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15644. 匿名 2023/11/01(水) 01:24:24
>>15642 ④観光バスドライバー🍃さんと添乗員がる子と、🍉くん率いる弟君たちのお話(⚠️解釈違い⚠️年齢設定等捏造あり⚠️会話の中だけ女性キャラの登場あり)
起こしてしまうのではと迷ったけど、不死川さんの向かい席に私の分のお昼が置かれてあったので、そーっと席に座って静かに食べ始めた。
朝に言葉を交わして以降、一度も不死川さんと話せていない。
知らないこととはいえ、うちの会社が弟さんたちの参加を引き受けちゃったから気疲れさせちゃったんだよな…、お汁粉もあんまり好きじゃなかったかな…。
昨夜の浮かれ気分はすっかり吹き飛んでしまって気持ちが沈みそうになるけど、まだこのツアーのメインの果物狩りはこの後だ!しっかりしなくちゃ!
「あァ…なんだ起こしてくれりゃあよかったのに…」
少しして不死川さんが目を覚ました。思ったより普通に話しかけてくれて、気が楽になる。
「すみません…気が散りますよね…」
「あ?」
「仕事場に急に身内が来るとなると…」
「あー、正直クソやりづれェ」
あくび混じりに怒気を含んだ不死川さんの言葉に、思わず「…ですよね…すみません…」と声が小さくなる。
「なんで謝る?がる山さんは悪くねェだろうが」
「…でもウチの会社が参加者受け付けちゃったわけですし…」
「それを言ったらインフルになった粂野が元凶だわなァ。いやでもそのおかげでこうして会えたんだからむしろ感謝するところか?」
笑うべきなのか照れるべきなのかわからず、微妙な笑みを浮かべてしまう。
「前回も思ったが、がる山さんアンタ、変な謝り癖があるな…前職何だったんだァ?」
「…公務員です、役所の窓口…」
ナルホドと聴こえてきそうな顔を不死川さんがする。
「そりゃまた大分異業種からの転職だな。理由聞いてもいいか?」
「うち、元々は母がずっとこの添乗員…ツアーコンダクターやってたんです。うちは幼い頃に父が亡くなって母子家庭で。母が仕事で国内外飛び回らなきゃいけないので、私達兄弟は祖母が育ててくれたようなものでした。でもやっぱり母がほとんどいない生活はすごく寂しくて…。自分は逆に、地域に根付いた仕事がしたいと思って公務員を目指しました」
「なるほどなァ」
「でもいざ働いてみると以前は理解できなかった母の苦労や有難みがわかってきて…。何より私自身が、寂しさ以上に、やり甲斐をもってツアコンの仕事をする母の姿に憧れを抱いていたことに気付いたんです。自覚するのが遅いんですけどね」
「それで転職かァ」
「はい。それで私もすぐ海外添乗の資格も取って経験を重ねられたら、そのうち独立してスタッフが結婚・出産・仕事を無理なく両立できるツアコン事務所を立ち上げるのが夢なんです。まぁ、まだまだ駆け出しのヒヨッコが何言ってるんだって感じなんですけど…」
私が話す間中、不死川さんは茶化すこともせずこちらを真っ直ぐ見つめながらじっと腕組みして聞いてくれた。
「すげェながる山さん…」
「…え?」
「いや、俺達も働き方としては同じようなもんだからよォ。家庭のある先輩がそっちの時間を当たり前みてェに犠牲にする姿を沢山見てきたからなァ…ウチもなんとかならねぇモンかな。ん〜…」
「・・・嬉しいです」
「あァ?」
「あっすみま…じゃなかった、ありがとうございます、そんな風に言ってくださって。新人が何偉そうなこと言ってるんだって思われたらどうしようって思ってました」
「誰だって初めは新人だろォ。目標があってカッコいいじゃねえか」
格好いい人にカッコいいと言われると、素直にとても嬉しい。
「すぐに手の届かないところに行っちまいそうだなァ…」
「え?」
「いや何でもねェ。ところでがる山さん、いいのか?そろそろ集合時間だぜ。俺はひと足先に戻ってるわァ」
何だろう…少し近寄れたかと思ったのにまた距離ができてしまったような心細さを感じながら、私は残りのほうとうをかき込んで腰を上げた。
(つづく)+21
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15726. 匿名 2023/11/01(水) 11:28:54
>>15644⑤観光バスドライバー🍃さんと添乗員がる子と、🍉くん率いる弟君たちのお話(⚠️解釈違い⚠️年齢設定等捏造あり⚠️会話の中だけ女性キャラの登場あり)
慌てて不死川さんの後を追って従業員部屋を飛び出すと、「きゃっ」…もう行ってしまったと思っていた不死川さんが入り口のすぐ横の壁に腕組みをしてもたれかかっていた。
「…忘れ物ですか?」
「悪ィ、言い忘れたことがあってよ」と、少しバツが悪そうに切り出された。
「汁粉缶、ありがとなァ。あれがる山さんだよなァ?」
「あ!そうです!こちらこそごめんなさい、黙って変なことして。開けられなかったみたいだったのでもしかしたら苦手だったのか気にはなってて…」
「いや…実は同じモン飲んできて腹いっぱいでよ…。あまりに俺の気分ピッタリのモンが置いてあったから、一瞬がる山さんか弟の誰かが置いたのかが確信が持てなくてお礼言うの遅くなっちまって…悪かったなァ」
そうか!そうだったんだ!
「よかったです…お好きなもので。安心しました。よかったらおうちで温め直して召し上がってください」
「ん、そうさせてもらうなァ」
不死川さんは胸の支えが取れたという表情をすると、私の顔を見て何かに気付いたようにふ…と笑って口元に手を伸ばして触れた。
「かぼちゃ、ついてる」
「///!?」
「あっ悪ィ!つい弟たちにするみてぇにやっちまった…先行ってるぜッ」
この状況で取り残されてふらふらとよろめく。
不死川さんて…天然人タラシなんじゃなかろうか…それなら前回不思議に思った、ご年配リピーターさんたちからの人気も頷ける。
どちらにしろ集合時間が迫る中、しかもこれからメインイベントが控えているのに心臓に悪すぎる。
「仕事中…仕事中、仕事中!集中しろ!」
私は自分の両頬をバチンと叩くと、必死でモードチェンジして駐車場へ向かった。
今回の果物狩りの会場である△△農園さんは、ものすごく広い。
到着するとうちのツアーだけでなく、同業他社さんのツアーバスが何台も並んでいて、ここの人気が伺える。
お客様にはここのぶどうエリア・みかんエリアを自由に行き来してもらって、集合時間まで目一杯フルーツ狩りを楽しんでいただく。
「いってらっしゃ〜い!楽しんできてくださ〜い!」
不死川さんと手分けしながら、おひとりおひとりに果物の上手な取り方と集合時間を書いたカードを手渡して、お客様を農園の入り口で見送る。
「やっぱりここも兄貴は一緒に入れねぇの?」
最後にカードを受け取った弘くんが不死川さんに尋ねた。
「あのなァ弘、こういうところは運転手とかツアー主催側の人間は人数にカウントされてねェの。農園さんに伝えてあるお客様数より勝手に増えるわけにはいかねぇだろうがァ」
「あの実は…差し出がましいとは思ったんですが…」
私はポーチから追加のカードを取り出して不死川さんに手渡した。
「さっきバスの中から農園さんに電話して、人数追加でお願いしちゃいました」
「えーやったー!」「やった!行こう行こう!」「やるなーお姉さん仕事できるな!」キャッキャと喜んでくれる弟さんたちに嬉しくなってこちらまでニコニコしてしまう。
「あ…ありがとうございますがる山さん!兄貴、せっかくだから遠慮せずに行こうぜ!」
「あ…あァ」
玄弥さんとこと君に手を引かれ戸惑いながらも、不死川さんは中に入りかける瞬間「がる山さんありがとなァ!」と叫んでくれた。
すんなり入ってくれてよかった…。さて、私も皆さまが楽しめているか、様子を見て回らなくちゃ!
(つづく)+21
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