそうなの?」

    「そう聞いてる」

    「村の大人は知っているの?」

    「知らないさ。知っていたら娘を嫁になんてやれないでしょ」

    私は信じられない気持ちで息を吐いた

    (つづく)

    +26

    -6