ガールズちゃんねる
  • 2049. 匿名 2023/10/09(月) 08:10:48 

    >>2047 Happy birthday sweetie 4/8
    ⚠⚠⚠解釈 ☀さん。マイナー気味ゾンビ映画(愛がテーマの3作品をチョイス)のパロ。ゾンビらしきゾンビは出てきません。


    なんだか変わった人だな。
    はじめはそう思っていたけど、何度か顔を会わせるうちに彼はただ無口なだけだと分かった。そして、不思議なことに私とすごく波長が合うということも。

    仕事帰り、ふと彼の部屋を見上げると、ベランダでぼんやりしている彼の姿があった。
    彼も私に気付いたみたい。
    「ガル子さん、おかえり」
    手を振る彼に、私も小さく振り返えす。
    私はずっと、誰かに自分の存在を認識されるのが怖かった。だけど───彼が私を私として見てくれるのは…少し嬉しい。
    あれ?気のせいかな…なんだか顔が熱い。


    真夜中、玄関の扉をガンガン叩く音に叩き起こされた。
    「ガル子!開けてくれ!」
    彼の声だ。私は慌てて玄関の鍵を開けた。
    「ガル子、今すぐ逃げるんだ」
    「突然なんですか⁉離してください!」
    彼は私の腕を掴むと、ずかずかとキッチンに向かい、冷蔵庫を開けた。
    「やめて!開けないで!」
    「静かに。君の正体は知っている」
    彼は持参していた保冷バッグに、私の命綱とも言える薬を慎重に詰め込んだ。
    「ねえ、どういうことですか⁉なんで知ってるの!?」
    彼は抵抗する私を無理やり車に放り込み、これを読んでとスマホ画面を突きつけた。

    【◯◯の供給停止、復旧は未定】

    ◯◯────それは、私を人たらしめている薬の名前だった。

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  • 2288. 匿名 2023/10/09(月) 13:11:15 

    >>2049
    ドキドキしながら読んでます

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  • 2906. 匿名 2023/10/10(火) 08:43:21 

    >>2049 Happy birthday sweetie 5/8
    ⚠⚠⚠解釈 ☀さん。マイナー気味ゾンビ映画(愛がテーマの3作品をチョイス)のパロ。ゾンビらしきゾンビは出てきません。(コメントありがとうございました!)


    彼は唖然とする私にシートベルトを装着させ、車のエンジンをかける。
    「すぐに薬の奪い合いが始まる。安全な場所に着いたら、なにか方法を考えよう」
    私はぼんやりと頷いた。

    猛スピードで走り出した車は、すぐに徐行を余儀なくされた。ニュースを知った他の人々も続々と逃げ出しているのだ。
    車窓一枚隔てた街中では、既に過去になったはずの生々しい光景が繰り広げられている。さっき車に飛び乗ろうとしたのは人か、それとも…
    私は外界から目を逸らし、ハンドルを握る彼の手をじっと見つめた。


    「ガル子、走れるか」
    日が昇り始める頃、完全に動かなくなった車列に見切りをつけた彼が車のドアを開けた。

    彼に手を引かれ、走り続ける。
    人では無い者達──近い未来の私の姿かもしれない者達──の灰色の手を掻い潜り、時には物陰で息を潜めやり過ごす。
    彼の肩に下げられた保冷バッグが激しく揺れている。彼の口から白い息が絶え間なく漏れる。たくましい首筋に汗が一筋、つぅーっと流れた。
    「ガル子、もう少しだ。頑張れ」
    不便なことばかりだけど、今だけはこの体で良かったと思った。疲れを感じないこの体なら、前回のようなヘマは…

    あれ…前回ってなんだっけ?
    何故だろう…この光景、見たことある気がする。

    そう、私は彼と一緒に逃げていて…
    だけど私はすぐにへばってしまって…
    私が躓いて…
    そして足を噛まれて…
    それで…

    ─────なんだか彼のことが凄く美味しそうに見えてきて。


    私は全てを思い出した。

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