ガールズちゃんねる
  • 1996. 匿名 2023/10/09(月) 00:46:42 

    >>1976
    ⚠️解釈違い注意🐍⚠️長文⚠️何でも許せる方向け
    ⚠️多分とてつもなく長い(連載回数未定)

    『タイトル未定』の【二話】

    件の屋敷の生存者は一人。座敷牢に居たあの娘だけだった。娘の名はガル子という。腰まで届く柔らかそうな色素の薄い髪に、透けるように白い肌、金茶色の瞳をした少々風変わりな姿の娘だった。
    あの惨劇の後遺症だろう。ガル子は心身共に傷付き、今も全く口をきかないのだと、診療所で顔を合わせた隠が言っていた。無理もない───一夜にして自分以外の一家全員が喰い殺されたのだ。生き残った者が負った傷の深さは計り知れない。俺には彼女の傷が一日も早く癒えるよう祈ることしか出来なかった。

    ※※※

    あの屋敷での一件から数日後、お館様からの呼び出しがあり、産屋敷邸を訪れた。
    「よく来てくれたね。先日の一件ご苦労だった」
    「勿体無いお言葉、痛み入ります。お館様におかれましてもご壮健で何よりです。先日の件はその後つつがなく」
    「それは良かった。柱になってもうすぐでひと月だね。調子はどうだい?」
    「は。まだまだ未熟故、今後精進いたします」
    「今日はね、小芭内にひとつお願いがあって来てもらったんだよ」
    「はい」
    「うん、実はね、先日小芭内が助けた女の子なんだけど、蛇屋敷で暫く面倒をみてもらいたいと思ってね」
    「…は?」先日助けたというと…あの金茶の瞳の娘のことか?わざわざ何故…傷が癒えるまで診療所に置いておくのでは駄目なのか?
    「あの、何故…?」
    「うん、あの娘ね、結構役に立つと思うんだ。あの屋敷がどういった人物の物だったかは聞いているね?其処で育った彼女も当然暗殺術に長けた人物であって、ゆくゆくは隊士にどうかと思っているんだよ」
    「はぁ…」
    「そういう家の出だから身体能力は申し分無い筈だ。このまま回復して、はいさようならというのも勿体無いと思ってね」
    「ですが何故うちに…?回復後に育手の元に送った方がよろしいのではございませんか?」
    「んー、それがそう簡単な話じゃなくてね。どうやら心の傷が相当深いみたいで、未だにひと言も話せない状態らしいんだ」
    「そ、それなら尚のこと、専門の療養所にでも任せた方が───」
    「───小芭内が適任だと思うんだ」
    「だからなんで───」
    「頼まれてくれないか?家の事は一通り出来るそうだし、隊士としての見込みもある。そして小芭内なら彼女を救えると思ったんだよ」
    ───全く以て訳が分からなかった。

    結局お館様に押し切られる形で、当分の間ガル子を蛇屋敷で預かることになった。女性は苦手だ───柱になった今でも女性への恐れや嫌悪感は克服できないままでいた。そんな俺の屋敷に、あの娘が来る───?考えるだけで頭痛と吐き気がしてきた。
    しかし、お館様の命令だ。無下にする訳にもいかず、しぶしぶガル子を招き入れた。

    (続く)

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    -9

  • 2204. 匿名 2023/10/09(月) 11:48:03 

    >>1996
    読んでます♡

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  • 2675. 匿名 2023/10/09(月) 22:37:32 

    >>1996
    ⚠️解釈違い🐍⚠️長文×不穏 身体の傷の表現あり。苦手な方はスクロール推奨⚠️
    ⚠️とても長くなる予定(連載回数未定)
    >>1054 ⚠️己の趣味に全振り
    ⚠️何でも許せる方向け

    『タイトル未定(すみません。まだ決まらない)』三話


    「屋敷内の物は好きに使っていい。但し俺の自室と書斎にだけは絶対に近付かないでくれ」
    視線を合わせる事なく、ガル子が黙って頷く。
    「君の部屋は此処。足りない物があれば、通いの隠に伝えれば用意してくれる。屋敷内の事は、基本的にほとんど隠がする。君は出来る範囲で良い。むしろ療養に専念してくれ」そして早く屋敷から出て行ってくれ───。
    また黙って頷く。

    よく見ると、ガル子の首元には横に深く抉れたような傷がある。両の手首と足首にもケロイド状の傷痕があった。他にも見える範囲だけでも刀傷と思しき大小幾つもの傷痕が確認できた。生家は殺し屋一族という話だったが───この華奢な身体に付いた、若い娘には不釣り合いな幾つもの傷痕───。一体この娘はこれまでどんな人生を歩んできたのだろうか。
    そして何故あの夜、ガル子は座敷牢に繋がれていたのか───。何も言わず、視線も合わせず、黙ってただ頷くだけの若い娘。彼女へ向けるつもりで纏っていた俺の毒気はすっかり鳴りを潜め、女性を目の前にした時にいつも感じる息苦しさもいつの間にか消えていた。

    今までに感じたことのない感覚だった。まるで人形でも相手にしているようだ。ガル子からは何も感じない。巷に溢れる女達の、上手く隠しているつもりでも滲み出す、欲に塗れた──私利私欲に肉欲、隙あらば利用しようという下心──そういった類のものが全く彼女からは感じ取れなかった。いや、それだけでなく、本当に何の感情も向けられていない───。
    途中、何かを言おうとしたのだろうか。ほんの少し唇が動いたが、結局それが言葉を紡ぐことはなかった。話はそれだけかと問うように、一度だけ俺と目を合わせたが、硝子玉のような瞳は何処までも虚無で、真っ直ぐに此方を見てはいたものの、その実何も映していなかった。

    (つづく)

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