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9462. 匿名 2023/10/20(金) 23:32:13
>>9461
⚠️解釈違い ⚠️🌫目線
狡い 2/3
最後に入ったのがいつだったのかも忘れてしまった彼女の部屋はだいぶ様変わりしていた。
ピンク色やキャラクターだらけだった昔とは違い、今は落ち着いた色調でシンプルに統一されている。
「むいくん来てくれて良かったー。部屋にこんなにお菓子があったら誘惑に負けて食べちゃうもん。ゆうくんにも分けてね!」
「グループ学習じゃなくてお菓子パーティーだったみたいだけど」
あ、なんだか嫌味っぽくなった気がする。
でも彼女は気に留める様子もなく微笑んで言う。
「ふふっ、ちゃんと課題は進んだから大丈夫だよー」
そういう屈託の無い所は昔からだなと微笑ましく思う一方で、盛り上がっていたであろう集いの痕跡を少し冷めた目で眺めながら彼女に尋ねた。
「随分仲いいみたいだね。もしかしてあの中の誰かと付き合ってるとか?」
「えーやだなぁ、全然そういうんじゃないよ。ほんと普通のクラスメイトだもん」
「でもあの背の高いやつ、君のこと好きだよね」
僕のことを挑発的な目で見てきたやつだ。
「えっ……いや、そんなことないでしょ」
一瞬彼女の目線が宙を彷徨ったのを僕は見逃さなかった。
「何かはあったんだ?」
すると彼女は観念したように苦笑いした。
「さすがむいくんは鋭いなぁ。もう済んだことだけど、実は入学してすぐの頃に告白されたことがあって。もちろん断ったよ? まだどんな人かもわからなかったし」
あぁ、やっぱり恐れていたことが起きていた。
君のこと、周りの男が放っておくはずないんだから。
「どんな人か分かった今はどうなの?」
「どうって……彼もあれから何も言ってこないし友達として仲良くしてるよ」
「あいつはそうじゃないみたいだけど」
「ちょ、ちょっと待って。むいくんどうしたの……? さっきから何だか尋問みたいになってるんだけど」
笑顔だった彼女の表情に今は明らかに戸惑いの色が浮かんでいた。
(つづく)+27
-6
 
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9464. 匿名 2023/10/20(金) 23:33:29
>>9462
⚠️解釈違い ⚠️🌫目線
狡い 3/3
そこで僕も我に返った。
自分のあまりの余裕の無さに恥ずかしくなる。
「ごめん、僕ちょっとおかしいかも」
これには正直自分でも驚いた。
成長とともにお互い別の世界が広がるのは分かりきっていることなのに、いざその現実を突き付けられるとこんなにも心穏やかでいられなくなるなんて。
もちろん僕にだって彼女の知り得ない人間関係があるわけだから自分勝手もいいとこだ。
人に取られそうになった途端に急に惜しくなるんだから自分でも最低だと思う。
きっと僕は彼女との関係に甘えていたんだろうな。
幼馴染で同じマンションに住んでいるからって、何か特別の存在のように勘違いしていたんだ。
君も同じように思ってくれてるに違いない──なんて都合のいい想像ばかりして。
独り善がりも甚だしい。
でもこれで確信した。
僕はやっぱり彼女が好きなんだってことを。
癪だけど、そのことを改めて気付かせてくれたあいつには感謝しないといけない。
「──むいくん大丈夫?」
考え込んだ僕を大きい瞳が心配そうに覗き込む。
「ごめん、ただの嫉妬だから忘れて」
それだけ言うと僕は何事も無かったかのように帰る準備を始めた。
そんな僕のシャツの裾を後ろから彼女が掴む。
「……言い逃げなんてずるい。そんなこと言われて、忘れられるわけないじゃない」
俯いたままの彼女が言う。
そう、僕は狡い。
これは賭けでもあったけど、もしその気があるなら彼女の方から僕の元へ来るよう仕向けたのだから。
あの笑顔を手に入れるためなら手段なんて選んでいられない。
たとえ卑怯だと言われても。
「……だったら、もっと忘れられなくしてもいい──?」
僕のその言葉に弾かれたように彼女が顔を上げた。
彼女の肩に手を掛けてその目を見据えると、戸惑いに揺れる双眸が僕を映したままゆっくりと閉じられる。
──それを合図に僕達の関係は変わった。
終+30
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